破壊は追憶の果てに

奏紫 零慈

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19 シュウゴウ

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セリアが戻ってきた
「飲み物買ってきたよ~」
「助かるぜ」
エムがグピグピと飲む。
「私も飲んじゃお」
一本だけだったので分け合うこととなった。
「ん、セト君も」
「ああ、悪いね」
ボトルに口が触れるとき、また痺れるようなボヤける感覚があった。

「そろそろ行けそう?」
「行くか、公園だったよな」
《いや、奴は今ショッピングエリアにいる》
「分かった、モノレールに乗った方がいいかな?」
「ここからなら歩いて10分弱でつけるよ!」


「これで2機目だねー」
追跡ドローンを撃ち落とす生徒。
《3機あれば十分だ》
「風の友だちの力だよー」
「危ない」
風波で2機が床に墜落する。
《もう来れそうか》
「エリアには着いたよ」
「よし、俺が奴の目線を釣るから3人で一斉に狙え」
「おーけー」

「すばしこいドローンだねー」
《今だ》
エムのガントレットが生徒まで飛び、がっしりと捉えセリアの投げアームがそれを補強し、セトの網連撃で繭のように生徒を包み込む。
「重いんさ」
そのまま下に落下する。
「うっ」
衝撃で呻く。
「これで僕らの勝ちだね。悪いけど言うことは聞いてもらうよ?」
「ううぅ…もう空は飛べないのかー」
「1ついい方法があるぜ?Arizに入ってウチらと一緒に戦うってのはどうだ??」
「うーん、空がまた飛べるならいいよー」
《それもいいかもな。飛行能力、射撃能力、そして大気を操る能力か。ん?もしかしてお前もヘプターナなのか?》
「そういえば異能力が2つあるってことになるね」
「風の方は最近になってやっと上手く使えるようになったんさ」
「もしかして、練習すれば属性能力ももっと使えるのか??」
《だろうな、そっちの訓練もおいおいやっていくことにする》
「キミらの言うヘプターナとは?」
「君は僕のアウラ核を7当分したうちの一人かもしれないんだ」
「つまり少年君もソフィキエータだったと」
「あれぇ?あの女の子、もしかしてセト君を怖がってた娘じゃない?」
「ぽいな!行ってみようぜセリア」

楽しそうに買い物をする少女に話しかけてみる。
「ごめんね!ちょっといいかな?この人のことが怖い理由が知りたくて」
子供が描いたような似顔絵をセリアは見せる。
「はふぇ?誰ぇ?」
「ほら、アイツのことだぜ!」
セトの方を指し示す。
「あ……………………………」
バッグを落とした。少女は硬直した。しばらく動かなかった。
「お、おい大丈夫か?」
「うう、やっぱりセト君怖いんだぁ」
「『…ソト…の………セカイハ…タノシイ…だらけデスヨ』」
「「へ??」」
辿々しく古くなった録音機のように
「『姫サマの…ノゾム所へどこまでモ………セカイをヘイワ………』」
「ひ、姫様?もしかして私のこと??ね、ねぇエムちゃん、この子どうしちゃったのぉ?」
「アタシにもちんぷんかんぷんだ」
「『フフ……マイゴに…ならないように…ソバにいて…ネ』」
「う、うん!側にいてあげるね」
セトがやってきた。
「何かわかったことはあるかい?」
「はっ…」
サイドテールの少女は目を見開く。
「ひっ、恐怖ぅですぅぅぅ!!」
一瞬で5メートル程後ろに後退りした。
「あの少女ちゃんもソフィキエータだったりしてね」
《俺もそう思った。偶然か必然かは知らんが、セトの周りには異能力者が現れる》
空飛ぶ生徒にアゲハはメカ越しに相槌を打つ。
「待って!」
「ふぇ!?」
セトが声を発しただけで少女は震えた。
「なあ、アタシに教えてくれよ、なんでセトが怖いんだ?」
「む、無理ですぅ…思い出しただけで失禁しちゃいますぅ~!」
「そんなに!?」
少しショックを覚えるセト。
「ひょえぇ!」
また、セトが声を発しただけで5メートル離れた。
「ああ、もうダメだ…」
セトはガックリと肩を落とす。
「少女ちゃん少女ちゃん、荷物忘れてるよどれどれ」
飛行生徒が拾い上げて覗こうとすると
「わわっ見ないでくだしゃい!恥ずかしいでしゅうぅう!!」
と言って目にも留まらぬ速さでバッグを掴み姿をくらませる」
「教えてあげたんだけどなー」
《間違いないな。あの小娘の異能力は“超高速移動”だ》
「それならあの子も保護してあげないとだね!」
「ああ…もう駄目だ」
セトの色彩が薄くなっていた。
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