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第三十八話 外敵掃討戦
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俺とエステは結界の外に大群で押し寄せている敵軍のいる方へ向かって、アルバレードの街を駆け抜けていた。
「ちょっと止まって!」
前を走るエステへ背中越しに話しかけると、俺は足を止めた。
「どうした?結界までまだ距離があるのに何故止まる?!」
足を止めて振り返ったエステが、キョトンとした顔でこっちを見る。
「相手は大軍…わざわざ、正面から戦う必要も無いだろ?」
不適な笑みと共にそう言い放つ。
「それは…そうだが…」
エステの矜持に反するのか…、少し不満そうな顔をしている。
(正面切って戦いたいんだろうけど、これは戦争だからなぁ…)
「しかし、こんな所で止まってもお前の結界もあるし、何も出来んだろ」
「結界の上に乗る。この上がちょうど結界の1番高い場所になるんだよ」
「あんな高い所まで展開された結界をどうやって飛び越えるつもりだ?さすがの私もジャンプして届くのは半分位の高さまでだぞ」
「ただのジャンプでそれだけ飛べるだけでも、十分凄いんだけど…」
「それで?どうやってあんな高い所に登るんだこんな所で」
「こうするんだ…よっ!」
徐にエステに近づいた俺は、エステをお姫様抱っこの要領で抱える。
「な、な、な、何をする?!」
「だぁー!暴れんな!お前、あそこまで上がれないんだろ?少しの間、辛抱しろって!」
俺の腕の中で顔を真っ赤にしてジタバタ暴れるエステをどうにか宥める。
「む…む~、分かった…」
相変わらず顔は真っ赤にしてしているが、どうにかエステを宥める事が出来た。
「じゃぁ、行くぞ?」
顔を真っ赤にして腕の中にすっぽり収まっているエステに声を掛けると、飛翔魔法で結界魔法の頭上まで一っ飛びで飛び上がった。
(結界の部分解除…再構築…)
そうして結界の上に立つと、やけに静かなエステを見てみる。
青ざめた顔のまま気を失っていた…。
「まぁ、ちょうど良いか」
エステをそっと結界の上に乗せると、念話魔法を発動する。
『ミリーナ』
『はい。そろそろ連絡しようかと思ってましたが、先に連絡をいただく形になってしまいました』
『連絡を待つつもりだったけど、こっちの準備が出来たから連絡させて貰ったよ』
『この段階での連絡と言うことは、アルバレードはもう大丈夫と言う事ですね?』
『うん。これからアルバレードの周り、それとベレルまでの帝国軍に対して魔法を撃つから近づかない様に伝えておいて』
『分かりました。では、それを合図にこちらも進軍しましょう』
『いや。合図は別で送るから、進軍はそれからにしてくれ。こっちが先に仕掛けたいし』
『大丈夫なのですか?お一人では危険では?』
『エスティアナって言うSランクの冒険者もいるから、1人じゃないよ?』
『ドラゴンスレイヤーですか?!一体、どういう流れでそんな人と行動を…。まさか!!?』
念話の向こうで明らかに呆れているのが、手に取る様に分かった。
『不可抗力だよ!ところで、フェリルやオウカ達は?』
『オウカ様はお父様の軍と共に、ザエルカ周辺に大挙して押し寄せて来た帝国軍と魔物を撃破したとの連絡を受けました』
『父上の軍は?』
『既にベレルに到着されておられます。私は出撃出来ませんので、エルディア侯爵に指揮をお願いしました』
『良い判断だ。じゃぁ、オウカはザエルカで待機かな』
『いえ。この報告の後、オウカ様は単身でそちらに向かわれる予定です』
『え?!ザエルカを放ったらかしにも出来ないだろ?』
『そちらにはアリアルデ様とフェリル様が入る予定です』
『なら、大丈夫かな…。じゃぁ、また後で』
『はい。ご健闘を』
ミリーナの返事と共に念話魔法が切れた。
「何をしていた?」
念話魔法が切れるのを待っていたかの様に、エステがこちらを睨み付けていた。
