自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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ヴィンセントの今の言い訳は言い訳の内にも入らない……何の意味も持たないと言ってやると、彼は顔を歪めて唇を震わせる。

「ち、違う……そうじゃないんだ。ただ僕は……必要だと……思っただけで……」

「新しい控室が?」

私は直接ヴィンセントに尋ねるのではなく、彼がついた、適当な嘘の理由を差し出された人物の方へと目を向けた。

「……彼は……ヴィンセントは、何と言って部屋を欲しがったんです?」  

台帳を差し出している事務官だ。
ドアの向こうで既に話は全て聞いていたけれど、そのことをヴィンセントは気が付いていないようだったから。

「……それは」

事務官はヴィンセントを一瞥すると、言い淀むような素振りを見せる。
彼が先ほど事務官へと言い放った「エルアナは了承済みだ」と言う言葉は、既に虚偽だと剥がれ落ちている。

ここでヴィンセントの話をそのまま私へと差し出すことが、新たな混乱をホールに巻き起こしはしないかと逡巡しているのだろう。

「お、おいっ……滅多なことを言うなよ、分かっているだろうな……!」

「……ヴィンセント、私はこの方に聞いているの」

「え、エルアナぁ……」

「……」

事務官が何か余計なことを話しはしないかと危惧をして、喚き始めたヴィンセントを制す。彼は情けない声を上げたが、その間も事務官はまず沈黙を選んでいた。

(……口の硬い人は嫌ではないわ)

ましてその発言をしたのは、事務官へ横柄に物を申し付けていたこのヴィンセント。
彼の目の前でもしぺらぺらと理由を話しなどすれば、後々でどんなごね方をされるのか分かったものではないだろう。

(この分だと、事務官の彼でも理由が虚偽だとは分かっていて話せないみたいね)

「……それではヴィンセント、あなたの口から今一度教えてちょうだい。どうして、控室を欲しがっているのか」

ふ、とヴィンセントへと視線を戻す。彼はたじろいで一、二歩と後ずさった。

「え……っ?」

「理由を聞いているの。……これが最後よ、よく考えて答えなさい」

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