自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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この期に及んでも責任逃れの道を探し続けるヴィンセントのことを、リリアンは内心白けきった目で眺めてはいたのだけれど。
しかし彼女はそのようなことでは取り繕っている本音を晒したりはしなかった。

「けれど私……ヴィンセント様がいないと不安になって、余計に体調が悪くなってしまうのです……」

「いや……それは……不安な気持ちも分かるけれど……」

そうしてリリアンは上目をしてみるのだけど、今回ばかりはヴィンセントが目を泳がせているのであまりこちらを見てもらえない。
現実逃避のような問いかけに、リリアンは少し趣向を変え、ヴィンセントの腕に指を這わせた。

「……分かりました。その場合は合図を送ります、ヴィンセント様に」

「合図?」

「はい。もしも私の具合が悪くなってしまったら……お昼過ぎ、私の侍女をあなたの元へ向かわせますから……」

リリアンは切なげに声を漏らした。

「それが私からの、すぐに部屋まで来ていただきたい……そういう合図です」

実際には昼になれば特に何がなくとも仮病を使うつもりだった。けれども今のリリアンには既に涙さえ浮かべている。

「ああ、そうか……でも……」

ヴィンセントは困惑したように眉を寄せた。リリアンに具体的な案を提示されればされるほど、彼の中に新たな不安がわき上がってくるようだった。

「君はいつも、具合が悪くなると僕の所へ遣いを送るだろう……?あれをエルアナはうとんじているようなんだ」

リリアンの涙目から目をらし、話も逸らせようとしながら言葉を続ける。

「明日のような晴れの席で同じことをすれば、彼女がどんな顔をするか……目立つ真似をすれば、余計に状況が悪くなるのではないかな」

リリアンは悲しげな顔を浮かべつつも、胸の内で激しい苛立ちを覚えた。

土壇場になっても保身と恐怖に揺れるこの男の優柔不断さに、舌打ちしたい衝動を辛うじて抑え込む。彼女は震える声色を装い、ヴィンセントの耳元へ顔を寄せた。

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