「この戦争を終わらせる算段だよ」
「お前は一体何者なんだ…?!」
「エルディア辺境伯の息子だけど?」
「そんな事は分かっている!何故お前はこれだけの力があるのかと聞いている!」
「今はそんな事を聞いている場合じゃなく無い?何?俺が手引きしたと思ってんの?」
「い、いやそうとまでは…思ってはいないが…」
「…俺、この街好きなんだよね。だから、これでも結構怒ってるんだ」
怒りを込めた目でエステを見つめ返した。
「…。はぁ~。すまなかった」
しばし睨み合っていたが、俺の視線に耐えられ無かったエステが降参したと言わんばかりに手をひらひらさせながら返事した。
「それより、俺がこれからやる事は誰にも言わないでね」
「あぁ、分かっている。それでどうするんだ?あの大軍だぞ?ちょっとやそっとじゃどうにもならんぞ?」
「ちょっとやそっとじゃなけりゃ良いんだろ?エステは足場の悪い戦場って慣れてる?」
「侮るなよ…前にも言ったが、これでも数少ないSランクの冒険者だぞ?」
「なら、安心。やる事やったら突撃するよ?」
「2人でか?!」
「正面切って突っ込もうとしてたくらいなんだから、何とかなるだろ。じゃぁ、詠唱に入るから」
俺が詠唱し始めると、エステが黙って敵のいる場所を見据えている。
「…遍く…地上に…」
詠唱が進むにつれて、次第に明けたばかりの空に雲が拡がり始めた。
「…空からの恵をもたらせ!ヒューエトス!」
発動した魔法によって、大雨がアルバレード一体に降り注ぐ。
「この雨での視界の悪さを使うのか?むしろ、こちらの方が不利になるぞ?」
俺の魔法が終わったと判断したらしく、エステが話しかけて来た。
「そんな訳ないだろ。ここからが本番だよ。また詠唱に入るから、少し黙っててくれ」
「す、すまない…」
俺の邪魔をしてしまったと罰の悪そうな顔で謝ると、今度は空を見つめ始めた。
「…天にありては、豪雷を…」
詠唱が始まると雲が更に黒味を帯び、徐々に雷の音がし始める。
更に詠唱が進むと、ゴロゴロと雷鳴を轟かせながら雲から雲へと渡り歩く様に数多の雷が行き来を繰り返す。
「… 地上に犇めく数多の我が敵に裁きの鉄槌を!裁きの雷槌!」
魔法の発動と共に数多の雷があちこちで落ちていく。
「何だ…これは…」
敵に向かって落ち続ける無数の雷を見て、エステが絶句する。
「しばらくはここを動かずに静観…だな」
「お前の魔法はどうなってる!前に、私の仲間が放った同じ魔法とは威力が段違いだぞ!」
「込めた魔力量の違いじゃない?割と本気で撃ったつもりだし。それに、今回俺がやった手順で撃ってたか?」
「い、いや、その時は裁きの雷槌だけだったが…」
「なら、違って当たり前だよ。最初の雨が補助の役目を果たしてるんだから…」
俺が物凄く冷たい眼差しで、エステを横目に見つめ返した。
「で、で?ここで待っていれば良いのか…?」
動揺を誤魔化しつつ、敢えてエステが話を元に戻した事に俺も合わせる。
「あぁ…。もう少しで戦場に切り込めるだろ」
俺が言い終えるか否かのタイミングで、今までに1番の雷鳴を轟かせ、地形を変えてしまうのではないかと思う程の極大な雷が落下した。
「何をぼさっとしてんの?行くよ?」
「う、うわぁぁぁぁ!」
最後の一撃と共に晴れ渡った空の下で、俺はエステの手を掴んで猛スピードで結界を駆け降りて行く。
始終悲鳴を上げ続けたエステは、地上に辿り着く頃には疲れ切り…疲労感満載の顔でこの世の終わりかの如く絶望した顔をしていた。
「何もしてないのに、何で疲れ切ってんの?」
緑豊かだった土地が荒れ果てた状態になった地上で、呆れ顔満載でエステに訊ねた。
「お゛、お゛ま゛え゛の゛ぜい゛だろ゛」
肩で息を切るようにぜぇぜぇ言いながら、エステが何とか声を振り絞った。
「何言ってんの?はい」
マナポーションとポーションをエステに向かって放り投げると、即座にエステが両方ともキャッチして飲み干す。
