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第六章: メトロポリタン・ラブストーリー
第五話
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俺はカンナの部屋まで来ていた。今頃泣いているだろうか?悪いことをしたな‥‥‥
扉をノックすると、暫くしてゴソゴソと言う音が聞こえた。そして、扉が開いた。
出て来たのは、髪の毛がぼさぼさでパジャマ姿のカンナだった。それに目が少し赤かった。
「ハ、ハジメ‥‥‥!」
俺を見たあと、一瞬の間があったが、すぐに扉を閉められた。そんなに嫌われたのか、俺は‥‥‥
「ちょ、ちょっと待ってて!」
扉の向こうから声が聞こえた。何やら焦ってる様子だった。何かぶつぶつ言いながら、バタバタとした音が聞こえてくる。
数分経った頃、またカンナが出て来た。今度は髪の毛が整えられていて、服装まで外行き用のになっていた。
「何か用?」
少し前のツンデレカンナに戻っている。俺がデートをすっぽかしたからだな。
「あ、あのよ。昨日の俺、何て言ってた?」
あのミランダのことだ。デートをキャンセルしたと言っても、どうせ変なことを言ったんだろう。
「アンタ、記憶喪失?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどな、教えてくれないか?頼む!」
カンナは不機嫌な顔を見せたが、最終的には教えてくれた。
「すごい酷かったんだからね。『デートはキャンセルだ。小娘になんか、興味ないんでね』って言って来たんだよ?」
俺は頭を抱えた。ミランダの野郎。断るならもっとカッコよく断れよな。
「そりゃ酷いな。色んな意味で‥‥‥」
「は?」
「いや、あのな、昨日の、あれ俺じゃないんだ」
「だから、は?」
俺は事のあらましを説明した。ミランダが俺に扮してデートをキャンセルしたこと、カンナに変装して俺とデートをしたこと、そして俺を暗殺しようとしたことを。
「えっ、うそ‥‥‥。じゃあ、デートキャンセルもウソ?私のこと嫌いっていうのは?小娘っていうのは?」
「ウソに決まってんだろ」
「‥‥‥なんだ。泣いて損しちゃったじゃない」
最後の部分が聞き取れなかったが、許してくれたみたいだ。
「だからよ」
「うん?なに?」
「あ、明日またどこかに出かけませんか?」
「仕方ないわね。付き合ってあげるわよ!」
さっきまで不貞腐れていたカンナの表情が明るくなった。それより、またしてもデートの誘いOKとは。俺も、やれば出来るじゃねえか。
「あっ、二人とも帰ってたのー?」
アナたちが帰ってきた。両手には色んな店の袋がぶら下がっていた。
「全く、なぜ私がお前の荷物持ちをしないといけないのだ」
ノアは、いつものように愚痴を垂れながらも、自分の妹の面倒を見ている。良いやつだな、お前。俺はノアに聞こえるように心の中で言った。
嫌そうな顔でこっちを見て来たが、良い奴なのは事実だからな。
ノアとアーロンは荷物持ちをさせられていたが、ヴァンが持っていたのは、小さい袋一つだけだった。アナのヴァン贔屓はすごいな。
どうせアナがヴァンには何も持たせないとか言ったが、ヴァンは持たせてと言って、それで渡したのがあの小さな袋一つって所だな。まあ、ヴァンは最年少だし、アナが可愛がるのも分かる。
「よお、楽しかったか?」
「うん!」
「普通だ」
「‥‥‥楽しかったよ」
おー、ヴァンがちゃんと返事をしてくれるようになってる。しかも敬語じゃない!これは凄い進歩だ。
「そっちは楽しめたかい?」
アーロンが嬉しそうに尋ねてきた。いいえ、俺たちは全く楽しめていません。
「ええ、楽しかったですよ!」
返答に困っていた俺の代わりに、カンナが答えてくれた。しかも、今日起こったことに全く触れずに。皆んなを心配させないように、そう言ったのだろう。
それぞれの部屋に戻った後、ノアとアーロンが寄って来た。
「で、何があったんだ?」
やっぱりノアは騙せないか。俺は起こったことを全て説明した。
「それは大変だったね。道理でカンナさんの目が赤かった訳だ」
こりゃ驚いた。アーロンも気付いてたのか。やっぱ、母さんは見るとこが違うな。
「ノア、アーロン。お前たちが知ってることは、カンナには秘密にしといてくれないか?」
一番悲しかったであろうカンナが、心配をかけまいと本当のことを言わなかったんだ。ここは、何も言わない方がいいだろう。
「うん、分かってるよ。でも、ミランダの能力については報告させて貰うよ。重要な情報だからね」
「肩を揉んでくれたら、いいぞ」
「ありがとう、皆んな。肩も揉ませて貰うぜ、ノア」
「ノア様、な」
調子に乗りすぎだ。俺は、敢えて力一杯にノアの肩を掴んだが、『おおー、そこだ、そこ。やるじゃないか、ハジメ』と言われ、逆に気持ち良かったみたいだった。
その夜、俺はあまり寝付けずにいた。俺は、ミランダのことを考えていた。どうもアイツが悪い奴には思えなかった。それは他の奴らもそうだ。
直接エレメントの記憶を見たのはゴンゾウだけだが、普通に良い親父をしていたし、ヨハンは平和を求めていた。それに、ミランダも普通に楽しいことをしたい女の子だった。
今はあまり戦闘をしないで済んでいるが、いざ戦場に出るとなると、そうは行かないだろう。だがきっと、俺にはアイツらを斬ることが出来ない。
