テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第六章: メトロポリタン・ラブストーリー

第六話

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休日最後の日。俺は気合いが入っていた。そりゃ二日目のデートが無くなっちまったからな。

なので、当たり前だが、俺が予定を立てると言ったら、カンナが俺を連れて行きたい所があるらしく、今日はカンナが予定を組むことになった。どこに連れて行ってくれるのだろうか?

いつも通りロビーのソファーで待っていると、カンナが現れた。少し緩めのタートルネックのグレー色のニットの上に、下はデニム生地のスカートを着ていた。

胸元は開いてないが、ニットは少しピタっと肌に付いているため、胸の膨らみがいつも以上に目立った。それが返って俺をドキッとさせた。

「今日は私が案内するから!」
おう、と言う微妙な返事をした後、カンナは今日の目的地を教えてくれた。

「ハジメって、エレメント博物館に興味ある?」
俺が興味あるって、何で知ってるんだ?誰にも言ってないはずだが。

「興味津々だ」
そう言うと、カンナの顔がパッと明るくなった。彼女は手をパンと叩き、『よかった!』と言った。

もしかして、俺が興味のありそうな所を調べてくれたのか?初日はデートっぽい所で、今回は行きたい所か。エレメント博物館はいつか一人で行こうと思ってたが、こんな形で、好きな人と一緒に行けるとは夢にも思わなかった。

「早く行こ?」
カンナが俺の手を取り、引っ張ってきた。ミランダが変装してた時と似てるが、これは本物のカンナだ。本物も同じくらい積極的だな。

「これがエレメント博物館か。でも、いいのか?お前興味ないんじゃないか?」
全部俺に合わせてるだけなら悪い。出来るなら二人一緒に楽しめる所の方がいい。

「何言ってるの?ここはハジメを連れて来たかったのもあるけど、それは私が昔来て楽しかったからよ?」
「来たことがあるのか。誰と来たんだ?」
「マ‥‥‥マーガレットさん」
「へえ、てっきりボーイフレンドか何かだと思ったぜ」
「そんなのいる訳ないでしょ、バカ!」

カンナの顔が赤く染まっている。良いじゃねえか、一人で来ようとしてた俺よりマシだろうよ。
それに、カンナにボーイフレンドが居なかったことが判明して、俺は嬉しくなった。

エレメント博物館は地球上の博物館と似た形式で、カテゴリー別で展示品が分かれていた。

「先ずは一階から見てくか」
「ちょっと。今日は私が案内するって言ったでしょ!」
「ああ、そう言えばそうだったな。じゃあ頼んだぞ、カンナ」
「任せなさい!」

カンナの案内によると、この博物館は用意されてる順序通りに行くのではなく、自分が気になるのだけをピックアップして見る方が良いらしい。

「ここは図書館みたいな物だから、目当ての本が無いと、良い物を探すのが難しくなっちゃうの」
もともと図書館なんかには行かない俺には分からないが、そう言うことらしい。

「で、ハジメは何を作りたいとかあるの?」
そうだなあ、そう言われてみると、あんま考えてなかったな。何でも作れたらいいが、あったら便利なのはパソコンとかだろうか?

「パソコンとか?」
「また作るのが難しいのを選んだわね。それだったら、職人が作ったのを買った方が早いわ。これなんか、どうかしら?」

決めつけ感が多少あるが、確かにパソコンを自分で作る必要性がないな。ってか、そんなこと言ったら全部そうじゃねえか。まあ、いいか。ここでツッコむのは野暮だな。それで、カンナが言ってるのは何だ?

『アクセサリーの作り方』
そう看板にはあった。何でアクセサリーなんだ?そのくらいなら今でも作れそうだが。

疑問に思い、カンナの方を見てみた。何か目がすごい輝いてるんだけど。どういうこと?

「そんなに複雑じゃない物まで展示されてるんだな。素人とプロが作ったのは違うってことか?」

今度は、カンナの目が死んでいた。マズイことでも言っただろうか?

その後もカンナが紹介してくれたのは、機械的な物を見るのではなく、料理や服など、そこまで技術が必要としない物ばかりだった。

それなりに楽しめたが、さっきからカンナがそわそわしている。俺は何か見落としてるのか?本人に聞いたら殴られそうだし、どうしたものか‥‥‥

俺たちは、また噴水広場へ来ていた。また、と言っても前回はミランダとだった。そう言えば、アイツとキスをしそうになったな。思い出すだけで、恥ずかしくなってくる。

それにしても、ここへ来る途中、カンナはずっと俯いていて、落ち込んだ感じで一言も話さなかった。何でだろう?考えるんだ、俺!せっかくカンナとデートをしてるんだ。落ち込ませてどうすんだ。