「お前のせいだと言ってるんだ!」
「はいはい。それよりここからはエステの力も当てにするよ?」
マナポーションを飲むと、適当にエステの言葉をあしらった。
「むっ。まぁ、任せておけ。この戦いが終われば色々と聞かせて貰うぞ?」
「答えられる範囲なら…ね!」
エステに適当な返事を返すと、すぐさま横たわる大量の敵兵や魔物の死体を気にも止めずに駆け抜ける。
「見るも無惨な有様だな…。これ、生きてるやついるのか?」
「雷属性の魔法って範囲攻撃に向いてるんだけど、時々仕留め損ねるんだよ!ねっ!」
横たわって死んでいる様に見えた敵兵の手が僅かに動いたのが見えて、アイシクルランスで貫いた。
「なるほど。まぁ、生き残りを見つけて倒せば良いのか」
「そう言うこと。このまま生きている敵がいないか探そう」
2人で死体の山を駆け抜けながら、ちらほら現れる魔物や敵兵の生き残りを倒して行く。
「お、おい!どうなってるんだ。ここは」
しばらくすると、一体直径何キロあるのかと思う位の広大なクレーターが顔を出した。
「一応、ここが敵の本陣があると思った場所何だけど…」
辺りを見回して見たが、その威力を物語るかのように敵の死体が無いどころか周辺の地形すら変わってしまっていた。
「こんな所に生き残りがいるのか?」
最早、死体すら見かけないクレーターの内部を見て、エステが手と膝を地面に着いて覗き込む。
「敵地のど真ん中でそんな不用心な格好するなよ…」
「周りは死体ばかりでここに至ってはそれすらない。そこまで心配せんでもよかろう。それに、こうやっていれば…」
視界の向こうで、徐々に大量の何かが蠢いているのが見えた。
「ほらな!勝手に誘い出されてくれる!」
いつの間にか立ち上がっていたエステが嬉々とした顔で、背中に下げた大剣を抜いて魔物の群れへと突っ込んでいく。
「おい!勝手に!って…。あぁ!もう!」
エステが予定外の行動に出たせいで、咄嗟に合図の炎魔法空に向かって放つと、俺もエステを追いかけた。
「これだから戦闘狂は嫌なんだよ!」
エステを追いかける俺の背後で、明るい空に大きな花火が打ち上がった。
「ちょっと止まって!」
前を走るエステへ背中越しに話しかけると、俺は足を止めた。
「どうした?結界までまだ距離があるのに何故止まる?!」
足を止めて振り返ったエステが、キョトンとした顔でこっちを見る。
「相手は大軍…わざわざ、正面から戦う必要も無いだろ?」
不適な笑みと共にそう言い放つ。
「それは…そうだが…」
エステの矜持に反するのか…、少し不満そうな顔をしている。
(正面切って戦いたいんだろうけど、これは戦争だからなぁ…)
「しかし、こんな所で止まってもお前の結界もあるし、何も出来んだろ」
「結界の上に乗る。この上がちょうど結界の1番高い場所になるんだよ」
「あんな高い所まで展開された結界をどうやって飛び越えるつもりだ?さすがの私もジャンプして届くのは半分位の高さまでだぞ」
「ただのジャンプでそれだけ飛べるだけでも、十分凄いんだけど…」
「それで?どうやってあんな高い所に登るんだこんな所で」
「こうするんだ…よっ!」
徐にエステに近づいた俺は、エステをお姫様抱っこの要領で抱える。
「な、な、な、何をする?!」
「だぁー!暴れんな!お前、あそこまで上がれないんだろ?少しの間、辛抱しろって!」
俺の腕の中で顔を真っ赤にしてジタバタ暴れるエステをどうにか宥める。
「む…む~、分かった…」
相変わらず顔は真っ赤にしてしているが、どうにかエステを宥める事が出来た。
「じゃぁ、行くぞ?」
顔を真っ赤にして腕の中にすっぽり収まっているエステに声を掛けると、飛翔魔法で結界魔法の頭上まで一っ飛びで飛び上がった。
(結界の部分解除…再構築…)
そうして結界の上に立つと、やけに静かなエステを見てみる。
青ざめた顔のまま気を失っていた…。
「まぁ、ちょうど良いか」
エステをそっと結界の上に乗せると、念話魔法を発動する。
『ミリーナ』
