11 / 11
2章 初めての、夏。
ベスト8!
しおりを挟む
伊豆高校は勢いに乗ってベスト8、つまり準々決勝まできた。
新聞によるとベスト8は30年ぶりらしい。
「ここまできたのはすごいけど、正直相手が悪いよなー。春の選抜にも出てた優勝候補だぜ?」
「まぁそうだけど名前聞いてビビってもしょうがないからやるしかないよ。」
「そうだな!いい加減梅宮のいい当たり見たいから、今日は期待してるわ。(笑)」
そう言って北野は励ましてくれた。1回戦からここまで安打は何本かあるものの、会心の当たりや長打は一本もなく、自分の中でも消化不良だ。
「あ、あとな、今日は全校応援だから。まぁそんな気にならないと思うけど。頑張れよ!スタンドで盛り上げるからな。」
相手は選抜出場していたメンバーを中心に1年生などの戦力も時々使ってくる。どの選手も他の高校ならレギュラーを獲れるような奴らばかりだ。
試合が始まった。
先攻は相手の私立静竜学園。
初回から実力を見せつけられ、エースの石井さんはいきなり3失点。決してコントロールが悪かったり、調子が悪いわけじゃない。それでも抑えられないくらい相手の打撃能力が高い。
(やばいな…)
静竜の先制攻撃に完全に流れを持ってかれてしまった。伊豆高校も今年は打撃だけなら県でも上位。だからヒットが出ないわけじゃない。けれど点が取れなかった。ついでに相手には小刻みに点を取られ、5回表が終わって6対0このままいくとゴールドもありうる展開になってしまった。
「8番 ショート 梅宮くん。」
5回裏、無死1塁の反撃のチャンスでまわってきた。
(点差は離れてるからここでバントはないな。なんとか繋いで自分も出塁しよう。)
1打席目もいい感じに振れていた。多分調子はいい。ストレートにはっていよう。
1球目外角にストレート ボール
2球目外角ギリギリにスライダー ストライク
3球目外角低めストレート ファール
打ち損じてしまった。狙っていたのに。追い込まれたか、、なんとか粘ろう
4球目低めのチェンジアップ ショートバウンド ボール
危うく振ってしまいそうになったが、ギリギリで止まることができた。やっぱり調子いいな多分。普段なら空振りしてた。
5球目…多分ストレート。
右のスリークォーター気味のフォームから、左バッターの内角へ。身体に向かってくるような球だった。
「は、は、入った~~~」
「きゃ~~。」
一瞬の静寂から、悲鳴のような歓声が球場に響いた。
打った瞬間の記憶も感触も無いだからどこへ飛んで行ったのかも、それどころか前に飛んだのかも分からなかった。
ただ審判が右手を上に回していて、ベンチ、スタンドが湧いていた。
「あ、入ったのか。」
高校入ってから初めての柵越えホームランだった。
どうやらライトのポール際ギリギリのところに入ったようだ。
これで6対2。まだチャンスはある。
そう思っていたが、うまく流れに乗せてもらえずその点差のまま7回表まできた。
しかしここで佐藤さんが打ち込まれ、1点奪われ8対2。尚も1死1.3塁。ここで伝令が送られマウンドに集まった。
「次のバッターは4番で、今日も2本長打を打ってるから、内野は中間守備でまぁゲッツー狙い。だけどサードランナー突っ込んできてアウトにできそうだと思ったら、迷わずホームに投げろ!だそうだ。まぁ1点取られればコールドの点差だけど、次の裏でまた点取ればいいから、固くなるなよ!」
ばらけて守備につくとある思いに覆われていた。
(飛んでこないで)
石井さんの4番に対する初球、いきなり打ってきたが打ち損じ。ショート真っ正面にきた。
そこまで打球も強くない。
とても捕球しやすい。ゲッツーコースだ。これでスリーアウトチェンジ。
しかし、サードランナーがスタートを切っているのが目に入り、そちらもタイミング的には自分の肩なら余裕でアウトにできそうだった。
しかし最初の段階で体勢はゲッツーを狙っていた。しかしホームに投げればアウトも、、、
そんな迷いが一瞬、手元を狂わせ握り変えに失敗した。
ホームは諦め何とかゲッツーをとりたいと思い2塁へ送球。ギリギリアウト。セカンドの瀬戸さんは流れるように握り変え1塁へ送球。
「セーフ!!」
打者走者はセーフになり、2死1塁。
1点取られてしまった。
一瞬迷ったせいで、
握り変えを失敗したせいで、
9対2。
次の回点をとれなけば試合終了。
「オッケーツーアウトツーアウト。ここで切ろう!」
「次、取り返せばいいから切り替えてこう!」
その次の打者を打ち取り、ベンチへ戻った。
7回裏の攻撃は6番からだった。しかし、6番、7番と続いて三振をとられ、2死。
