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第二十九話 夕子(未来)のお漬け物

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 昼間夕子未来のなすのお漬け物を酒の肴に、星乃紫三日月の姉が舌鼓を打っている。
朝霧美夏三日月の妹もお箸を止めて夕子未来に尋ねた。

「ねえ、夕子未来、このなすのお漬け物よく味付けができているわ」
「三日月(妹)、ちょっと苦労したのよ」

夕子未来、なすの色もいいわ」
「そうでしょう。そうでしょう」
 
 夕子未来は上機嫌に右隣りの星乃みかづき姉のお猪口を寄せて四合瓶から二杯目の日本酒を注いだ。

「で、夕子未来このなす漬け、どうやって作るの」

「最初は知らなくて、ぬか漬けすればいいかなと思って、なすを一晩漬け込んだの。
ーー そうしたら、硬くて色も全然良くなくて不味まずかったわ」

夕子未来、それで」

夕子未来は、自分のお猪口に日本酒を手酌しながら、説明を続けた。
「それでね、ネットで調べたら、きゅうりとかと作り方が違うのよ。
ーー きゅうりはぬか漬けが基本でしょう。
ーー でもなすは、ビニール袋で漬け込むのが基本なのってわかったわ」

「それでどうするの」
日本酒派の星乃みかづき姉の目がキラキラ輝いている。

「それでね、足らない材料をスーパーで仕入れたわけ」
「足らない材料って、なんなの?」

「ミョウバンよ」
「ミョウバン?聞いたことあるけどイメージ湧かないわ」

星乃みかづき姉と一緒に朝霧みかづき妹うなずく。

 夕子未来は離席して、冷蔵庫の横の棚からミョウバンを持ってきて二人に見せた。

「へー、これがミョウバンなのね。白い粒なのね。
ーー それで、どうするの?」

星乃みかづき姉夕子未来からミョウバンの袋を手渡された。

「作り方は色々あって、ビニール袋だけで作る方法と、ビニール袋とぬか床を併用する方法ね」

夕子未来のは、どっち」
「私のは後者の方ね」

「じゃあ、併用ね。どうするの?」
「最初になすを洗い、適当な大きさにカットするのよ。
ーー そうしたら、ビニール袋の中になすを入れて粗塩も入れて揉むのよ。
ーー それが終えたら、ビニール袋の中にミョウバンを適量入れて、また揉むのね」

「それだけ?」
星乃みかづき姉、まだまだ途中よ。
ーー ビニール袋だけの場合は水とお砂糖を入れて重しを置くんだけど、
ーー 私のは、それはしないのよ」

「じゃあ・・・・・・」
 朝霧みかづき妹が言葉を切り夕子未来が続けた。

「ぬか床に漬け込むだけよ、一晩ね」
「ええ、そんなに簡単なの」

「料理なんて、そんなものでしょう」
「じゃあ、私もミョウバンを買って来て作ってみるわ」

星乃みかづき姉、買わなくて大丈夫よ。
ーー ミョウバンの予備あるから使っていいわよ」



未来である夕子が朝霧と星乃に前世名の提案をする。
「ところでみんな、二人の三日月の姉と妹、ややこしいから美夏だけ三日月にするわね。
ーー 紫は、竹取物語の主人公だから、やはり“かぐや姫”がいいわね」

三日月である美夏が遮る。
夕子未来、それだと目立ち過ぎるわよ。
ーーそれに万が一、人前で口が滑ったら大変よ」

「じゃあ、イニシャルからKケイにしよう」
夕子未来、私も賛成」

美夏みかづきは三日月のままで、私はケイなの」
紫は、手酌しながら、はにかむが嫌じゃあないようだ。

夕子未来、お酒ないわよ」
星乃ケイ、ちょっと待っていて」

 未来である夕子未来が駅前のスーパーで買った秋刀魚さんまの塩焼きとひや下ろしの日本酒を取り出した。
夕子未来が準備している間に朝霧みかづき夕子未来星乃ケイ-かぐや姫のお猪口に日本酒を注ぐ。

夕子未来、このお酒、味が芳醇ほうじゅんね」
「そうよ、これは新潟県の超有名酒造会社の人気ブランドね。
ーー さすが、三大杜氏の越後杜氏えちごとじの風格ね」

三大杜氏さんだいとじってなに?」
南部杜氏なんぶとじ越後杜氏えちごとじ丹波杜氏たんばとじがそれよ。詳しくないけど」

「さすが地酒って感じよね」
「この原酒は、精米割合も五十五パーセントで度数は十九度の吟醸酒ね。
ーー でも純米酒じゃないわね」
星乃ケイは瓶を見ながら夕子未来の説明の続きをしている。

「アルテンの十九歳ね。私くらいね」
夕子未来は酔うと饒舌じょうぜつになる。

「ところで夕子未来、明日は神社で何かするの」
「それがわからないのよ。朝霧みかづき

「精霊が教えてくれればいいわね」
星乃ケイ、そんなに上手く行かないわよ」
朝霧みかづきは、そう言いながら心で念じて見た。

[未来、明日、神社ね]

再び三人は精霊の声を聞く。

[明日、楽しみね]

夕子未来は、心の中で精霊に話かけたが何も起きなかった。

夕子未来、今の精霊の声、まるで予言みたいね」
「そうね、星乃ケイ、何か知っている口ぶりね」

星乃ケイ夕子未来朝霧みかづきのお猪口にひや下ろしを注いだ。

星乃ケイ、きゅうりと梅干し食べる?」
「お酒にピッタリよね」
夕子未来は、冷蔵庫から紀州産の梅干しを取り出して二人の小皿に入れた。

夕子未来、さっきから夕子未来ばかりにお仕事させて悪いわね」
「いいのよ、従者であった夕子未来のお仕事ですから」

結局、三人は四合瓶を三本飲み干した。
ジンとビールを飲んで宴会を終えた。

夕子未来、酔っ払っちゃったわ。すごくいい気分よ」
朝霧みかづき、泊まっていいわよ。星乃ケイはどうする」

「私も夕子未来のお世話になるわ・・・・・・。
ところで、夕子未来、明日の待ち合わせは?」

「午後の二時に書店の入り口よ」
「じゃあ、着替えに戻る時間あるわね。
ーーお化粧も直さないといけないし」

夕子未来が二日酔い防止のサプリメントを二人に渡しながら尋ねる。

「明日は何を着ようかしら。星乃ケイ、私はジーンズで行くわ」

朝霧みかづきはどうするの?」
「神社よね、じゃあ私も未来と同じジーンズにするわ」

「そうか、お二人ともジーンズか?じゃあ私も付き合うわね。
ーーブルージーンズを」

星乃ケイ、違うわよ。ホワイトジーンズよ」
未来は意地悪く微笑ほほえんだ。

「お二人とも、シャワーどうする?」
朝霧みかづき夕子未来の言葉を受けて星乃ケイすすめる。

「シャワーを浴びたら、またお酒が飲みたくなるわよ」

 夕子未来は腕時計を見た。
星乃ケイ、まだ時間早いから“即安ソクヤス”に注文が間に合うわよ」

「その手があったか」
 星乃ケイは、夕子未来にお金を手渡し、お酒のオーダーをお願いして二次会参加モードとなる。
朝霧みかづき星乃ケイに真似て夕子未来にお願いする。

 夕子未来はそのあと、スマホから即安にお酒のオーダーをした。

 星乃ケイがシャワールームに消えて、夕子未来朝霧みかづきがテーブルの上を片付けて二次会の準備が完了しタ。
まだまた宴会という名の会議は終わりそうにない長い夜になった。
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