婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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わたくしヴィクトリアがジークフリート様から贈られたドレスを着る機会は、ほどなくして訪れた。

王立学園において指定の制服を崩さず登校することは、通学する令息令嬢に課せられた厳格なる義務のうちの一つ。……時折ミナ嬢のように不必要な飾りをつけたり着崩したりする者は現れるが、ともかくとして。

時は週末。
授業はなく、学園主催のデビュタントが刻一刻と近づく頃合いの今は制服着用の義務から解き放たれていた。

当日の動きを確認するリハーサルや会場の設営についての準備が行われ始める頃だ。この期間に学園へと登校する生徒たちは準備に携わっているものも多く、本番を意識した衣服での登校が例外的に許されている。

私も件のドレスを身に纏い、式典会場となる大ホールの壇上に立っていた。手に持った図面と照らし合わせながら、花飾りの配置や照明の角度を話し合っている。

それにつけても、驚くのは纏ったドレスの素晴らしさについて。

(試着室で身に着けた時も思ったけれど、身体になじんで何て動きやすいのかしら)

実際にこうして動いていると、その違いが明確になるような気がした。
そして、異なるのは着心地だけではないのだというのが周囲の視線やざわめきからでも知れる。

まず登校をしている時。それに、こうして準備を行っている時でも。
私の姿が視界に入るたび、作業に当たっていた生徒たちからはさざなみのようなざわめきが広がっているように感じられた。

中には私を眺めるために、手を止めているものもいるようだった。

「……あれはヴィクトリア様……?」

「まさか。いつもはもっと、こう……そうよ、ぼんやりとした色の服を好んでいらしたはずなのに」

「驚いたけれど、とてもお美しいわね……」

(……好んでいらしたのはジェラルド殿下なのだけれど)

私は心の中で苦笑する。
淡い色がよろしくないというわけではなく、ただ私の肌には合わないというだけのことだった。

遠巻きに見る人々の視線は、驚きと戸惑いにも満ちていた。それも無理もないことかもしれない。

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