自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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彼はリリアンの言葉に、力なくではあるが頷いた。

「主役なのだから、部屋をもう一つ増やしても……不自然ではない、か」

それは真っ当な主張のようでいて、ただ力尽ちからずくの理屈とも呼べない理由だったのだけれど。

「そうだな、リリアンの言う通りだ。主役の準備というものは多いと相場が決まっている……」

もはや納得の出来る理由であるならば何でもいいヴィンセントはそれに同意することにした。
それらしい理屈、と捉えることも出来なくがなかったので。

「はい、そうでございましょう」

やっと覚悟を決めたらしいヴィンセントの横で、リリアンがにっこりと頷いた。

程なくして婚約披露パーティーを行う手筈となっている会場が見えてくる。
馬車が白亜のタウンホールの前に停まった。

御者が到着を告げ、扉を彼の為へと開く。
今日ヴィンセントはここに寄る予定ではなかったが、何せ式の前日である。

明日のパーティーに携わる人間が誰かしらいないわけはない、という予測を立てていた。

「……それじゃ、少し待っていてくれ。すぐに戻るからな……」

リリアンは、急病で心細いという名目で持ってヴィンセントの元へ訪れた。
彼女を連れ歩くわけにはいかず、休息という建前で馬車の中で休んでいてもらうことにする。

「はい。行ってらっしゃいませ、ヴィンセント様」

リリアンも、そこに異論は持たなかった。
ヴィンセントは決意を固めた顔で馬車を降りたが、その背中にはどこか頼りなさが漂っている。

この時に、もしヴィンセントがもう少し周囲に目を配らせる余裕があったのだとしたら。
そしてリリアンが馬車を降りて辺りを見回したのなら気が付いたのかもしれない。

少し離れた馬車止めの場所に、もう一つ格式高い造りの馬車が留め置かれていたことに。
それは他ならぬエルアナの所在がここに在るということを告げるものだった。


時は婚約披露パーティーの前日。
ヴィンセントの目論見通り、会場には明日のパーティーに携わる重要な人物が、何人もという数で居るのだった。

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