アイツらにも家族がいるし、帰りを待ってる人がいるんだ。エレメント越しでもそんなことを見てしまったら、攻撃なんて出来るはずがない。
違う出会い方をしていたら、良い友達になれたかもしれないな。いや、今でもなれるかもな。
扉をノックすると、暫くしてゴソゴソと言う音が聞こえた。そして、扉が開いた。
出て来たのは、髪の毛がぼさぼさでパジャマ姿のカンナだった。それに目が少し赤かった。
「ハ、ハジメ‥‥‥!」
俺を見たあと、一瞬の間があったが、すぐに扉を閉められた。そんなに嫌われたのか、俺は‥‥‥
「ちょ、ちょっと待ってて!」
扉の向こうから声が聞こえた。何やら焦ってる様子だった。何かぶつぶつ言いながら、バタバタとした音が聞こえてくる。
数分経った頃、またカンナが出て来た。今度は髪の毛が整えられていて、服装まで外行き用のになっていた。
「何か用?」
少し前のツンデレカンナに戻っている。俺がデートをすっぽかしたからだな。
「あ、あのよ。昨日の俺、何て言ってた?」
あのミランダのことだ。デートをキャンセルしたと言っても、どうせ変なことを言ったんだろう。
「アンタ、記憶喪失?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどな、教えてくれないか?頼む!」
カンナは不機嫌な顔を見せたが、最終的には教えてくれた。
「すごい酷かったんだからね。『デートはキャンセルだ。小娘になんか、興味ないんでね』って言って来たんだよ?」
俺は頭を抱えた。ミランダの野郎。断るならもっとカッコよく断れよな。
「そりゃ酷いな。色んな意味で‥‥‥」
「は?」
「いや、あのな、昨日の、あれ俺じゃないんだ」
「だから、は?」
俺は事のあらましを説明した。ミランダが俺に扮してデートをキャンセルしたこと、カンナに変装して俺とデートをしたこと、そして俺を暗殺しようとしたことを。
「えっ、うそ‥‥‥。じゃあ、デートキャンセルもウソ?私のこと嫌いっていうのは?小娘っていうのは?」
「ウソに決まってんだろ」
「‥‥‥なんだ。泣いて損しちゃったじゃない」
最後の部分が聞き取れなかったが、許してくれたみたいだ。
「だからよ」
「うん?なに?」
「あ、明日またどこかに出かけませんか?」
「仕方ないわね。付き合ってあげるわよ!」
さっきまで不貞腐れていたカンナの表情が明るくなった。それより、またしてもデートの誘いOKとは。俺も、やれば出来るじゃねえか。
「あっ、二人とも帰ってたのー?」
アナたちが帰ってきた。両手には色んな店の袋がぶら下がっていた。
「全く、なぜ私がお前の荷物持ちをしないといけないのだ」
ノアは、いつものように愚痴を垂れながらも、自分の妹の面倒を見ている。良いやつだな、お前。俺はノアに聞こえるように心の中で言った。
嫌そうな顔でこっちを見て来たが、良い奴なのは事実だからな。
ノアとアーロンは荷物持ちをさせられていたが、ヴァンが持っていたのは、小さい袋一つだけだった。アナのヴァン贔屓はすごいな。
どうせアナがヴァンには何も持たせないとか言ったが、ヴァンは持たせてと言って、それで渡したのがあの小さな袋一つって所だな。まあ、ヴァンは最年少だし、アナが可愛がるのも分かる。
「よお、楽しかったか?」
「うん!」
「普通だ」
「‥‥‥楽しかったよ」
おー、ヴァンがちゃんと返事をしてくれるようになってる。しかも敬語じゃない!これは凄い進歩だ。
「そっちは楽しめたかい?」
アーロンが嬉しそうに尋ねてきた。いいえ、俺たちは全く楽しめていません。
「ええ、楽しかったですよ!」
返答に困っていた俺の代わりに、カンナが答えてくれた。しかも、今日起こったことに全く触れずに。皆んなを心配させないように、そう言ったのだろう。
それぞれの部屋に戻った後、ノアとアーロンが寄って来た。
「で、何があったんだ?」
やっぱりノアは騙せないか。俺は起こったことを全て説明した。
「それは大変だったね。道理でカンナさんの目が赤かった訳だ」
こりゃ驚いた。アーロンも気付いてたのか。やっぱ、母さんは見るとこが違うな。
「ノア、アーロン。お前たちが知ってることは、カンナには秘密にしといてくれないか?」
一番悲しかったであろうカンナが、心配をかけまいと本当のことを言わなかったんだ。ここは、何も言わない方がいいだろう。
「うん、分かってるよ。でも、ミランダの能力については報告させて貰うよ。重要な情報だからね」
「肩を揉んでくれたら、いいぞ」
「ありがとう、皆んな。肩も揉ませて貰うぜ、ノア」
「ノア様、な」
調子に乗りすぎだ。俺は、敢えて力一杯にノアの肩を掴んだが、『おおー、そこだ、そこ。やるじゃないか、ハジメ』と言われ、逆に気持ち良かったみたいだった。
その夜、俺はあまり寝付けずにいた。俺は、ミランダのことを考えていた。どうもアイツが悪い奴には思えなかった。それは他の奴らもそうだ。
直接エレメントの記憶を見たのはゴンゾウだけだが、普通に良い親父をしていたし、ヨハンは平和を求めていた。それに、ミランダも普通に楽しいことをしたい女の子だった。
今はあまり戦闘をしないで済んでいるが、いざ戦場に出るとなると、そうは行かないだろう。だがきっと、俺にはアイツらを斬ることが出来ない。
アイツらにも家族がいるし、帰りを待ってる人がいるんだ。エレメント越しでもそんなことを見てしまったら、攻撃なんて出来るはずがない。
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