婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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「ペルル嬢……君は本当に慈悲深いな。自分の教科書をこうまで引き裂いた犯人を探ろうとせず、処罰もせずに許そうと言うのだから」

「は、はい……!私、争いごとは嫌いなんですぅ……だから、もういいんです!私が……新しい教科書を買えば済む話ですから……」

ジークフリート様の言葉へ、ミナ嬢は震える声で同意した。その声色は僅かにほっとしたようなものが含まれている。後半などは、同情を誘いたいのか健気なほどに声も抑えられていた。

「しかし、それでは困る」

「えっ……?」

しかし、ジークフリート様はその思いを即座に切り捨てる。ミナ嬢はそのまま逃げ切るつもりだったのだろうけれど……相手が悪いようね。


「校内での器物損壊は許されるものではない、まして教科書を刻むなどと……事を起こした人物は特定し、所定の罰を受けてもらわなくては。いくら君が許すと言おうが、学園側として許すわけにはいかない」

「そ、そんな……」

「それに、このままでもヴィクトリア嬢の名誉が汚されていることには変わりがない。ヴィクトリア嬢がいじめを行ったという噂だけが一人歩きし、真実は明かされないまま。……それでは、彼女があまりにも不憫だとは思わないか?ジェラルド殿下」

矛先を向けられた殿下は、言葉に詰まった。ここでヴィクトリアの名誉などどうでもいいなどと言ってしまえば、公平性を疑われるに決まっている。

(……それでも、ジェラルド様は決してそうは言わないでしょうけれど)

「だ、だから……ヴィクトリアがやったと認めて謝罪すれば、それで丸く収まる話だろう!」

言葉に詰まったジェラルド様は、視線を泳がせはしたけれど……けれども、ここで引くわけにはいかないのだろう。結局は私を糾弾する方へと戻っていった。仕方ありませんわよね、愛するミナ嬢が泣いているのだから。

「やってもいないことを認めろと仰られても」

私が口を挟むと、殿下は苛立たしげに声を張り上げる。

「往生際が悪い……お前がやったということ以外に考えられないと言っているんだ。手段など問題ではない、動機があるのはお前だけだ!」

「動機でございますか……」

「僕に愛されている彼女が羨ましくて、腹いせにやったんだろう。そうに決まっている!」

殿下の主張は、最初から最後まで嫉妬の一点張りだ。ジークフリート様は呆れたように息を吐くと、手袋をはめた手で床に散らばる紙片を一つ拾い上げた。

「動機が重要だというのなら、他にも考えられるな」

彼は拾い上げた紙片を光にかざし、観察しながら呟いた。

「例えば、狂言。……自作自演などという行いだ」

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