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第四章: アニマンデス

第一話

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ピンポーン。
俺はカンナの家に来ていた。休暇中のカンナに、明日から捜索の旅に出ると教えないといけないからだ。

はいはーい、とパタパタ歩く音を立てながら、カンナが出てきた。主婦が宅配便に応えるみたいだな。

「ハジメ!?」
そんなに驚くかよ。こっちがビックリするわ。

「もう怪我は大丈夫なの?」
「ああ、おかげさまでな。看病してくれてたらしいな。ありがとな」
「ひ、暇だっただけなんだから。勘違いしないでよね!」

うわああ、ザ・ツンデレな台詞だな。まあカンナらしくて良いか。

「おっと。こんなことしてる場合じゃなかったんだ。カンナ、明日から捜索の旅に出るぞ」
「捜索の旅?」
「神の子を捜す旅だ。だから明日までに準備しといてくれ、とのことだ」
「私とハジメだけで?」
「そんな訳ねえだろ。俺とお前、アナとアーロンの四人だ」
「そ、そうだよね」

何で少し残念そうなんだ?

「ってことで、よろしくな。じゃあ、また明日」
「う、うん。バイバイ」

やっぱ、カンナが俺を庇って怪我してからアイツと話すとき妙に緊張するな。さっきも出来るだけ短く会話を終わらせちまった。こんなんで旅に出れんのかよ。

いや、弱気のままじゃダメだ。この旅で俺も強くなるんだ。ビーストを創るのもそうだが、武器を使い慣らすのもそうだ。スイの弓が速かったのは武器の性能もあると思うが、やっぱりスイ自身の戦闘能力が高かったからだ。

だったら、俺も鍛えて強くなれるって事だ。次は絶対スイに勝ってやる。

そうと分かれば、帰って特訓だ。

—————

旅立つ日が来た。この旅を機に俺は変わるんだ。本当の勇者に、本当の救世主になってやる。

「やる気満々って顔だな、ハジメ」
「アンタはいつも通りって感じだな。うん?」

アルバッドの後ろに初めて見る天使がいた。

「紹介しよう。私の弟のアーロンだ」

これがアーロンか。アルバッドと全然似てないな。身長はアルバッドと大差ないが、身体つきが全然違う。アルバッドがゴリマッチョだとすると、アーロンは細マッチョだ。それに賢そうな顔をしている。

「君がハジメ君か。話は聞いてるよ。よろしくね」
おお、気さくな兄ちゃんって感じだな。あれ?でもアルバッドの話によるとアーロンは人見知りって聞いたんだが。

「忘れるとこだった。ハジメ、君を今日から正式に大天使に任命する!」
今このタイミングでやるか普通?すげえ適当な感じがするぞ。

「大天使とは軍内で特に光エレメントが強い十の者のことを指す。スイの件で一つ席が空いたからな。よって、カンダ・ハジメ、君を大天使第十席に任命する!」

こんな適当な感じで良いのか?ここ軍の門の前だぞ?こう言うのって式典とかないのかよ。

「おめでとう、ハジメ君」
しかもこれを見てるのが、アーロン一人って寂しすぎやしないか?

「皆んな揃ってる!」
カンナとアナの登場だ。

「ごめんなさい、遅れました!」
「大丈夫、時間通りだ。私たちが少し早く着いただけだ。それに式典も終わったしな」

「式典?」とカンナとアナは首を傾げたが、アルバッドは全く説明をしなかった。ってこれで俺の大天使任命式終わりなのかよ!

「アーロンさん、お帰りなさい」
「あ、ああ。た、ただいま」
うん?何かアーロンの様子がおかしいぞ。

「アーロンは男には普通に接することが出来るが、女には弱いんだ。だから、よろしく頼む」

人見知りってそう言うことか。人見知り(女限定)なのね。

「曲者揃いって感じだな。所で、俺たちの目的地はどこなんだ?」
「そうだな。報告によると、アニマンデスに神の子らしき者の目撃情報がある」
「アニマンデス?どこだそれ」
「知らないの?死んだ動物たちが来る場所よ」

死んだ動物?そうか、そうだよな。動物にも死後の世界があっても不思議じゃないよな。

「自分のペットが先に死んでも、アニマンデスに迎えに行けるの。その逆もそうで、自分が先に死んで、ペットが後でヨードに来たら、お知らせが来るの。あなたのペットがアニマンデスに居ますよって」

へえ、それは凄く良い制度だな。でもこの世界って土地が無くなったりしないんだろうか?それともクラフティングで土地を増やせるんだろうか?

「アナ、アニマンデスの神の子について何か知ってるか?」
「うーん、テレパシーとかが出来る訳じゃないから分からないかな。それにエイプリル以外会ったことないし」

そうだったのか。兄弟とか言うから全員のこと知ってると思ったんだが。まあ、知ってたなら全員分の能力とか教えてくれるわな。

「よし、そろそろ行こうか」
一番先輩のアーロンがリーダーか。頼もしいな。女に対して人見知りだけど。

「皆んな健闘を祈る」
何だ。アルバッドらしくない台詞だな。それだけ今回の任務が大仕事ってのが伝わってくるな。

「じゃあ行ってくる」
「行って来ます、アルバッドさん」
「行って来ます!」
「兄さん、行ってくるよ」

こうして、俺の神の子捜索の旅は始まった。
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