テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第七章: ロスト・イン・ライトニング

第五話

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やべえ。本当に人を轢いちまった。いや、轢くと言うよりかは、はねるか。車に跳ね飛ばされたキルティは、数メートル先まで吹っ飛び、地上に落ちた後に何回転もして転がって行った。

俺、殺人犯になっちゃうかも。この場合は、神を殺したから、殺神犯になるのか。どちらにせよ罰当たりな奴だな。

「今の内に降りるんだ。それとヴァン、手筈通りに頼むぞ」

俺は車に乗り込む前に、キルティの元へ辿り着けたならば、キルティの腕と脚を凍らせてくれとヴァンに頼んであった。そうしたらキルティは能力を使えなくなるからな。でも、コイツもう起き上がらないんじゃないか?このままだと本当に殺神犯になっちまうよ、俺。

俺の心配とは裏腹に、キルティは普通に起き上がった。自分のパーカーをパンパンと払い、横に落ちていたキャップを拾い上げ、被り直した。

「ヴァン、早く!」
ヴァンは何も言わずに、キルティの方へと息を吹きかけた。キルティは氷息吹を避けたが、何とか左腕に当てることは出来た。当たった部分は腕から胸部、そして胴を通って下半身へと徐々に拡がっていった。

俺たちは、キルティを捕縛することに成功した。

—————

「誰だ貴様ら」
あら、ストリートファッションの割にはお堅い話し方ですこと。それにしても、良くコイツの動きを止めれたな。これもヴァンの能力あってのことだな。やっぱ神の子強えな。でも止めれてなかったら、俺たち今頃丸焦げだな。

「キルティ、お前を保護しに来た」
『あ?』と睨みつけて来たキルティだったが、残念だな。俺はノアの睨みで鍛えられてるんだ!

「もうじき、お前のことを殺そうとサウス軍の奴らが来る。だから、俺たちと一緒に来てくれないか?」
「断る」
「一緒に来てくれ」
「断る」
「来てくれ」
「断る」
「来い」

段々、俺の言葉使いが悪くなっていった。こう言うタイプの奴が苦手だ。ことの重要性を考慮しない奴。それで自分の身が危なくなって、やっと動くんだ、こう言うタイプの奴は。

「お前、自分が何なのか分かってるのか?」
不可解な感じでキルティは俺の方を見てきた。もしかして、自分が神の子だって気付いてないのか?

「何で俺の名前を知ってるんだ、貴様らは」
本当に気付いてないみたいだな。どうやったら納得して貰えるだろうか?

「私はノア。お前の弟だ」
悩んでいた俺の代わりに、ノアが話し始めた。って、お前弟だったのかよ。まあ、確かにキルティの方が身長高いし、年上に見えるな。それなのに、兄をお前呼ばわりか。ノアらしいっちゃノアらしいけどな。

「そこの赤髪のがアナ、白髪のがヴァンだ。どっちもお前の弟妹だ」
うん、間違ってないが、白髪って言い方は良くないな、うん。ほら、ヴァンが髪色気にして髪の毛いじくり始めてるじゃねえか!せめて銀髪って言ってやれよ!

キルティは、順番にノアたちのことを凝視した。

「その弟妹が何の用だ」
ノアたちを見て何かを感じたのか、話を信じたみたいだった。

「さっきも言ったが、お前の命を狙う輩がいる。それを阻止するために私たちは来た。ここにいるノース軍の大天使は私たち、そしてお前を助け、保護するためにいる。他に説明はいるか?」

簡潔すぎる。だが的を射ている。ノアに言われて初めて、自分が大天使だと言う自覚が湧いてきた。やっぱり第三者に認められると、違うもんだな。

「貴様らの助けなど必要ない」
「だそうだ」

何こっち振り向いて『だそうだ』って言ってんだよ、ノア!もっと積極的にアピールしようぜ。

「キルティの声を聞いたが、彼は根っからの武人だ。誰の助けも求めないだろう。はっきり言って、彼を保護するのは難しい」

ストリートファッションの武人、って所に引っかかるが、ノアがそう言うなら間違いないだろう。出来ればサウス軍が来る前に保護したいんだが、もうすぐ側まで来てるはずだ。

武人に言うことを聞かせるには、どうすればいいか。何となく答えは分かっていたが、あまりやりたくないな。

「ノア、コイツが何を求めてるか分かるか?」
「自分より強い奴」
やっぱりな。武人はどこまでも強さを求めるからな。よく漫画とかである設定だ。『俺より強い奴を待っている』とかありがちな台詞だな。

