91 / 99
第6章 呉との闘い
90 小さい来訪者
しおりを挟む
龍街の広場に戻ると、先に戻っていた千春さんが俺たちに声をかけてきた。
「おーい巧魔氏ー、こっちですー。ここで討伐報酬が貰えますよー」
そこは冒険者が長蛇の列をなしていた。俺と鈴音は千春さんが並んでいたところに入れさせてもらった。
「ありがとうございます千春さん。そっちは大丈夫でしたか?」
「巧魔氏の召還した2体の強力なゴーレムがほとんど片付けてくれましたです」
「赤い方のゴーレムもちゃんと仕事してました?」
赤武者は青武者と違って戦闘を楽しみすぎる癖があるのでかなり心配だ。
「うーん。ちょっと危なっかしい戦い方ではらはらしましたが。赤いゴーレムの片腕がちぎれた時はぞっとしましたです」
え。そんな馬鹿な。赤武者の戦闘能力なら、あのグレータゴーレムを圧倒出来たはずだと踏んだのだが、目測を誤ったか。
「どうやって腕が取れたんですか?」
「しばらくは、グレータウルフと赤武者の戦いは拮抗してたです。グレータウルフが2体で交互に赤武者を攻撃して、赤武者は大剣でそれを弾く。どちらも譲らず両者の実力は拮抗してました。しかししばらくするとグレータウルフの体力に底が見え始め、赤いゴーレムの剣が体を掠め始めたです。そのまま行けば赤いゴーレムが無傷で勝利するように見えましたですが……」
うーん。そうだよな。俺が見たときも、赤武者とグレータウルフ2体は同じぐらいか、やや赤武者が有利に見えた。その条件なら、100回戦っても100回赤武者が勝つ。赤武者の強固な鎧はちょっとやそっとじゃ壊すことが出来ないし、ゴーレムに体力という概念は無い。長期戦なら圧倒的にゴーレムが有利なのだ。
「赤いゴーレムが右腕を差し出しちゃったんです。『かったるい攻撃だなあ。ほら右腕あげるから攻めてきなよ☆』とか言って。右腕を壊されたと同時に大剣で一体撃破。そのまま反動を利用して後ろのゴーレムもざっくりと真っ二つにしてましたです。敵の返り血を雨のように浴びながら『やっぱあたし最強☆』とか叫んでました。……いったいどんな作り方をしたらあんなゴーレムが出来ちゃうですか巧魔氏……。規格外の強さではありますが、性格に難がありすぎだと思うです」
「えっと、実は英霊の箱という契約者の能力で勝手にああいう性格になってしまって。今のあいつは自分の意思を持っているので、ゴーレムという枠に当てはまるかも微妙な存在ですね」
「ああ、もう理解不能です。まあ巧魔氏なら何が出来ても不思議じゃないですが……」
千春さんがあきれ気味にため息をついた。
しかし赤武者にはまいったな。肉を切らせて骨を断つどころか、骨を切らせて骨を切ってるじゃないか。死なない体だからといって無茶苦茶してるな。もし倒されていたら千春さんや冒険者さん達がどうなっていたか。あとできっちり言っておかないと。
「あるじ、次でわしらの番じゃ」
いつの間にか列の先頭あたりまで来ていた。龍選隊の皆さんが報酬を配っている。
「討伐数0か。では銀貨1枚だな。はい、次の者」
「ご苦労様です、龍選隊の皆さん」
「おおお! これは巧魔様ご一行ではないですか!」
龍選隊の1人が大きな声を上げると、周りに居た冒険者達が皆こちらを注目し始めた。……というか、並んでいるときからちらちらと視線は感じていたんだが、龍選隊の声をきっかけに遠慮無く見始めたようだ。いったいなんだんだろう。
「いやあ素晴らしい活躍でした。そちらの魔法使いのお嬢さんも詩詠唱を使いこなす手練れの方でしたし、なにより巧魔氏のゴーレムは規格外の強さでした! この戦いに同席できて真に光栄です!」
「いえ、僕は何も。あれはゴーレム達が頑張っただけでして」
「なにをご謙遜を! そのゴーレムを生み出したのは他でもない巧魔様ではないですか」
