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第二十八話 土曜日の通り雨【二】

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 昼間夕子は、雨を眺めている夢乃真夏を愛らしく思った。

 出口の見えない輪廻転生の巡り合わせの中で、夕子は思いを巡らせている。
朝霧美夏も、星乃紫も思いは同じだった。

「真夏ちゃん、雨で残念だったわね」

 隣の星乃紫が真夏に話かける。

「先生、私、雨、好きだから大丈夫です」

「そうね、お部屋の中から雨を眺めて和歌を書く時代もあったわね」
 紫は、前世の自分をかぶせていた。

「先生、なんか遠い昔に思いを馳せているようですね」

「あら、わかった?」

「なんとなく・・・・・・」



「人間なんてね。何度も何度も生まれ変わっているのよ。
ーー その証拠に、まだ外を見たこともない赤ちゃんが夢でうなされるの」

「先生、それ分かるような気がする」

「そうでしょう。昔の有名な哲学者も言及しているのよね
ーー 名前を思い出せないけどね」

「・・・・・・」

「ところで、先生たち、神社どうしますか」
 昼間夕子が、紫と美夏を見て話し掛ける。

「そうね、明日はお天気が良さそうよ」

「じゃあ、美夏のお天気予報に私は賛成よ」

 夕子が答えると、真夏が、身体からだを起こし、夕子を見る。

「昼間先生、私も賛成します」
「真夏が賛成なら僕も賛成します」

「ヒメ、お前、おかしな物言いするな」
「ヒメさん、昼間先生の言うとおり本当おかしいわ」

「日向先輩まで、なんか多勢に無勢の気配だ」
 
 夢乃神姫ゆめのしんきは頭を掻いている。

「ヒメ兄、そんなこと最初から分かっている事でしょう」
「そうだぞ、ヒメ、最初から分かっていることだ」
夕子を見て、紫と美夏も相槌あいづちを打つ。

「じゃあ、みんな、明日、神社に行こう!」
「昼間先生、私もですか?」

「日向が嫌じゃないなら、一緒にどうだ」
「日向先輩、一緒に行きませんか」

「私は、別に予定ないし・・・・・・」

「じゃあ、日向も加えて六名で参拝しよう。
ーー 待ち合わせ場所は、この書店の入り口。
ーー 時間は、午後二時でどうだ」

 全員が夕子を見て賛成の挙手をしている。

 昼間夕子、朝霧美夏、星乃紫の三人は生徒たちを神聖学園前駅まで送り別れた。
夢乃真夏が先生たちに手を振っている。


「さーて、先生たち、雨天順延になったけど、明日もよろしく」

夕子未来、今夜も作戦会議どう」
美夏みかづき妹、いいわね」

「えええ、二人ともなんのこと」
「作戦会議よね、夕子未来

「そうよ、美夏みかづき妹


 高校教師三人は東富士見町駅の自動改札を抜けると駅前のスーパーマーケットに直行した。

「なんだ、飲み会じゃないですか?」

星乃みかづき姉、だから作戦会議なのよ」
三日月の妹である朝霧美夏が星乃紫を諭す。

「よく分からないけど、作戦会議が大義名分ね」

呑兵衛のんべえは、何かにつけては酒を飲む理由を探していた。

星乃みかづき姉は、今夜も日本酒ね」
「そうよ、私はアミノ酸派よ」

「今夜は、美味しいお漬け物があるわよ」
夕子未来の自家製なの」

「そうよ、お酒にピッタリよ」

 三人は買い物を終えて、昼間夕子未来の部屋に上がった。
夕焼けの西日がカーテンの隙間から斜めに差し込んで影を作っていた。

「明日は、大丈夫そうね、夕子未来
三日月の妹の朝霧美夏だった。
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