自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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管理責任者はドア近くから私のことを手招きし、そこから少し身を引いてスペースを作る。

近付いて分かったことだったが、事務局のドアは堅牢な作りとなっているのに一部加工が施されていて、外の音がとても聞こえやすいようになっていた。
周囲をより把握しやすいように、ということかもしれない。

……そしてそこからは、紛れもなくヴィンセントの声が聞こえて来ていたのだった。

『おい、ちょっと来い』

『明日の婚約披露パーティーの主役を務める、ヴァルモント家のヴィンセントだ』

『明日、会場の隣室を控室として開けてほしい』

聞けば聞くほど横柄な物言いしか流れて来ないのだから、うんざりとしてしまう。
それが隣にいる彼にも届いてしまったのだろうか、管理責任者は小声になりながらドアの向こう側を見据えていた。

「幾分、な婚約者様でいらっしゃいますね」

「……お恥ずかしい限りだわ」

「いいえ、エルアナ様がご心配なさるのも分かります」

大体、表にはわが家の紋章が入った馬車だって停めてあるというのに。

(あの人は何も気が付かないでホールへやってきたとでもいうのかしら……)

周りを見られないところがあるから、それも不思議ではなさそうだ。

そして話しぶりからして、屋内にまでリリアンを伴って来ているわけではなさそうだった。
しかし時間的にも彼女と離れてからここにやって来たとは考えにくく……どうせ、共に馬車で揺られている内に余計な知恵を授けられてきたという具合だろう。

しばらく聞いていると、ヴィンセントは私の了解は既に得ているだとか何とか言いながら、事務官へと無理な要求をしていることが分かった。
もちろんのこと、私にそんな許可を出した覚えはない。

(……ギルベルト様には、まるでこのことが分かっていたような忠告だったわね)

「……どういたしますか?」

「直接私が出向きます。ヴィンセントとは違って、私は今日ここに居て最終確認をしていたとしても、何も不自然ではないのだから」

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