「まあ、そうなんですが」
はたから見るとそうなるんだな。俺としては、赤武者と青武者が勝手にやっつけてくれた印象しかない。やっぱり俺自身の手で倒さないと、戦ってる実感が沸かない。戮と戦う時が来る時までにはなんとかしないとな。やることはいっぱいだ。
「それではお二方のプレートを回収します」
俺と千春さんのプレートを手渡す。それを龍選隊が石版のようなものにかざすと、青白い文字が石版に浮かんだ。凄いな。どんな仕組みで作られてるんだろう。これを応用すれば電光掲示板のようなものを作れるかもしれないな。
「ウルフ討伐数58体、グレータウルフ討伐数2体。報奨金はウルフが1体で銀貨1枚、グレータウルフが1体で金貨2枚となりますので、合計で金貨9枚と銀貨8枚となります」
金貨が1枚10万円くらいの価値、銀貨が1万円くらいの価値だから……約100万稼いだことになる。
「えーっと、こんなにもらってしまっていいのでしょうか。皆さんの取り分をうばってしまったみたいで悪いですね」
「何をおっしゃいますか! これは巧魔様の正当な取り分です。それに、今回はグレーターウルフが出現したんですよ! 巧魔様がいらっしゃらなければ報酬どころか皆の命も危ういところでした。本来であればもっと金額を増やしてもいいくらいです。しかし今は……」
龍選隊の人は周りを見渡すと、声を落として俺にささやく。
「巧魔様は当然ご存じかと思いますが、呉との戦争が起こりかねない情勢ですので、国の財政も切り詰めているのですよ。なので、追加報酬が出せないということなのです」
そうか、龍選隊の人達にはその話がいっているんだな。当然か、国を守る警察のような役割をしている人達だ。当然そういった情報は上から落ちてくるんだろう。
「いえ、追加報酬なんてとんでもない。では、こちらはありがたくちょうだいしておきます」
「ええ、どうぞお受け取り下さい」
俺は龍選隊の人からずっしりと重たい金貨袋を受け取った。
「あるじ、その金はどうする気じゃ?」
「そうですね……店での売り上げ以外では初の収入ですし。せっかくですから、このお金は僕のおこずかいにしたいと思います」
今まで守谷商店で稼いでいたお金は、極力村の為に使ってきたが、今回のお金は完全に個人で稼いだものだ。俺のために使わせてもらおう。
「勉強もかねて、魔道具とかを買ってみたいですね」
「魔道具ですか。どんな魔道具が欲しいです?」
「うーん、今僕の課題は防御力なんです。今の僕では、その辺の雑魚モンスターでも一発当たれば死んでしまいます。なので、それを補強する魔道具があれば」
「……そう、それ疑問だったんです。巧魔氏、いつも夕暮れ時に正体不明のモンスターと戦ってましたよね。回復魔法も使えないのに、どう対処していたんです?」
「回復は必要なかったんですよ。……一度も怪我をしたことが無かったので」
「ああ、それで。それなら納得――出来ませんよ! なんで一度も怪我をしてないんです!」
「それは……まあ契約者の特約というやつで……」
真実は、コン先生が《右に2歩避けて下さい》《しゃがんで――すぐ右斜め方向へ跳躍、すぐさま前に3歩》などと脳内ナビゲートしてくれていたので、俺は目をつぶっていても攻撃を食らわなかったのだ。コン先生さまさまである。だが、いつまでもコン先生におんぶにだっこではいられない。コン先生に楽をして頂くためにも自立をしていかなくてはいけないのだ。
「おい、あるじ。ミニゴーレムは龍街にまで配置しているのか?」
「は? しているわけないだろ。なんだよ突然」
「じゃあ、あるじのズボンをくいくいしとるそいつは何だ?」
「へ?」
俺の足元へ視線を移す。
そこには間抜けづらのマスコットキャラ、ミニゴーレムが立っていた。
「おーい巧魔氏ー、こっちですー。ここで討伐報酬が貰えますよー」
そこは冒険者が長蛇の列をなしていた。俺と鈴音は千春さんが並んでいたところに入れさせてもらった。
「ありがとうございます千春さん。そっちは大丈夫でしたか?」
「巧魔氏の召還した2体の強力なゴーレムがほとんど片付けてくれましたです」
「赤い方のゴーレムもちゃんと仕事してました?」
赤武者は青武者と違って戦闘を楽しみすぎる癖があるのでかなり心配だ。
「うーん。ちょっと危なっかしい戦い方ではらはらしましたが。赤いゴーレムの片腕がちぎれた時はぞっとしましたです」
え。そんな馬鹿な。赤武者の戦闘能力なら、あのグレータゴーレムを圧倒出来たはずだと踏んだのだが、目測を誤ったか。
「どうやって腕が取れたんですか?」
「しばらくは、グレータウルフと赤武者の戦いは拮抗してたです。グレータウルフが2体で交互に赤武者を攻撃して、赤武者は大剣でそれを弾く。どちらも譲らず両者の実力は拮抗してました。しかししばらくするとグレータウルフの体力に底が見え始め、赤いゴーレムの剣が体を掠め始めたです。そのまま行けば赤いゴーレムが無傷で勝利するように見えましたですが……」
うーん。そうだよな。俺が見たときも、赤武者とグレータウルフ2体は同じぐらいか、やや赤武者が有利に見えた。その条件なら、100回戦っても100回赤武者が勝つ。赤武者の強固な鎧はちょっとやそっとじゃ壊すことが出来ないし、ゴーレムに体力という概念は無い。長期戦なら圧倒的にゴーレムが有利なのだ。
「赤いゴーレムが右腕を差し出しちゃったんです。『かったるい攻撃だなあ。ほら右腕あげるから攻めてきなよ☆』とか言って。右腕を壊されたと同時に大剣で一体撃破。そのまま反動を利用して後ろのゴーレムもざっくりと真っ二つにしてましたです。敵の返り血を雨のように浴びながら『やっぱあたし最強☆』とか叫んでました。……いったいどんな作り方をしたらあんなゴーレムが出来ちゃうですか巧魔氏……。規格外の強さではありますが、性格に難がありすぎだと思うです」
「えっと、実は英霊の箱という契約者の能力で勝手にああいう性格になってしまって。今のあいつは自分の意思を持っているので、ゴーレムという枠に当てはまるかも微妙な存在ですね」
「ああ、もう理解不能です。まあ巧魔氏なら何が出来ても不思議じゃないですが……」
千春さんがあきれ気味にため息をついた。
しかし赤武者にはまいったな。肉を切らせて骨を断つどころか、骨を切らせて骨を切ってるじゃないか。死なない体だからといって無茶苦茶してるな。もし倒されていたら千春さんや冒険者さん達がどうなっていたか。あとできっちり言っておかないと。
「あるじ、次でわしらの番じゃ」
いつの間にか列の先頭あたりまで来ていた。龍選隊の皆さんが報酬を配っている。
「討伐数0か。では銀貨1枚だな。はい、次の者」
「ご苦労様です、龍選隊の皆さん」
「おおお! これは巧魔様ご一行ではないですか!」
龍選隊の1人が大きな声を上げると、周りに居た冒険者達が皆こちらを注目し始めた。……というか、並んでいるときからちらちらと視線は感じていたんだが、龍選隊の声をきっかけに遠慮無く見始めたようだ。いったいなんだんだろう。
「いやあ素晴らしい活躍でした。そちらの魔法使いのお嬢さんも詩詠唱を使いこなす手練れの方でしたし、なにより巧魔氏のゴーレムは規格外の強さでした! この戦いに同席できて真に光栄です!」
「いえ、僕は何も。あれはゴーレム達が頑張っただけでして」
「なにをご謙遜を! そのゴーレムを生み出したのは他でもない巧魔様ではないですか」
「まあ、そうなんですが」
はたから見るとそうなるんだな。俺としては、赤武者と青武者が勝手にやっつけてくれた印象しかない。やっぱり俺自身の手で倒さないと、戦ってる実感が沸かない。戮と戦う時が来る時までにはなんとかしないとな。やることはいっぱいだ。
「それではお二方のプレートを回収します」
俺と千春さんのプレートを手渡す。それを龍選隊が石版のようなものにかざすと、青白い文字が石版に浮かんだ。凄いな。どんな仕組みで作られてるんだろう。これを応用すれば電光掲示板のようなものを作れるかもしれないな。
「ウルフ討伐数58体、グレータウルフ討伐数2体。報奨金はウルフが1体で銀貨1枚、グレータウルフが1体で金貨2枚となりますので、合計で金貨9枚と銀貨8枚となります」
金貨が1枚10万円くらいの価値、銀貨が1万円くらいの価値だから……約100万稼いだことになる。
「えーっと、こんなにもらってしまっていいのでしょうか。皆さんの取り分をうばってしまったみたいで悪いですね」
「何をおっしゃいますか! これは巧魔様の正当な取り分です。それに、今回はグレーターウルフが出現したんですよ! 巧魔様がいらっしゃらなければ報酬どころか皆の命も危ういところでした。本来であればもっと金額を増やしてもいいくらいです。しかし今は……」
龍選隊の人は周りを見渡すと、声を落として俺にささやく。
「巧魔様は当然ご存じかと思いますが、呉との戦争が起こりかねない情勢ですので、国の財政も切り詰めているのですよ。なので、追加報酬が出せないということなのです」
そうか、龍選隊の人達にはその話がいっているんだな。当然か、国を守る警察のような役割をしている人達だ。当然そういった情報は上から落ちてくるんだろう。
「いえ、追加報酬なんてとんでもない。では、こちらはありがたくちょうだいしておきます」
「ええ、どうぞお受け取り下さい」
俺は龍選隊の人からずっしりと重たい金貨袋を受け取った。
「あるじ、その金はどうする気じゃ?」
「そうですね……店での売り上げ以外では初の収入ですし。せっかくですから、このお金は僕のおこずかいにしたいと思います」
今まで守谷商店で稼いでいたお金は、極力村の為に使ってきたが、今回のお金は完全に個人で稼いだものだ。俺のために使わせてもらおう。
「勉強もかねて、魔道具とかを買ってみたいですね」
「魔道具ですか。どんな魔道具が欲しいです?」
「うーん、今僕の課題は防御力なんです。今の僕では、その辺の雑魚モンスターでも一発当たれば死んでしまいます。なので、それを補強する魔道具があれば」
「……そう、それ疑問だったんです。巧魔氏、いつも夕暮れ時に正体不明のモンスターと戦ってましたよね。回復魔法も使えないのに、どう対処していたんです?」
「回復は必要なかったんですよ。……一度も怪我をしたことが無かったので」
「ああ、それで。それなら納得――出来ませんよ! なんで一度も怪我をしてないんです!」
「それは……まあ契約者の特約というやつで……」
真実は、コン先生が《右に2歩避けて下さい》《しゃがんで――すぐ右斜め方向へ跳躍、すぐさま前に3歩》などと脳内ナビゲートしてくれていたので、俺は目をつぶっていても攻撃を食らわなかったのだ。コン先生さまさまである。だが、いつまでもコン先生におんぶにだっこではいられない。コン先生に楽をして頂くためにも自立をしていかなくてはいけないのだ。
「おい、あるじ。ミニゴーレムは龍街にまで配置しているのか?」
「は? しているわけないだろ。なんだよ突然」
「じゃあ、あるじのズボンをくいくいしとるそいつは何だ?」
「へ?」
俺の足元へ視線を移す。
そこには間抜けづらのマスコットキャラ、ミニゴーレムが立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる