転生プログラマのゴーレム王朝建国日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~

堀籠 遼ノ助

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第6章 呉との闘い

89 貧乳宇宙人再来?

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 俺は身を包んだゴーレムにマナを注ぎ、馬車道を駆けた。いつもよりもスピードが速い。足の間接に仕込んだゴーレム・コアへインパクトの瞬間だけに必要な量のマナを送れるようになったことで、少ないマナで大きい動力をえられるようになったようだ。景色が後ろに飛ぶように過ぎ去っていく。

「あるじ、もうそろそろいいじゃろう」

 10分ほど走ったところで鈴音が声をかけてきた。いつの間にか山道を下り、平原まできていたようだ。馬車より断然速い。

 落ちかけていた日が山にかかり、あたりが夕暮れに染まっていく。
 すると窪みに生じた影や岩陰あたりからにょきにょきと奴らが現れ始めた。

「鈴音、剣を一本お願い」

「――ほれ」

 鈴音が地面に手をかざして剣を出現させ、俺に放り投げる。

「ありがと。今日はいつもより数が少ないし、すぐに片付きそうだな」

「うむ。あるじの足も速くなったようだし、晩飯に遅れることはなさそうじゃ――「イクスプロージョン!」

 俺の放った炎が大爆発をおこし、幾体かの影が吹き飛んだ。

「っっっ!! こんのばかあるじ! それを使う前に一声かけろ! ああ、耳がきーんとしとる」

 ……しまった。鈴音は人よりも耳がいいからこの魔法は苦手なんだった。俺は鈴音に謝った後、少し離れてもらうことにした。敵の数が多く、まだ何発かイクスプロージョンを使いそうだからだ。

 次々と出現する影を剣で切り裂いては、次の目標へとテンポ良く切り替えていく。サポートゴーレムの調子がいいことも有り、今日はイクス・プロージョン以外の攻撃魔法を使わなくてもいけそうだ。 しかし、俺って攻撃力とスピードは上々だが、防御力が紙だよな。いくら精神が大人でも、肉体はまだ5歳だ。敵の攻撃が掠っただけで致命傷になりかねない。この世界には回復魔法があるらしい。もし俺に適性があるなら、覚えておきたいところだ。

《マスタ。最後の1体です》

(オッケー)

 俺は最後の影を横薙ぎに一閃。コン先生の言うとおり、もう影は現れないようだ。

「終わったようじゃの」

 鈴音がひょい、と俺の肩に乗る。

「痛っ! ちょっと鈴音、爪が立ってる」

「ふん。ワシの耳の敵を討ったまでじゃ」

「悪かったよ……。しかし、今日は少なかったな」

 いつもは日が暮れるまで陰の出現が続く。しかし、今日はまだ日が落ちきっていない。

「うーむ……恐らく、今日で終いということじゃろ」

「お終い? それって、もう影は出てこないってこと?」

「うむ。逢魔の剣が影を使役するために吸収したマナが枯れたのじゃろう」

「よかったー。やっと戮の嫌がらせから逃げられた」

「そのおかげで強くなれたはずじゃ。この剣は、初代が兵士育成のために作った剣じゃからな。魔力量もまた一段と増えたじゃろう。……うん? あれは……」

「なんだ、まだ終わって無いじゃんか」


 すべて倒したと思っていたが、1体陰が残っていた。だが、いつもと少し様子が違う。ぐねぐねと揺らいでいて形が安定していないようだ。

「おかしいのう。もうあるじの中には剣のマナを感じないからもう終わりのはずなんじゃが……」

「まあ、倒してから考えようよ……ん?」

 俺が影にトドメを刺そうと近づいていくと、何やらぶつぶつと話し声が聞こえてきた。

『………………………ちゃん……して………がしな………………』

「……鈴音、陰って喋れるのか?」

「……確かに喋っとるが、陰にそんなことは出来んはずじゃ」

「でも実際に喋ってるから。何て言ってるんだろ」

『………ちゃん。お…えちゃん。どうしておねえちゃんが』

 だんだんと陰が形を成してきた。これは……女性だ。陰が線の細い女性の姿を取り始めたのだ。あれ、なんか見覚えがあるような。これは……そうだ、あのときの貧乳宇宙人! あいつにそっくりだ。

「これは……母さま? いやそんな馬鹿な・・・・・・」

「え? 貧乳宇宙人が?」

 鈴音に母親がいたのか? でも鈴音って人じゃないよな……。どういうことなんだろう。

「ひんにゅう? なんだそれは・・・・・・。いや、そんなはずはないな。母さまは直接この世界に関わることはないはずじゃ」

 貧乳宇宙人っぽい陰は形がはっきりしてくるとその言葉もはっきりとしてきた。

『人間なんかを助けなければ・・・・・・おねえちゃんが……殺されることはなかった。あいつらにそんな価値なんてない。……ならあいつらが死ねば・・・・・・そうだ。……のはあいつらだ。あいつらが……べきだ。私からおねえちゃんを奪ったことを永遠に呪ってやる。永遠に呪ってやる。魔女の力を侮った事を未来永劫後悔するがいい。呪ってやる。お前らの子供も。その子供も。その子供も。未来永劫呪ってやる。呪ってやる。呪ってやる。呪う。呪う。呪う。呪う。呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪』

《膨大な魔力を検知。マスター、危険です。下がって》

(了解コン先生!)
 
 怖えよこいつ! 貧乳宇宙人ってこんなキャラだったっけ? あいつとは別人なんだろうか。しかも魔女がどうとか呪うとか、一体なんの話だ?

「危険察知! 即滅殺!」

 その時突如蒼武者が現れ一閃。陰の首に光が走った。
 呪詛を振りまいていた陰はびくりと痙攣したあと、ぐずぐずと崩れ落ち、あっけなく地面に吸い込まれていった。

「蒼武者? どうしてここに?」

「でかぶつは赤い馬鹿が片付けた。雑魚はすべて掃除したのでマスターの手伝いに来た」

 モンスターを片付けてからここまで追いついたのか。さすが蒼武者は速いなあ。こいつは忍者的なポジションにすると活躍するかもしてないな。

「マスター、私は役にったっただろう」

 うーん。もうちょっと陰の話を聞きたかったが、あぶない奴だったしな。

「うん、助かったよ。ありがとう蒼武者」

「では褒美を頂戴する。なでなでなでなで……」

 蒼武者が俺の髪をぐしゃぐしゃとなで回し始める。こいつはなぜか命令を完遂する度に俺の頭をぐしゃぐしゃにするのだ。迷惑この上ない。ちなみに赤武者は抱きついたままぶん回してくるからさらに始末が悪い。あいつの足が遅くて助かった。

「も、もういいだろ蒼武者。『還れ蒼武者、赤武者』」

「む。まだ足りない。あと1時間――」

 蒼武者の足元に魔方陣が広がり、蒼武者が地面に吸い込まれていった。……あいつあと1時間もなで回すつもりだったのか。強制帰還機能を付けといてよかった。赤武者も向こうで地面に吸い込まれているだろう。

「さて、どうするあるじ?」

「うーん、向こうは赤武者が片付けたみたいだし。先に龍都に戻っておこうか」

 俺たちは龍街に戻ることにした。
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