89 / 99
第6章 呉との闘い
88 モンスター討伐依頼 青と赤の独壇場
しおりを挟む
2体のゴーレムが悠々と歩を進める。
グレータウルフが唸り声をあげた。ゴーレムに警戒しているようだ。
無理もない。自分の何倍も大きな敵がいるというのに、ゴーレム達はそれ意に介している様子が全くない。まるで歩き慣れた道をいつものように散歩しているかのようだ。
「んー? そんなにビビっちゃってどうしたの? 強そうなのは図体だけなのかな☆」
「わざわざ挑発するな。縮まってる今なら即滅殺可能」
「……グルルルル! グルォォオオオン!」
グレータウルフは言葉を理解しているのか、赤武者の声に反応したように苛立った様子で遠吠えをした。すると周りにいたウルフ達が一斉にゴーレムへ向かって走り出す。
統率が取れたように見える動きだ。あの2体のグレータウルフがこの群れのボスなのかもしれない。俺が初めて出会ったグレータウルフは一匹狼だった。やはりモンスターによって個体差があるようだ。
「ちっ。言わんこっちゃ無いな。クソ赤のせいだぞ」
「あは! これで少しは楽しめそうかな☆」
「ぬかせ。クソ赤の出番など無い。私一人で全滅殺、だ」
青武者の姿がかき消える。次の瞬間には遥か向こうにいたウルフが首を飛ばしていた。
青武者の超スピードで瞬く間に距離を詰め、これまた超高速の居合抜きでウルフの首を飛ばしたのだ。限界ギリギリまで出力を上げた脚部と、装甲を捨てて軽量化されたボディ、そして英霊の箱の能力で宿った魂の技術が成せる技だ。どうやらこの能力は過去の達人達の魂を模してゴーレムに宿らせるらしい。らしいというのは、猫の特魔は契約者毎に能力が変わるので、コン先生にも分からなかったのだ。
「滅。滅。滅。滅」
みるみる間にウルフ達の数が減っていく。スピード特化にした甲斐があった。……ちょっと甲斐があり過ぎる気がするが。
「グルルルァアアア!」
青武者の居合抜きをグレータウルフが爪で弾き飛ばした。あのスピードに追い付くとは、やはりグレータウルフは侮れない。
「ちっ! デカブツめ」
たまらず青武者が距離を取る。スピード特化の青武者にとって、あのパワーは脅威だ。一撃でやられかねない。
「青ちゃん、こいつはあたしに任せて☆ いっくよー! 赤武者ボンバー!」
上空から落ちてきた赤武者の上段切り。せっかくの不意打ちだったのにでかい声で話しながら攻撃したせいでグレータウルフの爪に弾かれてしまう。
「グゥゥゥ」
しかしグレータウルフは反撃することなく、赤武者から距離を取った。見れば、その巨大な爪が根元から断ち切られていた。
赤武者はその重厚な装甲を生かすため、腕部にパワーを集中させている。肉を切らせて骨を断つ戦法だ。前に赤武者ボンバーとやらをやって見せてもらった時は、ちょっとしたクレーターが出来ていた。そういう意味では、グレータウルフの爪はなかなかの強度だったのだろう。今回は地面にヒビが入る程度で済んでいるからだ。
「青ちゃん、デカいのはあたしがもらうよ☆」
「ふん。適材適所。致し方無し」
青武者はそう言うと、再びウルフの首を飛ばす作業に戻る。凄まじい殲滅力だ。こいつを一体町に放てば、一晩で住民を殲滅できるだろう。いや、やらないけどね。そういう実力があるというだけね。
スピードの青武者。パワーの赤武者。このコンビは俺の想定以上のポテンシャルを持っているようだ。
「赤武者、蒼武者、あとは頼んでも大丈夫か?」
「任されたり☆」
「褒美はきっちりともらう。頭なでなで10分間だ。無論、私がなでなでする」
よし、大丈夫そうだな。青武者が何か言っていた気がするが、プログラムのバクかな。あとできっちりメンテナンスしておこう。
「というわけで千春さん、あとはあいつらがなんとかしてくれると思いますので。僕は行きますね」
「……、はあ。……最近は情けない巧魔氏を見てたので忘れかけてましたが、やっぱり巧魔氏は規格外なのです」
「鈴音、行けるか?」
「うむ。急ぐぞあるじ」
鈴音が猫の姿になり、俺の肩にのった。時間があまりない。俺はサポートゴーレムを起動し、人気の無い場所を目指して走り出した。
