テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

文字の大きさ
45 / 86
第六章: メトロポリタン・ラブストーリー

第六話

しおりを挟む
休日最後の日。俺は気合いが入っていた。そりゃ二日目のデートが無くなっちまったからな。

なので、当たり前だが、俺が予定を立てると言ったら、カンナが俺を連れて行きたい所があるらしく、今日はカンナが予定を組むことになった。どこに連れて行ってくれるのだろうか?

いつも通りロビーのソファーで待っていると、カンナが現れた。少し緩めのタートルネックのグレー色のニットの上に、下はデニム生地のスカートを着ていた。

胸元は開いてないが、ニットは少しピタっと肌に付いているため、胸の膨らみがいつも以上に目立った。それが返って俺をドキッとさせた。

「今日は私が案内するから!」
おう、と言う微妙な返事をした後、カンナは今日の目的地を教えてくれた。

「ハジメって、エレメント博物館に興味ある?」
俺が興味あるって、何で知ってるんだ?誰にも言ってないはずだが。

「興味津々だ」
そう言うと、カンナの顔がパッと明るくなった。彼女は手をパンと叩き、『よかった!』と言った。

もしかして、俺が興味のありそうな所を調べてくれたのか?初日はデートっぽい所で、今回は行きたい所か。エレメント博物館はいつか一人で行こうと思ってたが、こんな形で、好きな人と一緒に行けるとは夢にも思わなかった。

「早く行こ?」
カンナが俺の手を取り、引っ張ってきた。ミランダが変装してた時と似てるが、これは本物のカンナだ。本物も同じくらい積極的だな。

「これがエレメント博物館か。でも、いいのか?お前興味ないんじゃないか?」
全部俺に合わせてるだけなら悪い。出来るなら二人一緒に楽しめる所の方がいい。

「何言ってるの?ここはハジメを連れて来たかったのもあるけど、それは私が昔来て楽しかったからよ?」
「来たことがあるのか。誰と来たんだ?」
「マ‥‥‥マーガレットさん」
「へえ、てっきりボーイフレンドか何かだと思ったぜ」
「そんなのいる訳ないでしょ、バカ!」

カンナの顔が赤く染まっている。良いじゃねえか、一人で来ようとしてた俺よりマシだろうよ。
それに、カンナにボーイフレンドが居なかったことが判明して、俺は嬉しくなった。

エレメント博物館は地球上の博物館と似た形式で、カテゴリー別で展示品が分かれていた。

「先ずは一階から見てくか」
「ちょっと。今日は私が案内するって言ったでしょ!」
「ああ、そう言えばそうだったな。じゃあ頼んだぞ、カンナ」
「任せなさい!」

カンナの案内によると、この博物館は用意されてる順序通りに行くのではなく、自分が気になるのだけをピックアップして見る方が良いらしい。

「ここは図書館みたいな物だから、目当ての本が無いと、良い物を探すのが難しくなっちゃうの」
もともと図書館なんかには行かない俺には分からないが、そう言うことらしい。

「で、ハジメは何を作りたいとかあるの?」
そうだなあ、そう言われてみると、あんま考えてなかったな。何でも作れたらいいが、あったら便利なのはパソコンとかだろうか?

「パソコンとか?」
「また作るのが難しいのを選んだわね。それだったら、職人が作ったのを買った方が早いわ。これなんか、どうかしら?」

決めつけ感が多少あるが、確かにパソコンを自分で作る必要性がないな。ってか、そんなこと言ったら全部そうじゃねえか。まあ、いいか。ここでツッコむのは野暮だな。それで、カンナが言ってるのは何だ?

『アクセサリーの作り方』
そう看板にはあった。何でアクセサリーなんだ?そのくらいなら今でも作れそうだが。

疑問に思い、カンナの方を見てみた。何か目がすごい輝いてるんだけど。どういうこと?

「そんなに複雑じゃない物まで展示されてるんだな。素人とプロが作ったのは違うってことか?」

今度は、カンナの目が死んでいた。マズイことでも言っただろうか?

その後もカンナが紹介してくれたのは、機械的な物を見るのではなく、料理や服など、そこまで技術が必要としない物ばかりだった。

それなりに楽しめたが、さっきからカンナがそわそわしている。俺は何か見落としてるのか?本人に聞いたら殴られそうだし、どうしたものか‥‥‥

俺たちは、また噴水広場へ来ていた。また、と言っても前回はミランダとだった。そう言えば、アイツとキスをしそうになったな。思い出すだけで、恥ずかしくなってくる。

それにしても、ここへ来る途中、カンナはずっと俯いていて、落ち込んだ感じで一言も話さなかった。何でだろう?考えるんだ、俺!せっかくカンナとデートをしてるんだ。落ち込ませてどうすんだ。

