154 / 161
154
立ち上がり、壁に掛けられたドレスの傍らへと歩み寄った。滑らかな生地が、医務室の光を反射して静かに光っている。それを手にとって彼女の隣へと座ると、隣からそっと身体へと合わせた。
「……でしたら、このドレスに相応しい振る舞いを身に着けるつもりで」
ぱっとソフィアが顔を上げてこちらを見た。
「どの道、着替えは必要なのでしょう。でしたらこのドレスに着替えて、堂々と顔を上げてお帰りになって」
ソフィアは手を伸ばし、ドレスへと触れた。今私の着ているものと形や色は違えと生地の上質さに差はなく、なめらかな触り心地が直に触れていることだろう。
「……ありがとうございます、ヴィクトリア様」
元より彼女は、私のドレスに強い関心を示していた内の一人だった。声には心無しか活力のようなものが含まれている気がする。
頬にも血色が戻ってきていた。休息とハーブティーもよかったのかもしれない。その姿を見て、口許に笑みを作る。
「どういたしまして。……ここで待っているから、着替えはあちらでどうぞ」
そう言うと、控えていた侍女が入室しソフィアをカーテンの向こうへと促す。
「失礼いたします、ソフィア様」
「ええ……」
私は再びソファに腰を下ろし、冷めかけたハーブティーに口をつけた。カーテンの向こうからは、衣擦れの音と、コルセットの紐を引くようなかすかな音が聞こえてくる。
「……ヴィクトリア様、まだいらしてくださるの?」
衝立の向こうから、ソフィアの声が聞こえた。
「ええ。着替えが終わるまで、話し相手が必要でしょう?」
私は手元のカップを見つめたまま答えた。
医務官はソフィアの診察を終えた時から席を外している。元々今日は授業などない日なのだから、この部屋をもう少し借りていても構わないのだろう。
医務室の静かな空間に、侍女がソフィアの身なりを整える動作音だけが響く。
不意にソフィアからの問いが聞こえた。
「先ほどのあの方は……ミナ嬢は、あなたに対していつもあのような振る舞いをなさるのですか」
「……でしたら、このドレスに相応しい振る舞いを身に着けるつもりで」
ぱっとソフィアが顔を上げてこちらを見た。
「どの道、着替えは必要なのでしょう。でしたらこのドレスに着替えて、堂々と顔を上げてお帰りになって」
ソフィアは手を伸ばし、ドレスへと触れた。今私の着ているものと形や色は違えと生地の上質さに差はなく、なめらかな触り心地が直に触れていることだろう。
「……ありがとうございます、ヴィクトリア様」
元より彼女は、私のドレスに強い関心を示していた内の一人だった。声には心無しか活力のようなものが含まれている気がする。
頬にも血色が戻ってきていた。休息とハーブティーもよかったのかもしれない。その姿を見て、口許に笑みを作る。
「どういたしまして。……ここで待っているから、着替えはあちらでどうぞ」
そう言うと、控えていた侍女が入室しソフィアをカーテンの向こうへと促す。
「失礼いたします、ソフィア様」
「ええ……」
私は再びソファに腰を下ろし、冷めかけたハーブティーに口をつけた。カーテンの向こうからは、衣擦れの音と、コルセットの紐を引くようなかすかな音が聞こえてくる。
「……ヴィクトリア様、まだいらしてくださるの?」
衝立の向こうから、ソフィアの声が聞こえた。
「ええ。着替えが終わるまで、話し相手が必要でしょう?」
私は手元のカップを見つめたまま答えた。
医務官はソフィアの診察を終えた時から席を外している。元々今日は授業などない日なのだから、この部屋をもう少し借りていても構わないのだろう。
医務室の静かな空間に、侍女がソフィアの身なりを整える動作音だけが響く。
不意にソフィアからの問いが聞こえた。
「先ほどのあの方は……ミナ嬢は、あなたに対していつもあのような振る舞いをなさるのですか」
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
他サイトにも投稿しております。
※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。
※無断著作物利用禁止
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
「妹の縁談のために家を追い出されたので森に帰りました。精霊と小動物と、魔女と間違えた騎士と暮らしています」
まさき
恋愛
伯爵家の長女ミアは、ずっと家のために尽くしてきた。
そんなある日、妹リナに有力な縁談が舞い込む。縁談相手は「長女がいると家督が継げない」と気にしていた。リナも「お姉様がいると思い通りにならない」と両親を焚きつける。利害の一致した両親はミアを家から追い出すことを決めた。
ミアは泣かなかった。怒りもしなかった。
ただ静かに荷物をまとめ、幼い頃に精霊と出会った森へと帰った。
森には精霊がいる。小鳥がいる。小動物がいる。
やっと、自分だけの時間が始まった。
一方、ミアがいなくなったエヴァンス家では作物が育たなくなり、取引先が離れ、使用人が去っていく。豊かだったはずの家が、じわじわと傾き始めた。
そんな森に迷い込んできたのは、魔女の噂を調査しに来た騎士レオだった。魔女はいなかった。畑を耕す可愛い元令嬢がいただけだ。任務を忘れて居座る騎士と、淡々と受け入れる元令嬢の、ほっこりスローライフが始まる。
忘れられない女~アクアは『私がいなくても』と言った~
ハートリオ
恋愛
ルーナエ王国王太子であるカイルムと筆頭公爵家令嬢であるアクアは共に16才の幼馴染。一か月後に結婚を控えていた。
だが帝国の第一皇女がカイルムに懸想する。
幸せな結婚を目前に運命が捻じ曲げられ…
カイルム、イグニス、皇帝…アクアと関わる男達が語るアクアとの物語。
*中世ヨーロッパ風異世界の物語です。
*本作品の無断転載・AI学習への利用を禁止します。
楽しんでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。
石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。
やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。
失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。
愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。