『はい。そろそろ連絡しようかと思ってましたが、先に連絡をいただく形になってしまいました』
『連絡を待つつもりだったけど、こっちの準備が出来たから連絡させて貰ったよ』
『この段階での連絡と言うことは、アルバレードはもう大丈夫と言う事ですね?』
『うん。これからアルバレードの周り、それとベレルまでの帝国軍に対して魔法を撃つから近づかない様に伝えておいて』
『分かりました。では、それを合図にこちらも進軍しましょう』
『いや。合図は別で送るから、進軍はそれからにしてくれ。こっちが先に仕掛けたいし』
『大丈夫なのですか?お一人では危険では?』
『エスティアナって言うSランクの冒険者もいるから、1人じゃないよ?』
『ドラゴンスレイヤーですか?!一体、どういう流れでそんな人と行動を…。まさか!!?』
念話の向こうで明らかに呆れているのが、手に取る様に分かった。
『不可抗力だよ!ところで、フェリルやオウカ達は?』
『オウカ様はお父様の軍と共に、ザエルカ周辺に大挙して押し寄せて来た帝国軍と魔物を撃破したとの連絡を受けました』
『父上の軍は?』
『既にベレルに到着されておられます。私は出撃出来ませんので、エルディア侯爵に指揮をお願いしました』
『良い判断だ。じゃぁ、オウカはザエルカで待機かな』
『いえ。この報告の後、オウカ様は単身でそちらに向かわれる予定です』
『え?!ザエルカを放ったらかしにも出来ないだろ?』
『そちらにはアリアルデ様とフェリル様が入る予定です』
『なら、大丈夫かな…。じゃぁ、また後で』
『はい。ご健闘を』
ミリーナの返事と共に念話魔法が切れた。
「何をしていた?」
念話魔法が切れるのを待っていたかの様に、エステがこちらを睨み付けていた。
「この戦争を終わらせる算段だよ」
「お前は一体何者なんだ…?!」
「エルディア辺境伯の息子だけど?」
「そんな事は分かっている!何故お前はこれだけの力があるのかと聞いている!」
「今はそんな事を聞いている場合じゃなく無い?何?俺が手引きしたと思ってんの?」
「い、いやそうとまでは…思ってはいないが…」
「…俺、この街好きなんだよね。だから、これでも結構怒ってるんだ」
怒りを込めた目でエステを見つめ返した。
「…。はぁ~。すまなかった」
しばし睨み合っていたが、俺の視線に耐えられ無かったエステが降参したと言わんばかりに手をひらひらさせながら返事した。
「それより、俺がこれからやる事は誰にも言わないでね」
「あぁ、分かっている。それでどうするんだ?あの大軍だぞ?ちょっとやそっとじゃどうにもならんぞ?」
「ちょっとやそっとじゃなけりゃ良いんだろ?エステは足場の悪い戦場って慣れてる?」
「侮るなよ…前にも言ったが、これでも数少ないSランクの冒険者だぞ?」
「なら、安心。やる事やったら突撃するよ?」
「2人でか?!」
「正面切って突っ込もうとしてたくらいなんだから、何とかなるだろ。じゃぁ、詠唱に入るから」
俺が詠唱し始めると、エステが黙って敵のいる場所を見据えている。
「…遍く…地上に…」
詠唱が進むにつれて、次第に明けたばかりの空に雲が拡がり始めた。
「…空からの恵をもたらせ!ヒューエトス!」
発動した魔法によって、大雨がアルバレード一体に降り注ぐ。
「この雨での視界の悪さを使うのか?むしろ、こちらの方が不利になるぞ?」
俺の魔法が終わったと判断したらしく、エステが話しかけて来た。
「そんな訳ないだろ。ここからが本番だよ。また詠唱に入るから、少し黙っててくれ」
「す、すまない…」
俺の邪魔をしてしまったと罰の悪そうな顔で謝ると、今度は空を見つめ始めた。
「…天にありては、豪雷を…」
詠唱が始まると雲が更に黒味を帯び、徐々に雷の音がし始める。
更に詠唱が進むと、ゴロゴロと雷鳴を轟かせながら雲から雲へと渡り歩く様に数多の雷が行き来を繰り返す。
「… 地上に犇めく数多の我が敵に裁きの鉄槌を!裁きの雷槌!」
魔法の発動と共に数多の雷があちこちで落ちていく。
