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序章 少年と少女は未だ報われず。
その少年は夢を持って入学した。
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『空振り三振~~!!試合終了~~!!
夏の甲子園を制したのは……』
野球をやり始めたころに見た夏の甲子園は今でも記憶に残っている。
炎天下の中、何試合も投げ切る"背番号1"。
調子が良くなくてもの誇りにかけて投げる"背番号1"。
決勝は延長15回まできた。
先攻の高校が15回表に4番のソロホームランで1点先取した。
そして15回裏、その1点を守りきるために"背番号1"がマウンドに上がる。残り少ない力を振り絞りツーアウト。あと1人、最後のバッターはここまで投げあってきた、もう1人の"背番号1"。
意地と意地がぶつかり合いフルカウントまでもつれこんだ。
会場全体がその1球に注目する。
放たれたそのボールは少しボール気味にも見えた高めの真っ直ぐ。それをバッターが空振り、三振で試合は終わった。
その球速はその試合の最速だった。
少年野球のチームに入団し、野球を始めてからそんなにポジションにこだわりはなく、とりあえず打ったり投げたりがとても楽しかった。しかし、この試合を見てから、
"ピッチャー"そして
"背番号1"にとても惹かれていった。
「いつか僕もこうなりたい」と。
そんな目標、はたまた夢みたいなものを持ってから、ほぼ毎日ランニングや、筋トレ、素振り等、自主練を真面目こなしていた。自分でもよく続いたと思う。
結局ピッチャーになれないまま、小学校6年生になった。たまにピッチャーをやらせてもらうこともあったが、チーム事情からショートを守っていた。
ショートも嫌いじゃなかった。
三遊間のとれるかどうかギリギリのゴロを捕って1塁へ送球。
セカンドゴロをゲッツーにする時の送球を捕球してから1塁への足さばき。
これらの動きが思い描いた通りにできた時はとても気持ちよかった。
そんな感じでショートに少し楽しさをみつけた頃、とても印象に残る練習試合があった。相手のチームはバッティングも守備もそんなに上手くない、普通に勝てるチームだった。
しかし1つだけ、いや1人だけ違うレベルの選手がいた。その子はピッチャーだったが、球速はそんなに速くない。しかし、テンポよくストライクをどんどん投げてくるので大量得点することができなかった。周りの守備はちょくちょくエラーしていたがそのピッチャーのおかげでなんとか試合になっていた。
バッティングも他のチームメイトが三振やフライばっかりの中で安打は1本だったが、どの打席でもいい当たりだった。まさに孤軍奮闘。
結果は10対0。
試合の後、片付けやグラウンド整備の途中で我慢できなくなってトイレへ向かった。すると前方にさっきのチームのピッチャーが歩いていた。
(トイレで横に並ぶの気まずいなぁー)
そんなことを考えていたら、予想に反してその子は逆の入り口、つまり女子トイレへ入っていった。
(え、そっち女子トイレだよー)
と、声かける勇気もなかったのでそのままにした。
「さっきトイレ行ったら、相手のピッチャー女子トイレに入ってったからびっくりした(笑)」
「あー、相手のピッチャーの子、女の子だぞ?むこうの監督さんが言ってた。
「えっ、、、」
父から衝撃の事実を帰りの車内で告げられ、言葉を失ってしまった。
少年野球では、どこのチームにもだいたい何人か女の子がいる。
それはわかっていた。けれどまさか
(あのピッチャーが女の子なんて。)
孤軍奮闘するあの姿に少し憧れみたいなものを感じていただけにショックは大きかった。
それと同時にある気持ちも強まった。
(あんな存在感のあるピッチャーになりたい!!)