何となくネクストにいたが、7番の上野さんへの代打の三年生が、涙目でバッターボックスから戻ってきた。
「頼むぞ...」
あのミスから何となくふわふわしていた気持ちから、一気に現実に戻された。
7回裏2死ランナーなし。7点差。
ここで自分がアウトになればおわり。
正直、誰でもいいから変わってほしい。代打を送ってほしい。
1球目外角低めストレート ストライク
(何か違う)
違和感を感じてマウンドに目を向けると、ピッチャーは左投に変わっていた。それすらも気づいていなかった。
2球目外角 ストレート ストライク
追い込まれた、次は何とか当てて粘らなきゃ。
3球目、真ん中よりの外にさっきまでの2球より遅い球がきた。思いっきり打ちに行った。しかし、ボールはあっという間に外に逃げていき、バットにかすりもしなかった。
3球目、外角ボール球 スライダー
「ありがとうございました!!」
相手チームとの握手。俺の相手は最後に投げていた左ピッチャーだった。
勝ち誇った顔をして思いっきりこちらを見下してきたが、何も言い返せなかった。
次に、応援席へ挨拶。掛け声をするキャプテンの声も震えていた。そしてなにより、応援席の3年生がみんな泣いていた。応援に来た生徒にも何人か泣いている人がいた。
「負けたのか、、」
悲しさより先に悔しさが、情けなさが湧いて来た。
先輩たちは
「よく打ったな!次からもがんばれよ!」
「ほんとお前がショートにいて助かった。投げてて頼もしかったよ。」
泣きながら、話すのも苦しそうなのに、先輩たちは俺に声をかけてくれた。
(何で誰も責めてこないんだ..野球をやってる人なら誰でもわかるだろ、、7回の俺のアレは、完全にミスだ、、、記録に残らないエラーだ、、、あれでコールドになったんだ。)
ベンチ裏の自分の荷物のところまで行くと、先輩達から遅れて涙が溢れてきた。誰も責めてくれないミスへの罪悪感が溢れてきた。
そのあとは周りに流されるようにバスに乗り込んだ。
涙が止まらなかった。
高校野球の世界の入ってたった3ヶ月ちょっと。
そんな俺が先輩たちと同じように悔しがっていいんだろうか
泣いていいんだろうか
そんな思いが一層悔しさを大きくした。
新聞によるとベスト8は30年ぶりらしい。
「ここまできたのはすごいけど、正直相手が悪いよなー。春の選抜にも出てた優勝候補だぜ?」
「まぁそうだけど名前聞いてビビってもしょうがないからやるしかないよ。」
「そうだな!いい加減梅宮のいい当たり見たいから、今日は期待してるわ。(笑)」
そう言って北野は励ましてくれた。1回戦からここまで安打は何本かあるものの、会心の当たりや長打は一本もなく、自分の中でも消化不良だ。
「あ、あとな、今日は全校応援だから。まぁそんな気にならないと思うけど。頑張れよ!スタンドで盛り上げるからな。」
相手は選抜出場していたメンバーを中心に1年生などの戦力も時々使ってくる。どの選手も他の高校ならレギュラーを獲れるような奴らばかりだ。
試合が始まった。
先攻は相手の私立静竜学園。
初回から実力を見せつけられ、エースの石井さんはいきなり3失点。決してコントロールが悪かったり、調子が悪いわけじゃない。それでも抑えられないくらい相手の打撃能力が高い。
(やばいな…)
静竜の先制攻撃に完全に流れを持ってかれてしまった。伊豆高校も今年は打撃だけなら県でも上位。だからヒットが出ないわけじゃない。けれど点が取れなかった。ついでに相手には小刻みに点を取られ、5回表が終わって6対0このままいくとゴールドもありうる展開になってしまった。
「8番 ショート 梅宮くん。」
5回裏、無死1塁の反撃のチャンスでまわってきた。
(点差は離れてるからここでバントはないな。なんとか繋いで自分も出塁しよう。)
1打席目もいい感じに振れていた。多分調子はいい。ストレートにはっていよう。
1球目外角にストレート ボール
2球目外角ギリギリにスライダー ストライク
3球目外角低めストレート ファール
打ち損じてしまった。狙っていたのに。追い込まれたか、、なんとか粘ろう
4球目低めのチェンジアップ ショートバウンド ボール
危うく振ってしまいそうになったが、ギリギリで止まることができた。やっぱり調子いいな多分。普段なら空振りしてた。
5球目…多分ストレート。
右のスリークォーター気味のフォームから、左バッターの内角へ。身体に向かってくるような球だった。
「は、は、入った~~~」
「きゃ~~。」
一瞬の静寂から、悲鳴のような歓声が球場に響いた。
打った瞬間の記憶も感触も無いだからどこへ飛んで行ったのかも、それどころか前に飛んだのかも分からなかった。
ただ審判が右手を上に回していて、ベンチ、スタンドが湧いていた。
