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第1章 初めから死亡フラグ
2 異世界転生(2017/11/30改稿)
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縫い針の穴に頭から突っ込んで体を通すとしたら、めちゃめちゃ苦労すると思うが、生まれ落ちる苦しみはそれを鼻で笑うレベルだ。
あまりの苦しさに叫び声をあげるが、肺が小さいためか、数秒しか声をあげられない。
仕方なく何度も息を吸っては気のすむまで声をあげるが、計らずも「おぎゃー! おぎゃー!」と声をあげてしまったのは自然の摂理と言うものだろうか。
落ち着いたところで、今おかれている状況を確認する。
体は柔らかく暖かな何かに包まれていて、とてもいい心地がした。あたりを見渡そうとしたが、首が思うように動かない。
(ああ、そういえば宇宙人が生まれ変わるとか言っていたな。ということは、今は赤ん坊だから首が据わって無いんだろう)
俺はそう納得し、目線だけで辺りをうかがう。視界がぼやけていてうまく見えないが、辺りは暗いので夜なのかもしれない。
耳はよく聞こえるようなので、聴覚に意識を集中させと、何かがぶつかり合うような喧騒が聞こえてくる。
(喧嘩か……いや、これは何かに襲われている?)
さらに耳に意識を集中させると、若い男の声が聞こえてきた。
「生まれたか!? 菫?!」
「はあ、はあ……ええ、生まれた」
視界は朧気だが、誰かが俺を覗きこんでいるのがわかった。
俺の胸の中から言い知れない安心感が込み上げる。直感的に解った。きっと彼女が俺の母親だ。
「ごめんね。私がこんなところで生まなければ、あなたは、幸せな人生を歩めたかも知れないのに」
俺の頬を水滴が何度も落ちてくる。
どうやら泣いているらしい。
「おいおい、泣くな菫! 大丈夫だ、狼が何匹来ようが、すべて切り伏せてやる」
(狼が近くに?)
俺は聴覚に意識を集中させると、低い唸り声があちこちから聞こえてきた。ざっと数えただけでも10匹は居るだろう。完全に詰んでる。管理者は3日ももたないと言っていたが、30分の間違いなんじゃないか?。
「晃一! 危ない!」
男の悲鳴が響く。
「くっ……そ。 下手打っちまった」
コウイチとは、恐らく俺の父親だろう。声に力がない。恐らくどこかを噛みつかれたのだろう。傷が深くなければいいが、やはり視力が弱く何も見えない。見えないということが、こんなに恐怖心を煽られるとは思ってもみなかった。
「グルルル……」
狼の唸り声が前後左右から聞こえる。手傷を負わせてチャンスと見たのだろう。狼の声がだんだんと近づいてくる。
まさに絶体絶命。管理人のやつは諦めるなとかほざいていたが、意味が分からん。今の俺は耳をすませるだけが精一杯の赤ん坊だ。頑張りようがないではないか。
「……薫、逃げろ。俺が時間を稼ぐ」
「……だめ、動けない。それに、晃一が死んだらこの子の養育費どうするのよ」
「おいおい。 いまは冗談言ってる場合じゃ」
「わたしにまかせて。 ゴーレムを召喚してみるわ」
(え? ゴーレム??)
俺は耳を疑った。まさか、この世界には魔法が存在しているのか?
「ゴーレムって……高位魔法がこのプレッシャーの中で成功する訳がないだろ。それに、もし魔力が枯渇したらどうする。それこそ最悪の状況だ」
「どっちにしろ、この子を抱いて逃げ切れるわけない」
「……わかった。やってみろ薫。だけど、失敗したらその時こそ俺を置いて逃げろよ」
「大丈夫。 何度かは成功したことがあるんだから。……じゃあいくわよ」
カオルは俺を片手で持ち直し、ゴーレムを生み出す奇跡の言葉を紡ぐ。
『――私は魔法を行使する。数多の土くれたちよ、お願い、私たちを守って――クリエイト・ゴーレム』
振動。 獣がおびえて遠ざかる気配。
振動は俺たちを覆うように続き、辺りが大きな壁に覆われたように暗くなった。
もし拓海の目が見えていれば、3メートルを越す土くれの巨人が三人を守るため覆い被さったのが分かっただろう。
狼達は一瞬怯んだものの、ゴーレムが動かずにじっとしているのが分かると、再び巧魔達への包囲網を狭め始めた。
俺は魔法に感動すると同時に、失望を感じた。 先程呼び出されたゴーレムとやらは、俺達を覆うだけで全く動こうとしない。具体的な命令が無いためなのではないだろうか。せっかくのゴーレムもこれでは、宝の持ち腐れだ。具体的にどう守るかを伝えられないのか?
もしこれがプログラミングであれば、動作すらしないだろう。曖昧な命令など、プログラムの世界ではあり得ないからだ。
――もし、魔法がプログラムのように作れるのであれば。
――それをプログラミングするのが俺であれば
(もっとうまくやれる)
そう考えた瞬間、俺の右手が熱を帯びる。不思議にも、何かが俺の命令を待っているかのような感覚を覚えた。
(このイメージは……ゴーレム? 俺にも魔法が使えるのか?)
