婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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ミナの姿をゆっくりとした視線で見た。彼女はその姿をむしろ誇らしげに、私へと自慢するような顔をしてこちらを見下しているけれど……

私は扇子を開いてみせる。
いかにもけがらわしいものと相対したようにやや顔を背けながら、視線だけを彼女の方へと流した。

「身だしなみも整えられぬまま、その場の秩序をかき乱そうとするだなんて」

「……は?」

「そのような振る舞いで、よくも他者の所業を悪しざまに告げるなどということが出来ましたね」

あからさまに皮肉な言い方をしてみせると、ミナは簡単に腹を立てたようだった。
……とは言っても、彼女の発した嫌味に比べたら可愛いものだと思うのだけれど。

つい最近の出来事を思考の端から持ってくる。私とジークフリート様が買い物へと移動する様子を見て後ろからこの方が叫んでいたのは、記憶にも新しい。

「そういえば……先日、あなたとは貴族街で出会ったばかりでしたね」

ミナは眉を跳ね上げ、不快そうに私を睨みつけた。ついさっきまで見下していた余裕などはどこにもなくなっている。

「……それが何だっていうんです?わざわざそんな昔の話を持ち出して」

昔と言うにはかなり近しい記憶だけれども、そこはさしたる問題でもなかった。これはただ、ミナがそこには触れられたくないと……そう言っているようなものだからだ。

「いいえ。ただ、今日のあなたの装いが……買い物に出たにしては、と感じただけで」

私は閉じかけた扇子の先で、彼女の乱れた襟元を指し示すかのような動きで空をなぞってみせた。
乱された衣服を整えないままに人前に出てくるだなんて、何を考えているのやら。

「この学園にはあまりにも似つかわしくない着こなしですけれど、気に入っていらっしゃるのね。ただ、新調されたようには見えないけれど……」

「なっ……!」

彼女の顔が、みるみるうちに屈辱で赤く染まっていく。パチ、と扇子を閉じて笑みにした唇をミナへと見せた。

「それで……ドレスは手に入れることが出来たのですか?」

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