グレータウルフが唸り声をあげた。ゴーレムに警戒しているようだ。
無理もない。自分の何倍も大きな敵がいるというのに、ゴーレム達はそれ意に介している様子が全くない。まるで歩き慣れた道をいつものように散歩しているかのようだ。
「んー? そんなにビビっちゃってどうしたの? 強そうなのは図体だけなのかな☆」
「わざわざ挑発するな。縮まってる今なら即滅殺可能」
「……グルルルル! グルォォオオオン!」
グレータウルフは言葉を理解しているのか、赤武者の声に反応したように苛立った様子で遠吠えをした。すると周りにいたウルフ達が一斉にゴーレムへ向かって走り出す。
統率が取れたように見える動きだ。あの2体のグレータウルフがこの群れのボスなのかもしれない。俺が初めて出会ったグレータウルフは一匹狼だった。やはりモンスターによって個体差があるようだ。
「ちっ。言わんこっちゃ無いな。クソ赤のせいだぞ」
「あは! これで少しは楽しめそうかな☆」
「ぬかせ。クソ赤の出番など無い。私一人で全滅殺、だ」
青武者の姿がかき消える。次の瞬間には遥か向こうにいたウルフが首を飛ばしていた。
青武者の超スピードで瞬く間に距離を詰め、これまた超高速の居合抜きでウルフの首を飛ばしたのだ。限界ギリギリまで出力を上げた脚部と、装甲を捨てて軽量化されたボディ、そして英霊の箱の能力で宿った魂の技術が成せる技だ。どうやらこの能力は過去の達人達の魂を模してゴーレムに宿らせるらしい。らしいというのは、猫の特魔は契約者毎に能力が変わるので、コン先生にも分からなかったのだ。
「滅。滅。滅。滅」
みるみる間にウルフ達の数が減っていく。スピード特化にした甲斐があった。……ちょっと甲斐があり過ぎる気がするが。
「グルルルァアアア!」
青武者の居合抜きをグレータウルフが爪で弾き飛ばした。あのスピードに追い付くとは、やはりグレータウルフは侮れない。
「ちっ! デカブツめ」
たまらず青武者が距離を取る。スピード特化の青武者にとって、あのパワーは脅威だ。一撃でやられかねない。
「青ちゃん、こいつはあたしに任せて☆ いっくよー! 赤武者ボンバー!」
上空から落ちてきた赤武者の上段切り。せっかくの不意打ちだったのにでかい声で話しながら攻撃したせいでグレータウルフの爪に弾かれてしまう。
「グゥゥゥ」
しかしグレータウルフは反撃することなく、赤武者から距離を取った。見れば、その巨大な爪が根元から断ち切られていた。
赤武者はその重厚な装甲を生かすため、腕部にパワーを集中させている。肉を切らせて骨を断つ戦法だ。前に赤武者ボンバーとやらをやって見せてもらった時は、ちょっとしたクレーターが出来ていた。そういう意味では、グレータウルフの爪はなかなかの強度だったのだろう。今回は地面にヒビが入る程度で済んでいるからだ。
「青ちゃん、デカいのはあたしがもらうよ☆」
「ふん。適材適所。致し方無し」
青武者はそう言うと、再びウルフの首を飛ばす作業に戻る。凄まじい殲滅力だ。こいつを一体町に放てば、一晩で住民を殲滅できるだろう。いや、やらないけどね。そういう実力があるというだけね。
スピードの青武者。パワーの赤武者。このコンビは俺の想定以上のポテンシャルを持っているようだ。
「赤武者、蒼武者、あとは頼んでも大丈夫か?」
「任されたり☆」
「褒美はきっちりともらう。頭なでなで10分間だ。無論、私がなでなでする」
よし、大丈夫そうだな。青武者が何か言っていた気がするが、プログラムのバクかな。あとできっちりメンテナンスしておこう。
「というわけで千春さん、あとはあいつらがなんとかしてくれると思いますので。僕は行きますね」
「……、はあ。……最近は情けない巧魔氏を見てたので忘れかけてましたが、やっぱり巧魔氏は規格外なのです」
「鈴音、行けるか?」
「うむ。急ぐぞあるじ」
鈴音が猫の姿になり、俺の肩にのった。時間があまりない。俺はサポートゴーレムを起動し、人気の無い場所を目指して走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる