22 / 99
第3章 幼少期(修行時代)
22 子供若ダンナ
しおりを挟む
朝、鳥の鳴き声に促されて目が覚める。
グッと伸びをすると、部屋に設置してある大袈裟な程大きな鏡で全身をチェックする。
ゴブリン襲来から早4年。
顔立ちも幼児から子供へと変化しつつあった。青いクリクリとした目に短く切り揃えた金髪の髪。我ながら愛嬌のある顔立ちだ。髪の色や目の色はどちらも母さん譲りである。父親から受け継いだのは性別ぐらいだろう。ほぼ、母さんのクローン体と言って良い。
因みに、村民達によると村1番の美人だとの呼び声が高いそうだが、いまいちピンと来ない。母さんは母さんであってそれ以外の何者でもないのだ。……我ながら何の説明にもなっていないが、男であれば今の説明で大体解ってくれるはずだ。
2階へ降りて行くと既に鈴音がダイニングテーブルに座っていた。
「遅いぞ主。寝小便でもたれておったか?」
「してねえよ! ったく、年寄りは朝が早いな」
鈴音は去年の冬頃に布団へ粗相をしたことを未だに言ってくる。
「こらこら、黒ちゃん。巧魔ちゃんが気にしてるんだから。あんまり酷いことばかりで言ってるようなら、黒ちゃんの朝御飯は抜きですよ」
母さんが台所から話しかける。手元からは湯気が立ち上っている。既に朝御飯は出来ているようだ。食欲を誘う香りが漂ってきた。
「……むう、それは困るのう。菫、今のは冗談じゃ。堪忍せい。ホレ、主も頭を下げんか」
「何で俺が下げるんだよ! 朝から理不尽過ぎるだろ!」
「今日も朝から元気だな、お前らは」
父さんが呆れたように呟く。
そうこうしている内に、母さんの料理が食卓に並んだ。卵焼きにオーク肉のソーセージ、最後に龍一郎じいさんお手製の食パンだ。
「うむ。今日もワシの好物だらけじゃ。龍一郎のパンも今日は一段と良い出来じゃの」
「はっはっは。鈴音殿に誉められると益々やる気が出ますな」
龍一郎がニコニコと喜んでいる。口調は敬語だが、その態度は孫に対するものとなんら変わらない。本当に子供好きなじいさんだ。……鈴音が子供にカテゴライズされているのは甚だ疑問ではあるが。
龍一郎は普段少し離れた所にある小さな離れに暮らしているが、食事時だけは皆で揃って食べることにしている。
「……逆にお前が苦手な食べ物を見た事が無いんだが。いったい何が苦手なんだ?」
「たくさんあるぞ。まずはオークの○丸に、シャクトリ虫のソテー、それから……」
「ゲテモノばっかりじゃねえか! 食事中に○丸とか言わないでくれます?!」
「ほんと朝から元気だなあ、お前ら……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
母さんの朝御飯を食べ終わると、俺は早速外に出た。今は春前の時期であるため、まだ肌寒い。
因みに、この世界にも四季が存在している。暦の数え方は前の世界と殆ど変わらない。月は1月~12月。年間は360日前後とやや少な目。1日の時間は24時間。1時間は60分。1分は60秒。1秒辺りの時間はあまり変わらないように思われる。
そんな偶然あり得るか? と考えた事もあるが、それは間違いである。
かの有名なアイザック・ニュートンは晩年、『自分は真理の海の波打ち際で戯れながら、時折普通より美しい貝殻を見つけて喜ぶ子供のようだ』と語っていた。
俺の持っている常識など、この新しい世界ではウンコ以下の価値しかない。目の前で起きている現象こそ、真実なのだ。
「あ、若ダンナおはようございます! 朝から難しい顔してどうしたんです?」
「若ダンナちゃん、おはよう! 今日もかわいいねえ」
「若ダンナざーす!!」
俺のとりとめもない思考は、森谷村の村民達からのげんなりする呼びかけによって現実世界に呼び戻された。
「あ、はい。どうもおはようございます。あのー、何度もいってますが、その若ダンナという呼び方はちょっと……」
「何を遠慮してるんだい! 村1番の稼ぎ頭のくせして! それに、事実巧魔ちゃんは東商店の若ダンナじゃないか」
そう、俺は今森谷村1番の稼ぎ頭、『東商店』の若ダンナとなってしまっていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
主人公の容姿を今頃描写するという斬新なスタイル!
