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第6章 呉との闘い
78 投獄?
しおりを挟む「龍選隊の皆さま、さっきは突き飛ばしてしまいましてなんとお詫びを言えばよいか「先ほどは大変失礼致しました!」
「……へ?」
なんか俺が謝られてる?
「まさか森谷村の巧魔様とは知らず大変ご無礼を。しかも話を聞けば悪さをしたのは2人の若者の方だったと。誠に申し訳ございませんでした! 処分は何なりと!」
「い、いえいえ処分なんて滅相もない。僕も突き飛ばしてしまい大変失礼を致しました。大丈夫でしたか?」
「こ、これはなんとお優しい! はい、我々は日ごろ鍛錬を積んでいるせいか体だけは丈夫に出来てますので心配ご無用です!」
な、なんだこの体育会系のノリは。
「ちなみに僕の事は誰から聞きました?」
「それが、国王陛下より直々にお達しがあり! 巧魔様は国賓ゆえ滞在中の安全を確保せよと!」
ああ、なるほど。どうりでこの人たちが恐縮しているわけだ。
「また恐れ多くもっ! エマニエル様より直々に、巧魔くんを頼むとっ! それゆえ我々は命に変えても巧魔様の身辺警護を務めさせて頂く覚悟でありますっ!」
なんか正義さんよりエマニエルさんの方が影響力高くね?
「つきましては、巧魔様滞在中は24時間体制で周囲を固めます! つきましては滞在先をご教示頂きたく」
「24時間体制?! それはちょっと……」
俺は龍選隊の申し出を丁重に断り、(巧魔様に何かあったら我々がエマニエル様に殺されるという慟哭が聞こえた気がしたがきっと気のせいだろう)道場の場所を教えてもらった。
「それでしたら、中央の王通りをまっすぐ行きますと、大きな看板がありますですぐわかるかと思います」
言われた通りの場所に行くと、立派な道場が見えてきた。
西洋風の建物が目立つ中で、唯一の和風の建物だった。
屋根は一面瓦が敷かれており、両端には龍を形どった焼き物が飾られている。
「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」
俺が玄関から声をかけると、奥の方から返事が聞こえた。
「はーい、いままいりますう。……あれ? 君はさっきの」
「あ、あなたは先ほどの」
さっきごろつきに襲われていた女性が出迎えてくれた。
「道場の方だったんですね」
「そうですう。先ほどは大変でしたねえ。わざわざ助けてもらわなくても大丈夫でしたのに」
「いえいえ。たまたま通りかかっただけですので」
「それで、道場へは何のご用で?」
「実は正義さん――じゃなくて、国王陛下からお話をたまわりまして。こちらに私に会いたいという方がいらっしゃると聞いて」
「ああ、それじゃああなたが巧魔くん」
その時、奥からどたどたと足跡が聞こえてきた。
「おう、誰だそいつ!」
つるりとしたスキンヘッドに鎧のような筋肉。
上半身裸で右手には木刀を握っている。
もし日本だったら絶対に目を合わせたくない人間の一人だ。……いや、こっちでもそれは同じか。
「ああ、師範ちょうどよかった。彼ですよう、巧魔君です」
「おお! お前が巧魔か! うんうん。娘によう似てる! 晃一に似なくて良かった!」
「もしかして、剣鬼じいさん?」
「おう! 初めましてだな、孫!」
草薙剣鬼。母さんの父で、俺の祖父にあたる人物だ。
母さんからかなり豪胆な人間だと聞いていたが、まさにイメージ通り。
「ではさっそく着替えてきなさい!」
「え? 着替えるって?」
「さあ、巧魔君こっちですよう」
「こっちって……ちょっと、どこに連れて行くんですか」
「だってえ、その格好で打ち合いはできませんよう」
「う、うちあい?」
俺は女の子に引きずられるようにして道場の中へと連れて行かれた。
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