仕方ないな。これも神の子を保護するためだ。

「よーっし、じゃあ俺たちの誰かと戦おうぜ。それで、負けた方が勝った方の言うことを何でも一つ聞く。どうだ?」
「負ける時は死ぬ時だ」

えー、何この子。マジもんじゃん。目がギラギラしてんだけど。本当に言動と行動が服装と合わない奴だな。

「で、誰とやるんだ?」
え?それって俺が聞くんじゃないの?ノア君、こう言う時だけ積極的ですね。キルティがこの場にいた俺たちを見ている。これは嫌な予感しかしないな‥‥‥

「貴様だ」
ああ、はい。嫌な予感的中ですね。

キルティの視線は俺に向いていた。コイツは俺と決闘するつもりなんだ。今思ったが、誰も俺の提案にツッコミを入れなかったってことは、最初から俺が選ばれるって分かってたんだな。オナって手に入れたとしても、この世界では最高度の光エレメントなんだ。

「おい、俺死ぬんじゃないか?」
ノアに問うてみたが、答えは『大丈夫だろう』、と酷くシンプルな物だった。でもノアのことだ、キルティの心の声を読んだ上での「大丈夫」なんだろう。ここは、ノアを信用するしかない。

「カンナ、俺が死んでも、しっかり生きるんだぞ」
俺はカンナに歩み寄り、両肩に手を置いた。うん、戸惑い顔も可愛いな。この顔を見れるのも、もう最後かもしれない。彼女が出来たばっかなのに!あれや、これや、それや、まだやり残したことがたんまりあるのに!俺は雷に打たれて死ぬんだ。

「大丈夫でしょ」
へっ?カンナさん、今なんて?もしかして、大丈夫って言いました?俺のこと、そんなに強いって思ってくれてるのか。それとも適当に言ってんのか!?

「お前らはどう思ってんだ!」
バッと振り返り、後ろにいたアーロン、アナ、ヴァンに聞いた。

「大丈夫でしょ」
コイツら、口を揃えて言いやがった。ってか、お前ら話す時の語尾バラバラだろ!何で今だけ同じなんだよ!

もういい。ハジメ君は大変傷つきました。お前らなんか、お前らなんか‥‥‥もう知らない!

俺は失恋した乙女ばりに疾走した。もう、カンナ君、ノア君、アナ君、ヴァン君、アーロン君のことなんか知らないんだから!

「ヴァン、キルティの氷を取ってやってくれ」
我に帰った俺は、ヴァンに言った。ヴァンは能力を制御出来るようになってから、アナの炎無しでも氷を外せるようになっていた。

「その必要はない」
ストリートボーイが『ふんぬッ』と言うと、ヴァンの氷はパリパリと言い始め、キルティが纏っていた氷の鎧は割れて地面に落ちた。

キルティの身体からはバチバチと音がしている。よく見ると、コイツ電気を纏っていやがる。この電気でヴァンの氷にヒビを入れたんだろうか。

「悪くなかったぞ、弟よ」
あれ、優しい兄ちゃんになってるぞ。あっ、分かったぞ。コイツ自分が強いと思った奴には敬意を示すタイプだろ。じゃあ、俺でもチャンスがあるかもしれない。

「やるか、キルティ」
「強い光の力、見せてもらおう」
これ、格闘ゲームで試合が始まる前にあるカットシーンみたいでカッコいいな。何かポーズ取った方がいいかな?

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

俺とキルティとの決闘が始まろうとした瞬間、もの凄く大きな地響きがして、身動きが取れない程に揺れ始めた。

気付いたら、俺たちが立っていた真下から何かが生えてきた。下から湧き出る正体不明の物体を避けながら、見ていると、それはグングンと伸び、すでに俺の身長より高くなっていた。

周辺を見渡すと、俺とキルティの周りには壁が出来ていた。四方には壁、そして上には天井まである。一つの部屋になってるのか?やばいな、カンナたちと分かれちまった。

「おい!大丈夫か、お前ら!」
全く反応がない。この壁、相当厚いんだろうか。

何が起こったか分からないが、当分の間、俺はキルティと一緒みたいだな‥‥‥



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