待てよ。分かった気がする。カンナが何をしようとしたのか、理解出来たかもしれない。

「ちょっとトイレ行ってくる」
カンナは相変わらず落ち込んでいたが、頭を少し動かし頷いた。

俺はトイレに着き、さっそく作業に取り掛かった。俺の考えが正しければ、これでカンナは喜んでくれるはずだ。

よし、出来たぞ。

カンナのことを少し離れた所で見ていたが、やはり落ち込んでいた。俯きながら、ため息をついていた。

「待たせたな」
「うん」
「はい、これだろ?」

カンナは俯いていた顔を上げ、俺が手に持っていた物を見た。

「何それ?」
そりゃそうなるわな。袋に入ってるんだからな。袋までエレメントで作るべきか考えたが、こういうのは、袋に入れるのが普通だろう。

「開けて見てくれ」
カンナの頭上にはハテナマークが付いていたが、中身を見た瞬間、彼女の表情は今までに見たことないくらい明るくなった。

「これ、誰の?」
俺が気付くのが遅かったせいで、カンナに疑われている。

「お前のに決まってんだろ!」
すると、さっきの輝きがまた戻った。

「ハジメっ!」
でも今回は喜ぶ顔を見れただけでなく、カンナが俺に向かって飛び付いてきた。そう、カンナが抱きついて来たんだ。

いい匂いがする。それに‥‥‥胸が‥‥‥。

「ありがとう!このネックレス大事にするね!」

カンナは俺が作ったネックレスを袋から出し、嬉しそうに見ていた。気付くのが遅かったが、エレメント博物館でカンナが俺にアクセサリーの作り方を見せたのは、俺にプレゼントして欲しかったからだろう。全く、変なアピールの仕方だな。

でも、料理とか服の作り方は何だったんだろう?
それに関しては分からなかったので、さっき博物館で見たネックレスを元にデザインした物をあげたが、正解みたいだな。

というか、まだカンナが俺に抱きついてるんだが。抱きつきながらネックレス眺めるの止めてくれない?

「本当にありがとう!」
そう言いながら、カンナは俺の顔を直視してきた。しかも、上目遣いで。

次に起きたことは、俺が何も考えずにやったことで、自分が何をしたかは、暫くしてから気付いた。

上目遣いで俺のことを見ていたカンナの唇に、気付いたら、俺は唇を重ねていた。何でそんなことをしたかは、ちゃんとは説明出来ないが、ただ単にカンナのことが好きだからだろう。

でも、カンナがどう思っているかを考えずに、キスをしてしまったことは軽率だった。そう思っていたが、それは覆されることになる。

カンナはすぐに離れようとしなかった。嫌だったらすぐに離れると思うんだが。それとも怖くて動けなかったんだろうか?

それに、いつ離れるべきなんだろうか。俺には良く分からない。

俺が困っていると、近くの茂みでゴソゴソと音がした。俺は唇を重ねている状態で、少し覗いてみた。

そこに居たのは、アーロンを除いた全員だった。しかも、ヴァンの目はアナによって塞がれていて、そのアナの目はノアによって塞がれていた。お前ら、何やってんだよ。

「アナとヴァンには刺激的すぎる」
小声で話すノアの声が聞こえた。カンナが、俺が何かを見ていると気付いたのか、閉じていた目を開いた。そして、俺の視線の向こうにいたノアたちの方を見た。

「皆んな何やってんの!」
それがまともな反応だな。恥ずかしさと驚きが混じり、カンナの顔がいつも以上に赤くなっている。

「何も見てない。何も見てないぞ!」
「私も見てないよ!」
「ぼ、僕も見てない」

お互い、目を隠してるくせに説得力が皆無だぞ。

「で、何してたんだ?」
コイツらが来たことは、俺にとっては結構ありがたいかもしれない。正直、あのままカンナと二人きりだと、少し気まずくなっていたからな。

「アーロンがアイスクリームを買いに行っててね、私たちは待ってたの。そしたら、ハジメとカンナを見つけたから。見てただけなの!」
「まさか、あんなことをするとはな」

ガッツリ見てるじゃねえか!それに恥ずかしいから一々言わないでくれ!

「ただいま。あっ、ハジメ君にカンナさんも居たのかい?アイス取って来てあげるね。バニラ、チョコ、それともミックス。どれが良いかな?」

アーロンがソフトクリームを持って帰って来た。その姿は子供のために働く母さんのようだった。

「じゃ、じゃあ、ミックス二つで」
俺は放心状態のカンナの分も頼んだ。そしてアーロンが俺たちの分のアイスも買って来て、俺たちは噴水広場のベンチに座り、全員仲良く並んでソフトクリームを食べた。

「あれ、何かあったの?」
アーロンが一人だけ仲間はずれみたいになってるな。でも放っておこう。説明するのも面倒だし、何より恥ずかしい。

こうして、俺たちの休日は恥ずかしい思いもしたが、かなりの進展と共に幕を閉じた。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...