……うっかりしてたわ(/ー ̄;)
グッと伸びをすると、部屋に設置してある大袈裟な程大きな鏡で全身をチェックする。
ゴブリン襲来から早4年。
顔立ちも幼児から子供へと変化しつつあった。青いクリクリとした目に短く切り揃えた金髪の髪。我ながら愛嬌のある顔立ちだ。髪の色や目の色はどちらも母さん譲りである。父親から受け継いだのは性別ぐらいだろう。ほぼ、母さんのクローン体と言って良い。
因みに、村民達によると村1番の美人だとの呼び声が高いそうだが、いまいちピンと来ない。母さんは母さんであってそれ以外の何者でもないのだ。……我ながら何の説明にもなっていないが、男であれば今の説明で大体解ってくれるはずだ。
2階へ降りて行くと既に鈴音がダイニングテーブルに座っていた。
「遅いぞ主。寝小便でもたれておったか?」
「してねえよ! ったく、年寄りは朝が早いな」
鈴音は去年の冬頃に布団へ粗相をしたことを未だに言ってくる。
「こらこら、黒ちゃん。巧魔ちゃんが気にしてるんだから。あんまり酷いことばかりで言ってるようなら、黒ちゃんの朝御飯は抜きですよ」
母さんが台所から話しかける。手元からは湯気が立ち上っている。既に朝御飯は出来ているようだ。食欲を誘う香りが漂ってきた。
「……むう、それは困るのう。菫、今のは冗談じゃ。堪忍せい。ホレ、主も頭を下げんか」
「何で俺が下げるんだよ! 朝から理不尽過ぎるだろ!」
「今日も朝から元気だな、お前らは」
父さんが呆れたように呟く。
そうこうしている内に、母さんの料理が食卓に並んだ。卵焼きにオーク肉のソーセージ、最後に龍一郎じいさんお手製の食パンだ。
「うむ。今日もワシの好物だらけじゃ。龍一郎のパンも今日は一段と良い出来じゃの」
「はっはっは。鈴音殿に誉められると益々やる気が出ますな」
龍一郎がニコニコと喜んでいる。口調は敬語だが、その態度は孫に対するものとなんら変わらない。本当に子供好きなじいさんだ。……鈴音が子供にカテゴライズされているのは甚だ疑問ではあるが。
龍一郎は普段少し離れた所にある小さな離れに暮らしているが、食事時だけは皆で揃って食べることにしている。
「……逆にお前が苦手な食べ物を見た事が無いんだが。いったい何が苦手なんだ?」
「たくさんあるぞ。まずはオークの○丸に、シャクトリ虫のソテー、それから……」
「ゲテモノばっかりじゃねえか! 食事中に○丸とか言わないでくれます?!」
「ほんと朝から元気だなあ、お前ら……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
母さんの朝御飯を食べ終わると、俺は早速外に出た。今は春前の時期であるため、まだ肌寒い。
因みに、この世界にも四季が存在している。暦の数え方は前の世界と殆ど変わらない。月は1月~12月。年間は360日前後とやや少な目。1日の時間は24時間。1時間は60分。1分は60秒。1秒辺りの時間はあまり変わらないように思われる。
そんな偶然あり得るか? と考えた事もあるが、それは間違いである。
かの有名なアイザック・ニュートンは晩年、『自分は真理の海の波打ち際で戯れながら、時折普通より美しい貝殻を見つけて喜ぶ子供のようだ』と語っていた。
俺の持っている常識など、この新しい世界ではウンコ以下の価値しかない。目の前で起きている現象こそ、真実なのだ。
「あ、若ダンナおはようございます! 朝から難しい顔してどうしたんです?」
「若ダンナちゃん、おはよう! 今日もかわいいねえ」
「若ダンナざーす!!」
俺のとりとめもない思考は、森谷村の村民達からのげんなりする呼びかけによって現実世界に呼び戻された。
「あ、はい。どうもおはようございます。あのー、何度もいってますが、その若ダンナという呼び方はちょっと……」
「何を遠慮してるんだい! 村1番の稼ぎ頭のくせして! それに、事実巧魔ちゃんは東商店の若ダンナじゃないか」
そう、俺は今森谷村1番の稼ぎ頭、『東商店』の若ダンナとなってしまっていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
主人公の容姿を今頃描写するという斬新なスタイル!
……うっかりしてたわ(/ー ̄;)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる