婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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時は少し遡る。

貴族街、ジークフリートからすげなく扱われて石畳に残されたミナは、呆然としながら馬車へ乗り込み消えていく二人を見送った。

ミナは石畳に座り込んだままだ。地面へこぶしを打ち付けるようにしていら立ちを露にする。

「……どうして!?あんなの絶対におかしい!……あれはあたしのなのに、あたしの物のはずなのに!」

その傍らではカインとレイがうろたえながらも彼女のおかしくなってしまった様を宥めようとしているが、その熱量はどこか低かった。

「み、ミナ……とにかく、ここからちょっと離れよう……」

「そうだな、人目があるところでそのような行いは……」

ミナの、淑女とはとても言い難い行いに対して、周りを気にするようにきょろきょろとしている。

(うるさい!うるさいうるさい!!)

……しかし、ミナにとって既に二人はどうでもいい存在となり果てていた。

「あの女ッ……絶対に許さない……!」

彼女の叫びは、奇しくも今日の始まりとなる憤りと同じ感情だった。





ジェラルドの執務机にて盛大に紅茶をこぼして部屋を追い出された時のこと。

執務室を追い出されたミナは、激しい怒りにドレスの裾をバタつかせながら廊下を突き進んでいた。怒りで視界が真っ赤になりそうだった。

(絶対におかしい!……このミナが差し入れを持って行ったのに、部屋を追い出されるなんて。転生先はヒロインのはずよ……!?)

彼女の頭の中には、この世界の正解がゲームの知識として刻まれている。
差し入れのクッキーと紅茶は、ルートにおいて外すことのない攻略アイテムのはずだった。

これを差し入れれば疲弊した攻略対象の好感度が上がり、積み重ねによって甘いイベントが発生する……その記憶があったからこそ、ミナは自信満々で乗り込んだというのに。

事実、少し前まではミナの狙った男どもはこれで誰も彼もが堕ちていたのだ。

だというのに、今日のこの日の現実はどうだろう。
ジェラルドはクッキーに目もくれず、あまつさえ紅茶までもが台無しになった。

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