「何だ…これは…」
敵に向かって落ち続ける無数の雷を見て、エステが絶句する。
「しばらくはここを動かずに静観…だな」
「お前の魔法はどうなってる!前に、私の仲間が放った同じ魔法とは威力が段違いだぞ!」
「込めた魔力量の違いじゃない?割と本気で撃ったつもりだし。それに、今回俺がやった手順で撃ってたか?」
「い、いや、その時は裁きの雷槌だけだったが…」
「なら、違って当たり前だよ。最初の雨が補助の役目を果たしてるんだから…」
俺が物凄く冷たい眼差しで、エステを横目に見つめ返した。
「で、で?ここで待っていれば良いのか…?」
動揺を誤魔化しつつ、敢えてエステが話を元に戻した事に俺も合わせる。
「あぁ…。もう少しで戦場に切り込めるだろ」
俺が言い終えるか否かのタイミングで、今までに1番の雷鳴を轟かせ、地形を変えてしまうのではないかと思う程の極大な雷が落下した。
「何をぼさっとしてんの?行くよ?」
「う、うわぁぁぁぁ!」
最後の一撃と共に晴れ渡った空の下で、俺はエステの手を掴んで猛スピードで結界を駆け降りて行く。
始終悲鳴を上げ続けたエステは、地上に辿り着く頃には疲れ切り…疲労感満載の顔でこの世の終わりかの如く絶望した顔をしていた。
「何もしてないのに、何で疲れ切ってんの?」
緑豊かだった土地が荒れ果てた状態になった地上で、呆れ顔満載でエステに訊ねた。
「お゛、お゛ま゛え゛の゛ぜい゛だろ゛」
肩で息を切るようにぜぇぜぇ言いながら、エステが何とか声を振り絞った。
「何言ってんの?はい」
マナポーションとポーションをエステに向かって放り投げると、即座にエステが両方ともキャッチして飲み干す。
「お前のせいだと言ってるんだ!」
「はいはい。それよりここからはエステの力も当てにするよ?」
マナポーションを飲むと、適当にエステの言葉をあしらった。
「むっ。まぁ、任せておけ。この戦いが終われば色々と聞かせて貰うぞ?」
「答えられる範囲なら…ね!」
エステに適当な返事を返すと、すぐさま横たわる大量の敵兵や魔物の死体を気にも止めずに駆け抜ける。
「見るも無惨な有様だな…。これ、生きてるやついるのか?」
「雷属性の魔法って範囲攻撃に向いてるんだけど、時々仕留め損ねるんだよ!ねっ!」
横たわって死んでいる様に見えた敵兵の手が僅かに動いたのが見えて、アイシクルランスで貫いた。
「なるほど。まぁ、生き残りを見つけて倒せば良いのか」
「そう言うこと。このまま生きている敵がいないか探そう」
2人で死体の山を駆け抜けながら、ちらほら現れる魔物や敵兵の生き残りを倒して行く。
「お、おい!どうなってるんだ。ここは」
しばらくすると、一体直径何キロあるのかと思う位の広大なクレーターが顔を出した。
「一応、ここが敵の本陣があると思った場所何だけど…」
辺りを見回して見たが、その威力を物語るかのように敵の死体が無いどころか周辺の地形すら変わってしまっていた。
「こんな所に生き残りがいるのか?」
最早、死体すら見かけないクレーターの内部を見て、エステが手と膝を地面に着いて覗き込む。
「敵地のど真ん中でそんな不用心な格好するなよ…」
「周りは死体ばかりでここに至ってはそれすらない。そこまで心配せんでもよかろう。それに、こうやっていれば…」
視界の向こうで、徐々に大量の何かが蠢いているのが見えた。
「ほらな!勝手に誘い出されてくれる!」
いつの間にか立ち上がっていたエステが嬉々とした顔で、背中に下げた大剣を抜いて魔物の群れへと突っ込んでいく。
「おい!勝手に!って…。あぁ!もう!」
エステが予定外の行動に出たせいで、咄嗟に合図の炎魔法空に向かって放つと、俺もエステを追いかけた。
「これだから戦闘狂は嫌なんだよ!」
エステを追いかける俺の背後で、明るい空に大きな花火が打ち上がった。
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