婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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(……いないのは当然よ。他ならない私が、ジェラルド殿下が山のような執務に忙殺されている姿を見届けてからここへ来たのだから)

「果たさなければならないことを窮屈とおっしゃるなら、そうなのでしょう。けれども、その窮屈な義務さえ果たせない方に、この街で買い物を楽しむ資格があるとは思いません」

「い、いいのよ……!ジェラルド様が今いないのはっ、そう!お仕事しているのを邪魔しちゃいけないって思ったから!」

適当な言い訳にしか聞こえない言葉を吐いた彼女は勝ち誇ったように胸を張る。

「私はあなたより大人なの!それに、やっぱり殿下が気になるのね?」

ミナは必死に自分を正当化しようと声を荒らげ、震える指先で私を指した。論点をすり替えて私に嫉妬のレッテルを貼ることで優位に立とうとするその姿は、痛々しささえ感じさせる。

「本当は一人でいるのが寂しくて、誰かに構ってほしくて必死な癖に。見苦しいわ!あんたみたいな可愛げのない女、誰からも愛されるはずがないんだから!」

ミナ嬢は地団駄を踏み、憎しみを込めて私を睨みつけた。彼女の背後ではカイン様とレイ様も気まずそうに、しかし彼女を庇うような素振りを見せる。

……その異様な光景に、周囲からは再び不快感の混じった小声が聞こえてきた。

「随分と威勢の良いことだけれど……ご令嬢に対して、あんな口の利き方をするなんて」

「あれでは誰をいじめているのか分かったものではない」

「それにしても殿方二人を侍らせて、あんなに騒ぎ立てるなんて。はしたないにも程がある……」

……皆は興奮のあまりにか、何を言われても耳に入っていないようだけれど。
それどころか私を糾弾することに酔ってしまって、顔が赤らみ始めていた。

「いい?貴女が一人ぼっちなのは、その性格のせいなのよ!」

憐れみすら感じさせるその叫びは、私の心を何も波立たせない。

「性格の良さを自負した覚えはありませんが、あなたのようにねじ曲がっているよりは余程マシだと考えています」

「っ……!そうやって馬鹿にして……っ!」





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