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23話 ギルド

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「すいませんでした!!」

 ユージン率いる『スターロード』の面々が去っていった後、ライカは深々と俺に対して頭を下げてくる。

「その謝罪は、ライカとユージン達の揉め事に俺を巻き込んだ件? それとも、ユージン達を無駄に煽って揉めかけたこと? あっ! それか、いつの間にか俺とライカがパーティーを組むことになってた件の事かな?」
「うっ……そ、その……全部……です。すいませんでした」

 ……ちょっといじわるし過ぎたかな?
 確かに、ユージンに目をつけられたり、勝手にライカのパーティーメンバーにさせられた件については小言くらいは言いたい気持ちはある。

 だけど、ライカは俺の弟子なんだから、弟子が困っていたら助けたくなるのが師匠心ってものだ。
 だから、巻き込まれた事については何も思っていないってのが正直な気持ちだ。

「ふぅ……もう怒ってないから謝らなくていいよ」
「……本当ですか?」

 そんな、今にでも親に怒られる寸前の子どものような表情しなくても……。
 正直、この年齢としになると怒りの沸点も低くなるし、ユージン達にしつこくされて、ライカ自身、苛立っていたのも理解できるしな。

「うん、だから気にしないで」
「ありがとう……ございます」

 どうやら、ライカも本気で反省しているようだ。
 まだ若いし仕方ないけど、感情のコントロールも剣士としては重要な能力だし、これから鍛えていけるといいな。

「私が暴走してシナイさんを困らせたのは分かりますし、怒られても仕方ないと思ったんですが……シナイさんは優しすぎると思います」
「そんなことないって。素直に感情を表に出す年齢としじゃないってだけで、俺も怒る時は怒るよ」

「シナイさんが怒る時ってどんな時なんですか?」

 俺が怒る時か……。
 修行が上手くいかなくて、自分に対してイライラしたことはあるけど、多分ライカが聞きたいのはこういうことじゃないと思うし。

「うーん、目の前で非道な行為を見せつけられたり、身内を侮辱されたりしたら怒るんじゃないかな?」

 といっても、修行期間のこの二十年くらいキレた記憶はないけどね。

「分かりました。私もシナイさんを怒らせないよう気をつけますね!」

 気をつけてもらうのは結構だけど、ライカは素直でいい子だと思うし、そんなことは起こらないと思うけどな。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はー、中もでっかいなー」

 ユージン達との一悶着も一旦片付いたので、俺とライカは改めてギルド内に入場した。
 初めて中に入ったけど、その広さと綺麗さに圧倒され、つい周囲を見渡してしまう。

 流石は国中にある冒険者ギルドの総本山だな。

「私はこのままクエスト終了の報告に向かいます。シナイさんは受付に行けばいいんですよね?」
「そのはずだけど……」

「それなら、受付はあそこなので声をかけてみてください」

 ライカのおかげで受付の場所もすぐに分かった。
 一人だったら多分迷子になってたかもな。

「了解。行ってみるよ」
「それじゃあ、私も行きますね。用事が終わったら、この入り口周辺で集合でよろしいですか?」

「うん、それで頼む」

 他の場所を指定されても迷う自信がある。
 ここなら、来た道を戻るだけでいいから迷う心配はないし、ライカのこともすぐに見つけられそうだ。

 二人の用件が終われば、その後ロックス師匠に会いにいく約束もしてるし、ライカとはぐれたら大変だもんな。

「分かりました。それではまた後で!」

 そう言うと、ライカは駆け足で走り去ってしまう。
 多分、俺より先に用事を済ませて、俺のことを待たせないように気を遣ってるのかもしれないな。

 そこまで気を回さなくてもいいのに。

 でも、それなら俺もできる限り早く用事を終わらせて、ライカを待たせないようにしないとな。

「あのー、すいません」
「はい! なんでしょうか?」

 受付に話しかけると、小柄な女性が元気よく応対してくれる。
 綺麗な白髪をしていて、その髪は腰の高さまで緩やかにウェーブしている。
 年齢はライカと同じか少し上……ユージン達と同じくらいだろうか?

「ここのギルドに呼ばれて来たんですけど」
「はい、かしこまりました。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「シナイです」
「シナイ様ですね。少々お待ちください」

 名前を名乗ると、受付の女性が見慣れない道具を使って何かを調べ始める。
 ……これも魔道具の一種だろうか?

 受付が文字が書かれた見慣れない板を指先で連打すると、それに付随する黒い板に文字が入力されていく。
 これで検索でもしてるのかな?

 それにしてもこの人、相当優秀だ。
 仕事ができるのは勿論、これほどの人を受付にさせているなんて、冒険者ギルドの本部って凄いなー。

「はい、確認がとれました。ギルドマスターがお待ちですのでご案内しますね」

「ありがとうございます……って、ギルドマスター!?」
「はい。こちらの画面にはそう表示されてますが」

 ギルドマスターって、この冒険者ギルドのトップだよな!?
『バグ』と戦闘した話を直接聞きたいってことだから来たけど、まさかそんな大物と会うとは思ってなかった……。


「こちらでマスターがお待ちですのでついてきて下さいね」
「はっ、はい!」

 言われるがまま、俺は受付の後ろを着いて歩きだす。
 どうしよう、ちょっと緊張してきたぞ……。

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