テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第四章: アニマンデス

第五話

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「争うつもりが無いって、どういうことだ。お前この状況が分かってんのか?」

この少年がヨハンだろう。そしてその横にいるのがエマか。それにしても余裕あり過ぎだろ。

エマは、こんなんで動けるのかよ、って言うようなゴスロリチックなひらひらの付いた黒いドレスを着てるし、ヨハンも小さい身体に似つかないスーツを着て蝶ネクタイを付けている。

全く負ける気がしないのは俺だけか?それとも勝てる秘策でもあるんだろうか?

「状況は分かってるつもりです。ただ本当に戦うとか、そんな野蛮なことはしたくないんで‥‥‥」

俺が言うのもなんだが、コイツ絶対に軍に入るべきじゃなかっただろ。

「つまり、神の子を寄こさねえと、このヨハン様がテメエら全員ぶち殺してやるぜ、とこの子が言っているです」
「い、言ってないよ~~」

おい、ヨハンって子が涙目になってるぞ。大丈夫なのかコイツら。というか、正直言って凄いやり辛いな。

「僕は喧嘩じゃなくて、話し合いで済ませたいだけなんです!」

話し合い?戦争で言う和平交渉ってことか?

「今からこっちも話し合うから、ちょっと待ってろ」

俺がサウス軍の二人を止めたが、何だこの状況。敵を放ったらかしにして、この場をどう収めたらいいかを俺たち全員で話し合うとか、明らかにおかしいだろ。

「皆んなどう思う?アイツら和平交渉しに来たってことだろ?」
「普通に疑った方がいいと思うわ」

カンナがそう言った。やっぱりそうだよな。軍で和平交渉はあるかもしれないが、今の状況では明らかに怪しい。

「そうだ!ノアにはアイツらの考えが聞こえてんだろ?何て言ってんだ?」

「そうだな」
ノアは目を閉じ、手を顎に当て考え始めた。そして数秒後、目をパチリと開いた。

「どうだった?」
「ヨハンと言う者は嘘をついていない。だが、エマと言う者は特に平和に興味がないみたいだ」

ヨハンがそう言うなら間違いないだろう。でも条件が条件だ。吞み込める訳がない。

「和平交渉が事実だとしても、ノア君とアナちゃんを渡す訳にはいかない」
「そうだな。他の方法で交渉出来ないか確認するか」

神の子たちを渡すことはあり得ない。でも戦闘を避けて交渉出来るなら、それが願ったり叶ったりなのは事実だ。

「神の子は渡せない。だが、出来るだけお前らと戦いたくないのは本当だ。他に交渉成立する方法はないのか?」

俺が言うと、ヨハンはとても困ったような顔で、こっちとエマの方を交互に見た。

「どうしようエマ~」
「つまり、神の子を連れて帰らないと、俺たちが怒られるんだよバカヤローコノヤロー、と言っているんです?」
「そんなこと言ってないよ!エマ、いい加減にしないと僕怒るよ!」
「それは困りますです。怒ったヨハンは手が付けられないです」

もしかして、怒ったヨハンは超絶強いんだろうか?まあ、こう言う大人しそうな子が怒ると一番恐いって言うもんな。

「仕方ないです」
困ってるヨハンを余所に、エマは数歩前に出た。

「私は戦っても良いのですが、この子がダメと言うので、少しの間ワガママに付き合うことにするです。でもここで話すのはあれですので、どこか良いところ無いです?」

ですです星人は何を言ってるんだ。でも、それだけ怒り状態のヨハンは危険なのか?