「あ、入ったのか。」
高校入ってから初めての柵越えホームランだった。
どうやらライトのポール際ギリギリのところに入ったようだ。
これで6対2。まだチャンスはある。
そう思っていたが、うまく流れに乗せてもらえずその点差のまま7回表まできた。
しかしここで佐藤さんが打ち込まれ、1点奪われ8対2。尚も1死1.3塁。ここで伝令が送られマウンドに集まった。
「次のバッターは4番で、今日も2本長打を打ってるから、内野は中間守備でまぁゲッツー狙い。だけどサードランナー突っ込んできてアウトにできそうだと思ったら、迷わずホームに投げろ!だそうだ。まぁ1点取られればコールドの点差だけど、次の裏でまた点取ればいいから、固くなるなよ!」
ばらけて守備につくとある思いに覆われていた。
(飛んでこないで)
石井さんの4番に対する初球、いきなり打ってきたが打ち損じ。ショート真っ正面にきた。
そこまで打球も強くない。
とても捕球しやすい。ゲッツーコースだ。これでスリーアウトチェンジ。
しかし、サードランナーがスタートを切っているのが目に入り、そちらもタイミング的には自分の肩なら余裕でアウトにできそうだった。
しかし最初の段階で体勢はゲッツーを狙っていた。しかしホームに投げればアウトも、、、
そんな迷いが一瞬、手元を狂わせ握り変えに失敗した。
ホームは諦め何とかゲッツーをとりたいと思い2塁へ送球。ギリギリアウト。セカンドの瀬戸さんは流れるように握り変え1塁へ送球。
「セーフ!!」
打者走者はセーフになり、2死1塁。
1点取られてしまった。
一瞬迷ったせいで、
握り変えを失敗したせいで、
9対2。
次の回点をとれなけば試合終了。
「オッケーツーアウトツーアウト。ここで切ろう!」
「次、取り返せばいいから切り替えてこう!」
その次の打者を打ち取り、ベンチへ戻った。
7回裏の攻撃は6番からだった。しかし、6番、7番と続いて三振をとられ、2死。
何となくネクストにいたが、7番の上野さんへの代打の三年生が、涙目でバッターボックスから戻ってきた。
「頼むぞ...」
あのミスから何となくふわふわしていた気持ちから、一気に現実に戻された。
7回裏2死ランナーなし。7点差。
ここで自分がアウトになればおわり。
正直、誰でもいいから変わってほしい。代打を送ってほしい。
1球目外角低めストレート ストライク
(何か違う)
違和感を感じてマウンドに目を向けると、ピッチャーは左投に変わっていた。それすらも気づいていなかった。
2球目外角 ストレート ストライク
追い込まれた、次は何とか当てて粘らなきゃ。
3球目、真ん中よりの外にさっきまでの2球より遅い球がきた。思いっきり打ちに行った。しかし、ボールはあっという間に外に逃げていき、バットにかすりもしなかった。
3球目、外角ボール球 スライダー
「ありがとうございました!!」
相手チームとの握手。俺の相手は最後に投げていた左ピッチャーだった。
勝ち誇った顔をして思いっきりこちらを見下してきたが、何も言い返せなかった。
次に、応援席へ挨拶。掛け声をするキャプテンの声も震えていた。そしてなにより、応援席の3年生がみんな泣いていた。応援に来た生徒にも何人か泣いている人がいた。
「負けたのか、、」
悲しさより先に悔しさが、情けなさが湧いて来た。
先輩たちは
「よく打ったな!次からもがんばれよ!」
「ほんとお前がショートにいて助かった。投げてて頼もしかったよ。」
泣きながら、話すのも苦しそうなのに、先輩たちは俺に声をかけてくれた。
(何で誰も責めてこないんだ..野球をやってる人なら誰でもわかるだろ、、7回の俺のアレは、完全にミスだ、、、記録に残らないエラーだ、、、あれでコールドになったんだ。)
ベンチ裏の自分の荷物のところまで行くと、先輩達から遅れて涙が溢れてきた。誰も責めてくれないミスへの罪悪感が溢れてきた。
そのあとは周りに流されるようにバスに乗り込んだ。
涙が止まらなかった。
高校野球の世界の入ってたった3ヶ月ちょっと。
そんな俺が先輩たちと同じように悔しがっていいんだろうか
泣いていいんだろうか
そんな思いが一層悔しさを大きくした。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おおっ!!
すっごい面白いです!!
アルファポリスでは、野球の物語があまりないのでがっかりしていたのですが、この小説を読ませていただいた時思わず、「よっしゃーーっ!」って叫んじゃいました!!
私、(一応)女ですが、野球が大好きなんです!!
楽しみが増えました!
ありがとうございます!
頑張って下さい!!!