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第6章 呉との闘い
76 王様?
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「やあ、巧魔っち」
「いや、やあじゃなくて。何してるんですか正義さん?」
俺は思わずあきれた声を出した。
立派な城をエマニエルさんの顔パスで通過し、通された部屋。
両サイドにはりっぱな甲冑が整列、奥には龍と戦う勇者が描かれた大きな油絵。その絵の下に位置する玉座には、なぜか正義さんが立派な衣装に扮装して座っていた。
「急いで降りた方がいいですよ。 僕は今日王様に呼ばれて来たんです。王様が来たら怒られちゃいますよきっと」
「呼んだのは俺っちだよ」
「え?」
「だから、俺っちが王様」
「……え?」
正義さんは何を言っているんだろう。
「いやいやいやいや、悪い冗談ですよこれは」
エマニエルさんを見る。にっこりと頷くエマニエルさん。
「ほ、本当に正義さんが王様?」
「いいねえ、その反応を待ってたよ」
「ええええええええええええ!」
じゃ、じゃあ俺はあろうことが国王に向けて魔法をぶっぱなしあまつさえ大量のゴーレム集団でタコ殴りにしようとしたことになるまいか?! いやなってるよ! だってやったもん!
「数々のご無礼誠に! 平に平に!」
「ダイジョブですよ巧魔くん。全部この馬鹿王がやりたくてやっただけですから」
「王様を馬鹿呼ばわり?!」
「きついぜエマっちー。まあ事実だから否定できないけど」
「事実なんだ! ……鈴音は知ってたの?」
「うむ。いや、ワシも隠したくて隠したわけではないぞ。正義のやつがどうしてもふせておいてくれというから仕方なく……」
「ごめんなさいね、巧魔くん。王様の素性はあまり公表していないんですよ。こいついつもふらふらと城の外に放浪するものだから、あまり顔を知られると危ないでしょ? だからぎりぎりまで内密にしていたんですよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「まあ成り行きで王様なんてやってるけどさ。代理みたいなもんだから」
「代理……ですか?」
「うん。初代東王の崩御は急だったために、一時期王座が空白になっちゃってね。混乱を沈めるため代理でもいいから誰かを立てようというで、俺っちに白羽の矢が立ったわけ。で、その後正式な後継者が現れることもなくずーっと代理を続けているのよ」
「……あれ? 正義さん――じゃなくて王様」
「いや、正義でいいよ」
「……そうですか。では正義さん、初代東王が崩御されたのって、200年以上昔の話じゃないですか?」
「うん、その通り。それがどうかした?」
「いやだって。そしたら正義さんも200年以上生きてるって計算になりますけど」
「ん? もしかして鈴音っちから聞いてないの?」
「鈴音に?」
鈴音の顔を見る。
「あ、ああ。言ってなかったな。
……本契約を交わした干支の契約者は殺されぬ限り年をとらぬ。で、正義は契約者じゃ」
「年を……って! じゃあ正義さんは本当に200歳!?」
「えまっち、俺っち今何歳?」
「224歳でです。……いい加減自分の年くらい覚えて下さいね」
ま、まじで。不老不死ってこと?
「じゃ、じゃあ。鈴音、俺も?」
すると鈴音はきゅうにもじもじし始める。
「……トイレか?」
「違うわ阿呆! その……だな。あるじはまだ本契約をしておらぬゆえ……」
「? どうしたの鈴音? なんか顔が赤いけど?」
「あ、赤くなどないッ!」
「なんだ、また巧魔っちは本契約してないのかー。じゃあ、今ここでしちゃいなよ」
「出来るか大バカ者!」
「ねえ、本契約ってなに?」
「っ!!!!!!!」
鈴音の顔がいよいよ赤くなる。 なんなんだ一体?
「巧魔くん、本契約というのは……」
「エマニエル! 言うんじゃないぞ!」
「ご心配なさらず。あの事は伏せますから」
「あの事?」
「「こちらの話です」「こっちの話じゃ!」」
な、なんだんだ一体。
「何か僕に明かせない話なんですか?」
「いえ、そういうわけではなく……本契約というのは、先ほどからお話がある通り≪不老不死≫を得るための儀式です。不老不死を得るための儀式自体は簡単なもので、そう難しくはありません。難しいのは、その儀式を受けることができる≪資格≫を得ることです」
「資格?」
「ええ。資格とは、『国を統べるに足る能力があるかどうか』。それを契約する十二支に認められて、初めて本契約を結ぶことが出来ます」
「なるほど……」
すると、俺は鈴音に認められて初めてその資格を得ることが出来るというわけだ。
「あるじ」
「ん?」
「その……もし仮にワシがあるじのことを認めたとして、あるじは不老不死になる覚悟があるか?」
不老不死になる覚悟。……考えたこともない。当然だ、そんなことが出来るなんて知らなければ考える筈も無い。
「わからないけど……ならないかも」
「なぜじゃ? 不老不死になれるんじゃぞ?」
「うーん、そんなに長く生きてもなあ。だって俺以外みんな死んじゃうでしょ。それはつまらないと思うから」
俺の言葉に、鈴音は一瞬驚くような表情を浮かべ、そして寂しそうに言った。
「……そうか。まあ、そりゃそうじゃな……」
「どうしたの鈴音? 何か俺変なこと言ったか?」
「いや、いいんじゃ。いきなり不老不死と言われればそう思うのが当然じゃ」
「うん、まあそうなんだけど……」
「もうよい! この話は仕舞いじゃ! 正義、用があってワシらを呼んだんじゃろ? さっさと話さんか」
あれ? なんか鈴音が怒ってる気がする。 わ、わからん。どこで俺は地雷を踏んだんだろう。
「いや、やあじゃなくて。何してるんですか正義さん?」
俺は思わずあきれた声を出した。
立派な城をエマニエルさんの顔パスで通過し、通された部屋。
両サイドにはりっぱな甲冑が整列、奥には龍と戦う勇者が描かれた大きな油絵。その絵の下に位置する玉座には、なぜか正義さんが立派な衣装に扮装して座っていた。
「急いで降りた方がいいですよ。 僕は今日王様に呼ばれて来たんです。王様が来たら怒られちゃいますよきっと」
「呼んだのは俺っちだよ」
「え?」
「だから、俺っちが王様」
「……え?」
正義さんは何を言っているんだろう。
「いやいやいやいや、悪い冗談ですよこれは」
エマニエルさんを見る。にっこりと頷くエマニエルさん。
「ほ、本当に正義さんが王様?」
「いいねえ、その反応を待ってたよ」
「ええええええええええええ!」
じゃ、じゃあ俺はあろうことが国王に向けて魔法をぶっぱなしあまつさえ大量のゴーレム集団でタコ殴りにしようとしたことになるまいか?! いやなってるよ! だってやったもん!
