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「皆様、おしゃべりも宜しいけれど今がどういった時間なのかは思い出してもちょうだい」
凛とした声に、令嬢たちははっとした表情で顔を見合わせた。彼女たちは名残惜しそうにしながらも、教師の視線に促されるようにしてそれぞれの持ち場へと散り散りになっていく。
「けれども……」
「ねえ、そうよね」
「ヴィクトリア様、わたくし達もっとお話を聞きたいわ」
去り際におずおずと声をかけてきた令嬢たちに向け、私は穏やかに頷いてみせる。
「ええ。それでは後ほど、準備が終わってからサロンで。続きをお話ししましょう」
きゃあ、と華やいだ声が上がる。それも教師の視線を感じてか控えめなものだったけれど。
その約束の中には、当然のようにソフィアも含まれていた。彼女は今や毒気を抜かれたような顔をして、何度も私のドレスを振り返りながら持ち場へと戻っていく。
皆が立ち去るのを見送っていると、先ほど手を叩いた教師が足音を忍ばせて歩み寄ってきた。
騒ぎを起こしたものとして特別に小言をいただいてしまうかもしれない、と感じたのだけれど……彼女は周囲に聞こえないような小声で、私にだけ囁きかけてくる。
「ヴィクトリア嬢。……いつでもいいのだけれど……後でわたくしにもそのお店のことを教えていただいていいかしら?あなたがあまりに素敵なものだから、気になっているの」
普段厳格な印象のある教師だけれど、彼女はここの卒業生で未だに年も若くしていらっしゃる。その意外な申し出には、微笑ましさを感じながら快諾した。
「もちろんですわ。喜んで」
「ありがとう、嬉しいわ」
彼女が満足そうに去っていく背中を見届け、私は再び手元の作業書を開く。
……私が先ほど、ステージの端からのソフィアの視線に気が付いていたように。
今の一連の様子をホールの入り口からじっと見つめている視線があることには、とうに気がついていたけれど。
けれど、今の私にはどうでもよいことだった。
私は一度も入り口を振り返ることなく、次の指示を出すために迷いのない足取りで歩き出した。
凛とした声に、令嬢たちははっとした表情で顔を見合わせた。彼女たちは名残惜しそうにしながらも、教師の視線に促されるようにしてそれぞれの持ち場へと散り散りになっていく。
「けれども……」
「ねえ、そうよね」
「ヴィクトリア様、わたくし達もっとお話を聞きたいわ」
去り際におずおずと声をかけてきた令嬢たちに向け、私は穏やかに頷いてみせる。
「ええ。それでは後ほど、準備が終わってからサロンで。続きをお話ししましょう」
きゃあ、と華やいだ声が上がる。それも教師の視線を感じてか控えめなものだったけれど。
その約束の中には、当然のようにソフィアも含まれていた。彼女は今や毒気を抜かれたような顔をして、何度も私のドレスを振り返りながら持ち場へと戻っていく。
皆が立ち去るのを見送っていると、先ほど手を叩いた教師が足音を忍ばせて歩み寄ってきた。
騒ぎを起こしたものとして特別に小言をいただいてしまうかもしれない、と感じたのだけれど……彼女は周囲に聞こえないような小声で、私にだけ囁きかけてくる。
「ヴィクトリア嬢。……いつでもいいのだけれど……後でわたくしにもそのお店のことを教えていただいていいかしら?あなたがあまりに素敵なものだから、気になっているの」
普段厳格な印象のある教師だけれど、彼女はここの卒業生で未だに年も若くしていらっしゃる。その意外な申し出には、微笑ましさを感じながら快諾した。
「もちろんですわ。喜んで」
「ありがとう、嬉しいわ」
彼女が満足そうに去っていく背中を見届け、私は再び手元の作業書を開く。
……私が先ほど、ステージの端からのソフィアの視線に気が付いていたように。
今の一連の様子をホールの入り口からじっと見つめている視線があることには、とうに気がついていたけれど。
けれど、今の私にはどうでもよいことだった。
私は一度も入り口を振り返ることなく、次の指示を出すために迷いのない足取りで歩き出した。
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