少年野球に続いて、中学校の野球部でも結局、背番号1を背負うことはできなかった。たまに大差のついた試合やアクシデントのあった試合は投げさせてもらったが、全部練習試合だし、小中合わせて6試合分になるかならないかくらいしか投げてない。
しかし、ピッチャーになることを諦めず、中学野球が終わってからも、受験勉強と並行してクラブチームの練習に参加した。部活でピッチャーだったわけではないので、練習は内野手のメニューだったが、周りの学校のピッチャーだったやつや、コーチにいろいろ聞いて自分で練習した。
受験ではもともと目標としていた公立高校に合格した。同じ中学の野球部から同じ高校に入学したやつは何人かいたが、野球部に入部するやつはいなかった。
もともとの知り合いがいないのは正直不安がある。小学校から中学に上がる時は何人か同じ少年野球の奴らが一緒だった。
しかし、不安よりも圧倒的にあったのは早く高校野球をやりたい。ピッチャーをやりたい。そんな気持ちだった。
入学式、桜は程よく見頃で
山と川に囲まれた自然豊かな学校。
ここで過ごす俺の3年間はどんな生活を送ることになるんだろうか。
まぁとりあえず野球ばっかだろうけど。
夏の甲子園を制したのは……』
野球をやり始めたころに見た夏の甲子園は今でも記憶に残っている。
炎天下の中、何試合も投げ切る"背番号1"。
調子が良くなくてもの誇りにかけて投げる"背番号1"。
決勝は延長15回まできた。
先攻の高校が15回表に4番のソロホームランで1点先取した。
そして15回裏、その1点を守りきるために"背番号1"がマウンドに上がる。残り少ない力を振り絞りツーアウト。あと1人、最後のバッターはここまで投げあってきた、もう1人の"背番号1"。
意地と意地がぶつかり合いフルカウントまでもつれこんだ。
会場全体がその1球に注目する。
放たれたそのボールは少しボール気味にも見えた高めの真っ直ぐ。それをバッターが空振り、三振で試合は終わった。
その球速はその試合の最速だった。
少年野球のチームに入団し、野球を始めてからそんなにポジションにこだわりはなく、とりあえず打ったり投げたりがとても楽しかった。しかし、この試合を見てから、
"ピッチャー"そして
"背番号1"にとても惹かれていった。
「いつか僕もこうなりたい」と。
そんな目標、はたまた夢みたいなものを持ってから、ほぼ毎日ランニングや、筋トレ、素振り等、自主練を真面目こなしていた。自分でもよく続いたと思う。
結局ピッチャーになれないまま、小学校6年生になった。たまにピッチャーをやらせてもらうこともあったが、チーム事情からショートを守っていた。
ショートも嫌いじゃなかった。
三遊間のとれるかどうかギリギリのゴロを捕って1塁へ送球。
セカンドゴロをゲッツーにする時の送球を捕球してから1塁への足さばき。
これらの動きが思い描いた通りにできた時はとても気持ちよかった。
そんな感じでショートに少し楽しさをみつけた頃、とても印象に残る練習試合があった。相手のチームはバッティングも守備もそんなに上手くない、普通に勝てるチームだった。
しかし1つだけ、いや1人だけ違うレベルの選手がいた。その子はピッチャーだったが、球速はそんなに速くない。しかし、テンポよくストライクをどんどん投げてくるので大量得点することができなかった。周りの守備はちょくちょくエラーしていたがそのピッチャーのおかげでなんとか試合になっていた。
バッティングも他のチームメイトが三振やフライばっかりの中で安打は1本だったが、どの打席でもいい当たりだった。まさに孤軍奮闘。
結果は10対0。
試合の後、片付けやグラウンド整備の途中で我慢できなくなってトイレへ向かった。すると前方にさっきのチームのピッチャーが歩いていた。
(トイレで横に並ぶの気まずいなぁー)
そんなことを考えていたら、予想に反してその子は逆の入り口、つまり女子トイレへ入っていった。
(え、そっち女子トイレだよー)
と、声かける勇気もなかったのでそのままにした。
「さっきトイレ行ったら、相手のピッチャー女子トイレに入ってったからびっくりした(笑)」
「あー、相手のピッチャーの子、女の子だぞ?むこうの監督さんが言ってた。
「えっ、、、」
父から衝撃の事実を帰りの車内で告げられ、言葉を失ってしまった。
少年野球では、どこのチームにもだいたい何人か女の子がいる。
それはわかっていた。けれどまさか
(あのピッチャーが女の子なんて。)
孤軍奮闘するあの姿に少し憧れみたいなものを感じていただけにショックは大きかった。
それと同時にある気持ちも強まった。
(あんな存在感のあるピッチャーになりたい!!)
少年野球に続いて、中学校の野球部でも結局、背番号1を背負うことはできなかった。たまに大差のついた試合やアクシデントのあった試合は投げさせてもらったが、全部練習試合だし、小中合わせて6試合分になるかならないかくらいしか投げてない。
しかし、ピッチャーになることを諦めず、中学野球が終わってからも、受験勉強と並行してクラブチームの練習に参加した。部活でピッチャーだったわけではないので、練習は内野手のメニューだったが、周りの学校のピッチャーだったやつや、コーチにいろいろ聞いて自分で練習した。
受験ではもともと目標としていた公立高校に合格した。同じ中学の野球部から同じ高校に入学したやつは何人かいたが、野球部に入部するやつはいなかった。
もともとの知り合いがいないのは正直不安がある。小学校から中学に上がる時は何人か同じ少年野球の奴らが一緒だった。
しかし、不安よりも圧倒的にあったのは早く高校野球をやりたい。ピッチャーをやりたい。そんな気持ちだった。
入学式、桜は程よく見頃で
山と川に囲まれた自然豊かな学校。
ここで過ごす俺の3年間はどんな生活を送ることになるんだろうか。
まぁとりあえず野球ばっかだろうけど。
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