「数々のご無礼誠に! 平に平に!」
「ダイジョブですよ巧魔くん。全部この馬鹿王がやりたくてやっただけですから」
「王様を馬鹿呼ばわり?!」
「きついぜエマっちー。まあ事実だから否定できないけど」
「事実なんだ! ……鈴音は知ってたの?」
「うむ。いや、ワシも隠したくて隠したわけではないぞ。正義のやつがどうしてもふせておいてくれというから仕方なく……」
「ごめんなさいね、巧魔くん。王様の素性はあまり公表していないんですよ。こいついつもふらふらと城の外に放浪するものだから、あまり顔を知られると危ないでしょ? だからぎりぎりまで内密にしていたんですよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「まあ成り行きで王様なんてやってるけどさ。代理みたいなもんだから」
「代理……ですか?」
「うん。初代東王の崩御は急だったために、一時期王座が空白になっちゃってね。混乱を沈めるため代理でもいいから誰かを立てようというで、俺っちに白羽の矢が立ったわけ。で、その後正式な後継者が現れることもなくずーっと代理を続けているのよ」
「……あれ? 正義さん――じゃなくて王様」
「いや、正義でいいよ」
「……そうですか。では正義さん、初代東王が崩御されたのって、200年以上昔の話じゃないですか?」
「うん、その通り。それがどうかした?」
「いやだって。そしたら正義さんも200年以上生きてるって計算になりますけど」
「ん? もしかして鈴音っちから聞いてないの?」
「鈴音に?」
鈴音の顔を見る。
「あ、ああ。言ってなかったな。
……本契約を交わした干支の契約者は殺されぬ限り年をとらぬ。で、正義は契約者じゃ」
「年を……って! じゃあ正義さんは本当に200歳!?」
「えまっち、俺っち今何歳?」
「224歳でです。……いい加減自分の年くらい覚えて下さいね」
ま、まじで。不老不死ってこと?
「じゃ、じゃあ。鈴音、俺も?」
すると鈴音はきゅうにもじもじし始める。
「……トイレか?」
「違うわ阿呆! その……だな。あるじはまだ本契約をしておらぬゆえ……」
「? どうしたの鈴音? なんか顔が赤いけど?」
「あ、赤くなどないッ!」
「なんだ、また巧魔っちは本契約してないのかー。じゃあ、今ここでしちゃいなよ」
「出来るか大バカ者!」
「ねえ、本契約ってなに?」
「っ!!!!!!!」
鈴音の顔がいよいよ赤くなる。 なんなんだ一体?
「巧魔くん、本契約というのは……」
「エマニエル! 言うんじゃないぞ!」
「ご心配なさらず。あの事は伏せますから」
「あの事?」
「「こちらの話です」「こっちの話じゃ!」」
な、なんだんだ一体。
「何か僕に明かせない話なんですか?」
「いえ、そういうわけではなく……本契約というのは、先ほどからお話がある通り≪不老不死≫を得るための儀式です。不老不死を得るための儀式自体は簡単なもので、そう難しくはありません。難しいのは、その儀式を受けることができる≪資格≫を得ることです」
「資格?」
「ええ。資格とは、『国を統べるに足る能力があるかどうか』。それを契約する十二支に認められて、初めて本契約を結ぶことが出来ます」
「なるほど……」
すると、俺は鈴音に認められて初めてその資格を得ることが出来るというわけだ。
「あるじ」
「ん?」
「その……もし仮にワシがあるじのことを認めたとして、あるじは不老不死になる覚悟があるか?」
不老不死になる覚悟。……考えたこともない。当然だ、そんなことが出来るなんて知らなければ考える筈も無い。
「わからないけど……ならないかも」
「なぜじゃ? 不老不死になれるんじゃぞ?」
「うーん、そんなに長く生きてもなあ。だって俺以外みんな死んじゃうでしょ。それはつまらないと思うから」
俺の言葉に、鈴音は一瞬驚くような表情を浮かべ、そして寂しそうに言った。
「……そうか。まあ、そりゃそうじゃな……」
「どうしたの鈴音? 何か俺変なこと言ったか?」
「いや、いいんじゃ。いきなり不老不死と言われればそう思うのが当然じゃ」
「うん、まあそうなんだけど……」
「もうよい! この話は仕舞いじゃ! 正義、用があってワシらを呼んだんじゃろ? さっさと話さんか」
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