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第6章 呉との闘い
77 龍選隊再び
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「あー、そうだそうだ。忘れてたよ」
「忘れますか普通……」
エマニエルさんが心底あきれたように言った。
「ごほん……。巧魔っちはエマっちから何で呼ばれたか聞いてる?」
「詳しくはまだ伺ってませんが、戦争が始まると聞いてます」
「そうそう、呉の動きがきな臭くなってきていてね。早ければ半年以内に東に侵略してくるだろうと見ている」
「半年ですか。随分急ですね」
「ああ。そしてここ200年、この国では戦争は起きない平和な時代が続いた。だがら、みな平和ボケしている。対して呉は、年がら年中戦争をしていた国だ。そんな国同士が戦ったらどうなるか分かるかい?」
「勝負にならないでしょうね」
日本だってそうだった。皆平和ボケしていて戦争なんておとぎ話の世界の話だ。あの時隣国に襲われていたら、ひとたまりもなかっただろう。
「その通り。勝負にならない。……いや、勝負にならなかった」
「どういうことです?」
「君さ。君が生まれた。君が元居た世界ではどうだったかは分からないが、この世界のパワーバランスは契約者が何人いるかで大きく変わってくる。これまでこの国にいた契約者は2人。龍と兎の契約者」
「兎は、豚助さんですね。とすると、龍が正義さんか」
「ああ。で、巧魔っちが生まれた。これでこの国には3人の契約者がいることになる。対して呉は2体の契約者しかいない。それでやつらは焦っているんだ。第十三支の契約者が成長されてしまうともう勝機は無いってね」
「そうか。それで戮が来たのか……」
「うん。だがそれも失敗した。戮の気まぐれのおかげでね。そこで呉は国を動かす事にした。いや、もともとその計画だったのかもしれないが」
「そうですね。あの日、戮は6年後にまた会うことになると言っていました。戦争の事を知っていたんだと思います」
「そして、それは早ければ3か月後に迫ってくる。――そこで巧魔っち。君にやってもらうのは半年後までのレベルアップと、燕との同盟を結ぶ大使になってもらうことだ」
「燕との同盟?」
「今東大陸には呉、東、燕の3国がある。呉と戦争しているときに後ろから燕に刺されれば、俺たちはバットエンドさ。そこで、巧魔っちには燕へ赴き同盟を結んできてもらいたい。あ、これ国王命令だから。逆らったら死刑ね」
「し、死刑。まあ行けと行きますが……なんで僕なんです?」
「第十三支の契約者というだけで、燕に与える影響力は大きい。君は歩く国家戦力だからね。それが直接大使として来たとなれば、燕も無下に断るわけにはいかないだろう。それに、道中は凶悪なモンスターも多く生息している。君のレベルアップにもぴったりさ」
「なるほど。分かりました。それで、出発はいつですか?」
「一か月後だ。それまで龍都で待機していてくれ。もしかしたら呉が何か仕掛けてくるかもしれないからね。あ、そいえば龍姫が巧魔っちに会いたいって言ってたな」
「龍姫? 誰です?」
「第五支の龍だよ。俺っちが契約しているね。街の道場にいると思うからさ。後で顔を出してみてくれ。この町にいる間、道場で鍛えてもらうってのもいいかもしれないねー」
道場……。そういえば父さんからも道場に顔を出すように言われてたな。俺の爺さんに当たる人が経営しているとか。後で行ってみるか。
◇◇◇◇◇◇
俺たちはエマニエルさん、正義さんと別れ、城を後にした。
「巧魔氏! 鈴音氏! こっちですー!」
城を出ると千春さんが待っていてくれた。
千春さんが予約してくれた宿に入るとカウンターでチェックインの手続きをした。
「あれ? 二人部屋?」
「あたいは師匠の家に部屋がありますです。なので、巧魔氏と鈴音氏の部屋です」
「ああ、そうなんですね」
鈴音と二人部屋か……。
「鈴音、二人部屋だけど大丈夫?」
「ふん。勝手にせい」
「……なんか機嫌悪いの?」
「別に」
鈴音はそう言うと宿の出口へ向かって歩き出した。
「おい、どこ行くんだよ?」
「夜には戻る」
そう言うと鈴音は宿を出て行ってしまった。
「……鈴音氏は二人部屋は嫌でしたか?」
「いや、そういうわけじゃないと思うんですけど。……なんか王室で話をしてた時から機嫌が悪いみたいで」
「鈴音氏が不機嫌な顔を見せるなんて珍しいです。巧魔氏、よっぽど悪いことをしましたです」
「ええ? そうかな?」
「間違いないです。……巧魔氏、よっぽどハレンチな事を言ったに違いないです」
「いやおっさんか俺は」
うーん。どうしよう。でも鈴音が怒ってる理由がさっぱり分からない。
誰か鈴音の事に詳しい人に相談しようかな。……鈴音さんに詳しい人と言えばエマニエルさんかな。
今度会ったときに相談してみよう。
俺は千春さんと別れ、宿で一息ついた後再び町に出た。
城で話のあった道場に顔を出すためだ。
誰かに道を尋ねようとした所、一番会いたくない人達にばったりと出くわした。
「あ、あんたは!」
龍選隊の皆さまご一行とばっちり目が合う。
「ははは、……どうも」
――詰んだなコレ!
「忘れますか普通……」
エマニエルさんが心底あきれたように言った。
「ごほん……。巧魔っちはエマっちから何で呼ばれたか聞いてる?」
「詳しくはまだ伺ってませんが、戦争が始まると聞いてます」
「そうそう、呉の動きがきな臭くなってきていてね。早ければ半年以内に東に侵略してくるだろうと見ている」
「半年ですか。随分急ですね」
「ああ。そしてここ200年、この国では戦争は起きない平和な時代が続いた。だがら、みな平和ボケしている。対して呉は、年がら年中戦争をしていた国だ。そんな国同士が戦ったらどうなるか分かるかい?」
「勝負にならないでしょうね」
日本だってそうだった。皆平和ボケしていて戦争なんておとぎ話の世界の話だ。あの時隣国に襲われていたら、ひとたまりもなかっただろう。
「その通り。勝負にならない。……いや、勝負にならなかった」
「どういうことです?」
「君さ。君が生まれた。君が元居た世界ではどうだったかは分からないが、この世界のパワーバランスは契約者が何人いるかで大きく変わってくる。これまでこの国にいた契約者は2人。龍と兎の契約者」
「兎は、豚助さんですね。とすると、龍が正義さんか」
「ああ。で、巧魔っちが生まれた。これでこの国には3人の契約者がいることになる。対して呉は2体の契約者しかいない。それでやつらは焦っているんだ。第十三支の契約者が成長されてしまうともう勝機は無いってね」
「そうか。それで戮が来たのか……」
「うん。だがそれも失敗した。戮の気まぐれのおかげでね。そこで呉は国を動かす事にした。いや、もともとその計画だったのかもしれないが」
「そうですね。あの日、戮は6年後にまた会うことになると言っていました。戦争の事を知っていたんだと思います」
「そして、それは早ければ3か月後に迫ってくる。――そこで巧魔っち。君にやってもらうのは半年後までのレベルアップと、燕との同盟を結ぶ大使になってもらうことだ」
「燕との同盟?」
「今東大陸には呉、東、燕の3国がある。呉と戦争しているときに後ろから燕に刺されれば、俺たちはバットエンドさ。そこで、巧魔っちには燕へ赴き同盟を結んできてもらいたい。あ、これ国王命令だから。逆らったら死刑ね」
「し、死刑。まあ行けと行きますが……なんで僕なんです?」
「第十三支の契約者というだけで、燕に与える影響力は大きい。君は歩く国家戦力だからね。それが直接大使として来たとなれば、燕も無下に断るわけにはいかないだろう。それに、道中は凶悪なモンスターも多く生息している。君のレベルアップにもぴったりさ」
「なるほど。分かりました。それで、出発はいつですか?」
「一か月後だ。それまで龍都で待機していてくれ。もしかしたら呉が何か仕掛けてくるかもしれないからね。あ、そいえば龍姫が巧魔っちに会いたいって言ってたな」
「龍姫? 誰です?」
「第五支の龍だよ。俺っちが契約しているね。街の道場にいると思うからさ。後で顔を出してみてくれ。この町にいる間、道場で鍛えてもらうってのもいいかもしれないねー」
道場……。そういえば父さんからも道場に顔を出すように言われてたな。俺の爺さんに当たる人が経営しているとか。後で行ってみるか。
◇◇◇◇◇◇
俺たちはエマニエルさん、正義さんと別れ、城を後にした。
「巧魔氏! 鈴音氏! こっちですー!」
城を出ると千春さんが待っていてくれた。
千春さんが予約してくれた宿に入るとカウンターでチェックインの手続きをした。
「あれ? 二人部屋?」
「あたいは師匠の家に部屋がありますです。なので、巧魔氏と鈴音氏の部屋です」
「ああ、そうなんですね」
鈴音と二人部屋か……。
「鈴音、二人部屋だけど大丈夫?」
「ふん。勝手にせい」
「……なんか機嫌悪いの?」
「別に」
鈴音はそう言うと宿の出口へ向かって歩き出した。
「おい、どこ行くんだよ?」
「夜には戻る」
そう言うと鈴音は宿を出て行ってしまった。
「……鈴音氏は二人部屋は嫌でしたか?」
「いや、そういうわけじゃないと思うんですけど。……なんか王室で話をしてた時から機嫌が悪いみたいで」
「鈴音氏が不機嫌な顔を見せるなんて珍しいです。巧魔氏、よっぽど悪いことをしましたです」
「ええ? そうかな?」
「間違いないです。……巧魔氏、よっぽどハレンチな事を言ったに違いないです」
「いやおっさんか俺は」
うーん。どうしよう。でも鈴音が怒ってる理由がさっぱり分からない。
誰か鈴音の事に詳しい人に相談しようかな。……鈴音さんに詳しい人と言えばエマニエルさんかな。
今度会ったときに相談してみよう。
俺は千春さんと別れ、宿で一息ついた後再び町に出た。
城で話のあった道場に顔を出すためだ。
誰かに道を尋ねようとした所、一番会いたくない人達にばったりと出くわした。
「あ、あんたは!」
龍選隊の皆さまご一行とばっちり目が合う。
「ははは、……どうも」
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