「私の所でしよう。あそこなら全員入ることが出来る」

口を開いたのはノアだった。どんどん変な方向に行ってる気がするが、どうなっちまうんだ。


—————

俺、カンナ、アーロン、アナ、ノア、ゴラキ、ヨハン、エマの九人がノアの家の応接間でテーブルを囲んでいた。

エマとヨハン以外は険しい顔をしていて、他の皆んなはいつでも斬りかかれるように武器を握りしめていた。

「最初に言っておくが、変な素振りを見せたら攻撃する」

そう放ったアーロンが一番険しい顔をしていた。まさか、昨日ノアと話していた応接間でサウス軍の奴らと和平交渉をするとは思っていなかった。

応接間の雰囲気は明らかに緊迫していた。この俺ですら肌で感じる程だ。他の奴らはもっと感じてるに違いない。

そりゃそうだ。一国の運命が変わり得る交渉だからな。緊張しない方がおかしい。

カンナを見てみろよ。緊張で硬直状態じゃねえか。こんな大事な時に何してんだよ。それに、さっきから口数の少ないアナはボーッとしてるように見えるし、どうなってんだよ。まさか、交渉とかはアナには理解出来ないことなのか?

「おい、カンナ」
俺は横にいたカンナを肘で突いた。

「は、はい!」
「緊張で返事がおかしくなってるぞ」
「う、うるさい!」

カンナは赤面し、その反動で俺に頭をスコン!と叩いた。痛いけど、これでカンナの緊張が少し和らぐなら安いもんだ。

「ハジメの頭叩いたら少し落ち着いたかも。もっと叩かせて」
恐ろしいな。他に落ち着く方法考えろよ。

カンナはまだ良い。俺が気になってるのはアナの方だ。

「さっきからボケーっとして、どうしたんだアナ?」
「別に何もないよ?」
「今何が起きてるか分かんないんだろ」
「そ、そんなことないよ!コウショウでしょ、コウショウ」
図星か。顔を見れば分かる。分かりませんって顔に書いてるぞ。

「もしかして、交渉が分からないんじゃないだろうな」
「分かるもん」
アナは興味がないことにはトコトン興味がないタイプの人間、いや、神なんだな。

「では始めよう」
ノアが座り、交渉が始まった。上座に座ったことによって、ノアがこの交渉まとめ役みたいになった。

「先ずは俺たちの言い分から言わせてもらう」
「どうぞです」

エマの言葉を聞き、俺は続けた。

「お前らの要求はアナとノアだ。でも二人は何がなんでも渡すことが出来ない。普通ならここで交渉決裂なんだが、他に方法があるのか?」

「そうですね。サウス軍としては大天使の一人が居なくなると、とてもありがたいです。特に光の一番強いあなたとかです」

このゴスロリは俺に死ねって言ってるのか?見た目とは裏腹に凶暴性を兼ね備えてるな。

「そ、そんなの絶対ダメー!!!」
カンナとアナが腕でバツマークを作って大声で叫んだ。お前ら何やってんだ。ここは学校じゃないんだぞ?でも何か嬉しい。

「ま、それは冗談です。正直のところ、神の子以外に交渉はあり得ないと思うです。言い出しっぺのヨハンはどうです?」
「手ぶらで帰ると怒られるし、でも戦いたくないし、もうどうしたらいいんだ~」

サウス軍がヨハンみたいな奴ばかりだと良いのにな。でも、コイツはそもそも何でサウスエンドに居るんだ?

「あっそうだ!」
テーブルを叩き、急にヨハンが立ち上がった。

「他の神の子の居場所を教えてくれたら良いんだ!」
そう来たか。交渉の材料としては良いかもしれない。万が一サウス軍に情報が回っても、俺たちが最初に保護すれば問題ないからな。

「ヨハンの割には良いこと言うです」
ふくれっ面のヨハンを横目にエマが言った。

「と言いたい所ですが、やっぱり甘ちゃんです。あなたたちが嘘の情報を教える可能性があるです」
流石にサウス軍のトップは鋭いな。

「嘘を付いていると分かったら?」
アーロンが畳み掛けるように言った。アーロンがこの取引を早く終わらせたいのが伝わって来る。長くなれば長くなるほど俺たちにとってはタイムロスだからな。早く次の神の子を保護しないといけないしな。

「その心配はありませんです」
ノース軍全員がエマの発言に注目した。どう言う意味なんだそれは?

「こんなこともあろうかと、ここの動物たち全部にビーストを寄生させておきましたからです」

ビーストを寄生させたって、まさか、このゴスロリですです少女が寄生型使いだったのか‥‥‥?

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