婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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「あら……ごきげんよう、ヴィクトリア様」

中心にいた令嬢……ソフィアは、気まずそうに視線を泳がせる。しかし、すぐに強気な表情を取り繕った。

「何かご用かしら?私たちは今、学園の風紀について憂いておりましたの」 

「風紀ですか。それは奇遇です、わたくしも今雑音について考えておりましたの」

雑音が何のことを言っているのか、令嬢たちにはすぐに分かったのだろう。再び表情が固くなった。

「それで……先ほどからわたくしを示したお話が聞こえておりましたが。せっかくですから、何を話されていたのかお聞かせ願えませんかしら」

私のストレートな問いかけに、彼女たちは怯んだように体を引いた。まさか聞こえている悪口に対して、面と向かって何を話しているのかなどと聞きに来るとは思わなかったのだろう。

貴族社会では通例となっている、遠回しな嫌味を避けたような聞き方。けれどもソフィアはすぐに強気な姿勢を取り戻して、勝ち誇ったような顔をした。

「……ええ、そうですわね。ヴィクトリア様のためを思って忠告させていただきますわ。あまり、みっともない真似はなさいませんように」 

「みっともないとは」 

「男爵令嬢へのいじめです!学園中で噂になっていますのよ?殿下に愛される彼女が羨ましいからといって、教科書を破るなんて……高位貴族として恥ずかしくありませんの?」

ソフィアの声に、サロン中の視線が集まる。
けれども私の心には何のさざなみも立っていなかった。

「噂ですか。ソフィア様ともあろう方が不確かな情報を鵜呑うのみにされるとは、驚きですわ」 

「なっ……火のない所に煙は立たないと申します!」 

「ええ。けれども……もしもどなたかが意図的に火を放ったとするならば、煙も見えてしまうのでしょうね」

……この方があの時の教室にいたのは明らかだと言うのに、結末を見て何も思わなかったのだろうか。

「教科書を破いたなどとおっしゃいますが、誰か私が破いているところをご覧になったのですか?」 

「そ、それは……ミナ嬢が泣いて……」 

「本人の証言だけですか?……あの方の毒牙に掛かっていらっしゃるのは、あながち男性だけではないのですね」

「何ですって……!」




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