婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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ソフィアは膝の上で細い指先をさまよわせ、言葉を絞り出すように続けた。

「わたくし、きっと……誤解しておりましたの」

視線は合わず、けれども自分のことを言われているのだということは分かった。

「ヴィクトリア様。あなたは……もっと規則や伝統に縛られた、近寄りがたい方だと思っていましたわ。けれのも……」

彼女は一度言葉を切り、ガゼボの外に広がる光景を眺めた。

「今日だって。この開けた庭園をお茶会の場に選んでくださるなんて、想像もしていませんでした」

そこには、学年や常の関係を越えて笑い合う令嬢たちの姿がある。ソフィアはこちらに顔を戻し、次には私のドレスを見る。

「あなたが纏っているそのドレス、本当にお似合いですわ。わたくしは今更ながらにようやく気が付いたの……あなたに嫉妬していたのだと……」

……何が彼女の心を解いたのだろう。
ソフィアはたどたどしくしながらも、素直に心情を吐露している。

(それは、私が先に彼女へと、柔らかな態度を見せたから……?)

「殿下の婚約者という立場にも、その完璧な立ち居振る舞いにも。……無自覚なまま毒を吐き、あなたを孤独に追い込もうとしていた。……醜いのは、わたくしの方でした」

ソフィアの瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。彼女は茶杯を卓に置き、私の正面に向き直った。そして貴族の令嬢としてではなく、一人の少女としてのように深く頭を垂れた。

「申し訳ございませんでした。これまでの数々の無礼、どうかお許しください」

静まり返ったガゼボの中に、彼女の震える声だけが落ちる。
周囲の令嬢たちには話は聞こえていないのだろう。けれども近いところに居る少女たちは、私たちの空気を察しているのか、遠巻きにこちらの様子を伺っていることが分かる。

私は、彼女の下げられた頭を見つめながら、ゆっくりと口を開こうとした。

「ソフィア様……」

彼女が抱えていた棘は、私自身の頑なさが生んでいた側面もあったのかもしれない。そのことを伝えようと、指先を伸ばしかける。

その時だった。

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