なぜだかは分からないが、俺にも魔法が使える。その確信が胸の中にあった。
俺はその不思議な感覚に突き動かされるようにして右手を掲げ――
(――私は、魔法を行使する)
世界の一部に改変を与えた。
あまりの苦しさに叫び声をあげるが、肺が小さいためか、数秒しか声をあげられない。
仕方なく何度も息を吸っては気のすむまで声をあげるが、計らずも「おぎゃー! おぎゃー!」と声をあげてしまったのは自然の摂理と言うものだろうか。
落ち着いたところで、今おかれている状況を確認する。
体は柔らかく暖かな何かに包まれていて、とてもいい心地がした。あたりを見渡そうとしたが、首が思うように動かない。
(ああ、そういえば宇宙人が生まれ変わるとか言っていたな。ということは、今は赤ん坊だから首が据わって無いんだろう)
俺はそう納得し、目線だけで辺りをうかがう。視界がぼやけていてうまく見えないが、辺りは暗いので夜なのかもしれない。
耳はよく聞こえるようなので、聴覚に意識を集中させと、何かがぶつかり合うような喧騒が聞こえてくる。
(喧嘩か……いや、これは何かに襲われている?)
さらに耳に意識を集中させると、若い男の声が聞こえてきた。
「生まれたか!? 菫?!」
「はあ、はあ……ええ、生まれた」
視界は朧気だが、誰かが俺を覗きこんでいるのがわかった。
俺の胸の中から言い知れない安心感が込み上げる。直感的に解った。きっと彼女が俺の母親だ。
「ごめんね。私がこんなところで生まなければ、あなたは、幸せな人生を歩めたかも知れないのに」
俺の頬を水滴が何度も落ちてくる。
どうやら泣いているらしい。
「おいおい、泣くな菫! 大丈夫だ、狼が何匹来ようが、すべて切り伏せてやる」
(狼が近くに?)
俺は聴覚に意識を集中させると、低い唸り声があちこちから聞こえてきた。ざっと数えただけでも10匹は居るだろう。完全に詰んでる。管理者は3日ももたないと言っていたが、30分の間違いなんじゃないか?。
「晃一! 危ない!」
男の悲鳴が響く。
「くっ……そ。 下手打っちまった」
コウイチとは、恐らく俺の父親だろう。声に力がない。恐らくどこかを噛みつかれたのだろう。傷が深くなければいいが、やはり視力が弱く何も見えない。見えないということが、こんなに恐怖心を煽られるとは思ってもみなかった。
「グルルル……」
狼の唸り声が前後左右から聞こえる。手傷を負わせてチャンスと見たのだろう。狼の声がだんだんと近づいてくる。
まさに絶体絶命。管理人のやつは諦めるなとかほざいていたが、意味が分からん。今の俺は耳をすませるだけが精一杯の赤ん坊だ。頑張りようがないではないか。
「……薫、逃げろ。俺が時間を稼ぐ」
「……だめ、動けない。それに、晃一が死んだらこの子の養育費どうするのよ」
「おいおい。 いまは冗談言ってる場合じゃ」
「わたしにまかせて。 ゴーレムを召喚してみるわ」
(え? ゴーレム??)
俺は耳を疑った。まさか、この世界には魔法が存在しているのか?
「ゴーレムって……高位魔法がこのプレッシャーの中で成功する訳がないだろ。それに、もし魔力が枯渇したらどうする。それこそ最悪の状況だ」
「どっちにしろ、この子を抱いて逃げ切れるわけない」
「……わかった。やってみろ薫。だけど、失敗したらその時こそ俺を置いて逃げろよ」
「大丈夫。 何度かは成功したことがあるんだから。……じゃあいくわよ」
カオルは俺を片手で持ち直し、ゴーレムを生み出す奇跡の言葉を紡ぐ。
『――私は魔法を行使する。数多の土くれたちよ、お願い、私たちを守って――クリエイト・ゴーレム』
振動。 獣がおびえて遠ざかる気配。
振動は俺たちを覆うように続き、辺りが大きな壁に覆われたように暗くなった。
もし拓海の目が見えていれば、3メートルを越す土くれの巨人が三人を守るため覆い被さったのが分かっただろう。
狼達は一瞬怯んだものの、ゴーレムが動かずにじっとしているのが分かると、再び巧魔達への包囲網を狭め始めた。
俺は魔法に感動すると同時に、失望を感じた。 先程呼び出されたゴーレムとやらは、俺達を覆うだけで全く動こうとしない。具体的な命令が無いためなのではないだろうか。せっかくのゴーレムもこれでは、宝の持ち腐れだ。具体的にどう守るかを伝えられないのか?
もしこれがプログラミングであれば、動作すらしないだろう。曖昧な命令など、プログラムの世界ではあり得ないからだ。
――もし、魔法がプログラムのように作れるのであれば。
――それをプログラミングするのが俺であれば
(もっとうまくやれる)
そう考えた瞬間、俺の右手が熱を帯びる。不思議にも、何かが俺の命令を待っているかのような感覚を覚えた。
(このイメージは……ゴーレム? 俺にも魔法が使えるのか?)
なぜだかは分からないが、俺にも魔法が使える。その確信が胸の中にあった。
俺はその不思議な感覚に突き動かされるようにして右手を掲げ――
(――私は、魔法を行使する)
世界の一部に改変を与えた。
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