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夕暮れ時の貴族たちが集まる大通りの真ん中で、ミナはこれ見よがしにカインとレイの腕に絡まりながら声を上げた。
「こんなところで、お一人で買い物ですか?それとも待ち合わせ?……ヴィクトリア様ともあろうお方が、まさか誰にもエスコートしてもらえずにお買い物しに来るなんて、そんな惨めなことはないですよねぇ?」
蔑むような笑みを浮かべる彼女を、私は静かに眺める。ミナの背後では、騎士団長の息子であるカインと宰相の息子であるレイが所在なさげに……けれども哀れむような視線をこちらへと向けている。
「そのお店……あぁ……もしかして、ドレスを買いに来たとか?」
私が足を止めていたのは、ちょうどドレスの飾られている店の前。
たたみかけるような彼女の言葉に、私は内心で冷ややかな溜息をついた。ジェラルドに密着している彼女のことだ、こちらの注文がすべて白紙にされたことも知っているのだろう。
(それどころか、彼女がジェラルド殿下に入れ知恵して取りやめさせた可能性すらあるわ……)
「婚約者様もいなくって一人でドレスのお買い物なんて、なんだかとぉってもかわいそうですけど……可愛げがないから仕方ないのかな?」
ミナ嬢は空気を含むようにして下品に笑い、カイン様の腕にさらに深くしがみついている。
……その様子を眺めながら、呆れを通り越すような心地がしてきていた。かつて自分に泣きついてきた二人の令嬢たちのことを思い出していたから。
婚約者が別の女と仲良くしていると嘆く彼女たちに、あの時は直接中庭へ行ってカイン様とレイ様とお話した。そして彼女たちを大切にするべきだと諭したはずだった。……それなのに、この男たちは自分たちの立場さえ理解せず、こうして公衆の面前で他家の令嬢を嘲笑っている。
(……救いようがないわ)
いっそあの令嬢たちも、こんな自覚のない男たちとは早く縁を切ってしまえばいいのに。そうすれば、もっと誠実な相手との出会いもあるだろう。
「……お気遣いなく。私は一人で過ごす時間も存外と気に入っております。誰かのように、常に誰かに縋っていなければ自分を保てないわけではありませんから」
「こんなところで、お一人で買い物ですか?それとも待ち合わせ?……ヴィクトリア様ともあろうお方が、まさか誰にもエスコートしてもらえずにお買い物しに来るなんて、そんな惨めなことはないですよねぇ?」
蔑むような笑みを浮かべる彼女を、私は静かに眺める。ミナの背後では、騎士団長の息子であるカインと宰相の息子であるレイが所在なさげに……けれども哀れむような視線をこちらへと向けている。
「そのお店……あぁ……もしかして、ドレスを買いに来たとか?」
私が足を止めていたのは、ちょうどドレスの飾られている店の前。
たたみかけるような彼女の言葉に、私は内心で冷ややかな溜息をついた。ジェラルドに密着している彼女のことだ、こちらの注文がすべて白紙にされたことも知っているのだろう。
(それどころか、彼女がジェラルド殿下に入れ知恵して取りやめさせた可能性すらあるわ……)
「婚約者様もいなくって一人でドレスのお買い物なんて、なんだかとぉってもかわいそうですけど……可愛げがないから仕方ないのかな?」
ミナ嬢は空気を含むようにして下品に笑い、カイン様の腕にさらに深くしがみついている。
……その様子を眺めながら、呆れを通り越すような心地がしてきていた。かつて自分に泣きついてきた二人の令嬢たちのことを思い出していたから。
婚約者が別の女と仲良くしていると嘆く彼女たちに、あの時は直接中庭へ行ってカイン様とレイ様とお話した。そして彼女たちを大切にするべきだと諭したはずだった。……それなのに、この男たちは自分たちの立場さえ理解せず、こうして公衆の面前で他家の令嬢を嘲笑っている。
(……救いようがないわ)
いっそあの令嬢たちも、こんな自覚のない男たちとは早く縁を切ってしまえばいいのに。そうすれば、もっと誠実な相手との出会いもあるだろう。
「……お気遣いなく。私は一人で過ごす時間も存外と気に入っております。誰かのように、常に誰かに縋っていなければ自分を保てないわけではありませんから」
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