婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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「殊勝かは分からないけれど……ソフィア様は驚いてくださったの?さっきから、わたくしのことを眺めていらっしゃるものね」

私は一歩、彼女の方へと歩み寄った。互いの肩が、あと少しで触れてしまうような位置。この距離で密やかにささやくと、きっとステージの下からは私たちが何を話しているのかは聞こえないだろう。

「あちらの……ステージの端にいらした時もずっと眺めていたのでしょう?熱心なまなざしだと思いましたの」

「っ……今、私の話はしておりませんことよ……!」

少し耳近くで話過ぎてしまったのか、それともシンプルに言葉の内容でそうさせてしまったものか。
ソフィアは頬を少し赤くして耳を抑えながら私のほうを睨んだ。

余裕ぶって開いていた扇子も閉じられてしまって、その手はわなわなと震えている。

「驚かせてしまったのなら、お詫びいたしますけれど……」

私は、先ほどとは逆に一歩引いた。窓から差し込む陽光が、ドレスの深い色と刺されている刺繍を鮮やかに浮かび上がらせる。
このドレスは夜の照明の下では、また違った輝きを見せるのだろう。

「……けれど、ご覧になってください。以前のものよりも、こちらの色のほうが私の肌をくすんで見せることがないようなのです」

まずソフィアが私の元へ歩み寄ってきて、そして私からも距離を詰めた後で一歩引いた。
ということで、私たちの距離は依然いぜん、近しいままであった。

そして私が視線を落とすと、ソフィアもそれにつられるように私のドレスの袖へと視線を落とした。
陽光に照らされた糸が品よく輝いており、最適な形にたれている布地の質感もよりよく伝わったように思う。

ソフィアは、吸い寄せられるようにそこからまなざしを外すことはなかった。
その目からは既に、嘲笑の色は感じられなかった。

「あなたも背伸びとおっしゃったけれど……今まで纏っていたものよりもよほど、私自身を地に足のついているように見せてくれる。……そう思いませんか?」

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