待てよ。分かった気がする。カンナが何をしようとしたのか、理解出来たかもしれない。

「ちょっとトイレ行ってくる」
カンナは相変わらず落ち込んでいたが、頭を少し動かし頷いた。

俺はトイレに着き、さっそく作業に取り掛かった。俺の考えが正しければ、これでカンナは喜んでくれるはずだ。

よし、出来たぞ。

カンナのことを少し離れた所で見ていたが、やはり落ち込んでいた。俯きながら、ため息をついていた。

「待たせたな」
「うん」
「はい、これだろ?」

カンナは俯いていた顔を上げ、俺が手に持っていた物を見た。

「何それ?」
そりゃそうなるわな。袋に入ってるんだからな。袋までエレメントで作るべきか考えたが、こういうのは、袋に入れるのが普通だろう。

「開けて見てくれ」
カンナの頭上にはハテナマークが付いていたが、中身を見た瞬間、彼女の表情は今までに見たことないくらい明るくなった。

「これ、誰の?」
俺が気付くのが遅かったせいで、カンナに疑われている。

「お前のに決まってんだろ!」
すると、さっきの輝きがまた戻った。

「ハジメっ!」
でも今回は喜ぶ顔を見れただけでなく、カンナが俺に向かって飛び付いてきた。そう、カンナが抱きついて来たんだ。

いい匂いがする。それに‥‥‥胸が‥‥‥。

「ありがとう!このネックレス大事にするね!」

カンナは俺が作ったネックレスを袋から出し、嬉しそうに見ていた。気付くのが遅かったが、エレメント博物館でカンナが俺にアクセサリーの作り方を見せたのは、俺にプレゼントして欲しかったからだろう。全く、変なアピールの仕方だな。

でも、料理とか服の作り方は何だったんだろう?
それに関しては分からなかったので、さっき博物館で見たネックレスを元にデザインした物をあげたが、正解みたいだな。

というか、まだカンナが俺に抱きついてるんだが。抱きつきながらネックレス眺めるの止めてくれない?

「本当にありがとう!」
そう言いながら、カンナは俺の顔を直視してきた。しかも、上目遣いで。

次に起きたことは、俺が何も考えずにやったことで、自分が何をしたかは、暫くしてから気付いた。

上目遣いで俺のことを見ていたカンナの唇に、気付いたら、俺は唇を重ねていた。何でそんなことをしたかは、ちゃんとは説明出来ないが、ただ単にカンナのことが好きだからだろう。

でも、カンナがどう思っているかを考えずに、キスをしてしまったことは軽率だった。そう思っていたが、それは覆されることになる。

カンナはすぐに離れようとしなかった。嫌だったらすぐに離れると思うんだが。それとも怖くて動けなかったんだろうか?

それに、いつ離れるべきなんだろうか。俺には良く分からない。

俺が困っていると、近くの茂みでゴソゴソと音がした。俺は唇を重ねている状態で、少し覗いてみた。

そこに居たのは、アーロンを除いた全員だった。しかも、ヴァンの目はアナによって塞がれていて、そのアナの目はノアによって塞がれていた。お前ら、何やってんだよ。

「アナとヴァンには刺激的すぎる」
小声で話すノアの声が聞こえた。カンナが、俺が何かを見ていると気付いたのか、閉じていた目を開いた。そして、俺の視線の向こうにいたノアたちの方を見た。

「皆んな何やってんの!」
それがまともな反応だな。恥ずかしさと驚きが混じり、カンナの顔がいつも以上に赤くなっている。

「何も見てない。何も見てないぞ!」
「私も見てないよ!」
「ぼ、僕も見てない」

お互い、目を隠してるくせに説得力が皆無だぞ。

「で、何してたんだ?」
コイツらが来たことは、俺にとっては結構ありがたいかもしれない。正直、あのままカンナと二人きりだと、少し気まずくなっていたからな。

「アーロンがアイスクリームを買いに行っててね、私たちは待ってたの。そしたら、ハジメとカンナを見つけたから。見てただけなの!」
「まさか、あんなことをするとはな」

ガッツリ見てるじゃねえか!それに恥ずかしいから一々言わないでくれ!

「ただいま。あっ、ハジメ君にカンナさんも居たのかい?アイス取って来てあげるね。バニラ、チョコ、それともミックス。どれが良いかな?」

アーロンがソフトクリームを持って帰って来た。その姿は子供のために働く母さんのようだった。

「じゃ、じゃあ、ミックス二つで」
俺は放心状態のカンナの分も頼んだ。そしてアーロンが俺たちの分のアイスも買って来て、俺たちは噴水広場のベンチに座り、全員仲良く並んでソフトクリームを食べた。

「あれ、何かあったの?」
アーロンが一人だけ仲間はずれみたいになってるな。でも放っておこう。説明するのも面倒だし、何より恥ずかしい。

こうして、俺たちの休日は恥ずかしい思いもしたが、かなりの進展と共に幕を閉じた。








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