テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第七章: ロスト・イン・ライトニング

第九話

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反撃と言ったのはいいが、はっきり言って、どうすればコンスタンティンを倒せるかが分からない。キルティの攻撃をも平然と受け止めるんだ。俺たちが束になっても絶対に勝てるという保証はないだろう。

俺のビーストで、コイツのエレメントを見たら、何か分かるだろうか?

「皆んな、俺がビーストを創ってる間、援護しくれ!」

四方から『了解』の合図を貰い、俺はズボンのチャックを少し下ろした。戦闘中に何してんだとは俺も思うが、今はこうしないとビーストを創れない。さっさと普通に魂を出す練習をしないとな。

コンスタンティンの記憶を見るだけなら、小さめのビーストでもいいか、と思い、今回は機動性に長けているコウモリを創ってみた。そして、チャックの隙間から糸状の魂を出し、コウモリに注いだ。

魂の入ったコウモリを動かし、コンスタンティンへと飛ばした。アーロンたちの攻撃を受けている十字架男は、俺のビーストに気付いてないみたいだ。コウモリにコンスタンティンを攻撃させ、俺はコイツの記憶への侵入に成功した。

ジジジジジ‥‥‥

洞窟の入り口に俺はいた。相変わらずエレメントの記憶の世界は、昔の映画みたいに色褪せている。今は夜中で、外は暗かったが、洞窟内から漏れている灯りと聞き覚えのある『ガハハハハハ』という笑い声で、コンスタンティンがこの中にいることに気付くまでにそう時間は掛からなかった。

俺は気付かれないように、中へ入った。カランとコップ同士がぶつかり合う音、話し声、音楽、そして大きな笑い声、全てが同時に聞こえてくる。

隠れるように覗いていると、コンスタンティン含めた複数人が楽しげに話しているのが見えた。酒でも飲んでいるんだろう、全員顔が真っ赤だ。宴会か何かか?

「今回も大量でしたね、お頭!」
お頭?しかもコンスタンティンに向けて言ってるぞ。ってことは、これはコンスタンティンをお頭としてる何かの組織‥‥‥。十中八九、盗賊か海賊とかの犯罪集団だろうな。

「ガハハハハハ!おうよ、ノマド。お前も慣れて来たみてえだな。特に今日の剣さばき、ありゃ良かったぞ!」
「あはは、そうだそうだ。あの盗賊団、俺たちの陣地に入って来やがって!斬り刻んでやりましたよ!」
「それでいいぞ、ノマド!俺たち十字団に楯突くやつは全員皆殺しだ!ガハハハハハ!!!!」

十字団か。盗賊団確定だな。

なっ!会話を聞くのに夢中で周りを見ていなかった。後ろから足音がする。敵か?逃げる場所がねえ。後ろに逃げても見つかるし、前にはコンスタンティンたちが居る。万事休すか。

俺はいつでも応戦出来るよう、白濁の剣を握りしめた。通りすがる時に、斬って倒すしかない。

来た。俺は思いっきり振りかぶり、剣を振り下ろした。

スカッ。
何かに当たった感触はない。だが、敵はそのまま歩いて行った。

「追加でビール持って来ましたよー」
何だよこれ。攻撃は当たらないし、俺のことを無視していた。丸で見えないかのように。

うん?もしかして、この世界では俺は見えないのか?それと何にも触れることが出来ないのか。そういうことなのか。もう一度試してみるか。俺は大胆にコンスタンティンの前に出た。

「ガハハハハハ!今日のビールは一段と美味いな!」

今、この状態で、俺はコンスタンティンの目の前に出て、コイツに手を振っている。反応なし。手を伸ばしてコンスタンティンを触ろうとしたが、ホログラムを触るみたいに、俺の手はコンスタンティンをすり抜けた。気持ち悪いな。

だがこれで、俺の能力に関して新たに分かったことがある。この記憶世界では俺は存在しないことになっている。介入も何も出来ない、ただの傍観者って訳か。まあ、実際そっちの方が助かるんだがな。

そうと分かれば、偵察し放題だな。コンスタンティンの弱点とか分かんねえかな。

そう期待していたが、この場面はこれで終わった。

ジジ‥‥‥ジジジジジ

次は何だ?さっきと同じ洞窟だが、中の様子が前とは違う。コンスタンティン含め、団員全員の顔に不安と苛立ちが伺えた。

「ノマドが帰ってこないだと?」
「ええ、今朝の急襲の後から行方が分からなくなってます」
「死んだ訳じゃねえな。アイツは、そんなヤワな奴じゃねえ」
「誰もノマドが殺られたところを見てないんです」

どうやら、団員の一人が帰ってこないみたいだ。それに死んだところを誰も見ていないそうだ。ここにいても仕方ないと、全員で探しに出ることになった。

このような盗賊団とか海賊団ってのは、血の繋がり以上の関係を持っていたりするが、コンスタンティンたちもそうなのだろう。職業はあれかもしれないが、コイツも根は悪くないのかもしれない。

「お頭ァ!!!ノマドが、ノマドが!!!」
一人の団員が、洞窟に入って来るなり叫んだ。それを聞き、団全体が外へと飛び出した。

俺も外に出たが、そこに立っていたのは、ノマドだった。そして彼の後ろには、見知らぬ男がいた。身長は平均より高く、細身に見えたが、スラッとしていて、決して不恰好ではなかった。そして何より目立ったのが、その真っ黒な髪色。黒以上に黒。漆黒色とでも言うのだろうか?

「誰だテメエ!」

コンスタンティンのことだ、すぐに突っ込むだろうと思っていた。しかし、俺の予想は外れた。十字架男は様子を窺っている。案外頭がキレるみたいだ。

すると、漆黒髪の男はノマドの背中をポンっと押した。盗賊は躓くように、前に数歩進んだ。次の瞬間、ノマドは膝から崩れ落ちた。

何が起きた?
よく見ると、胸にぽっかりと穴が開いていた。ノマドは倒れ、数秒も経たない内に灰と化した。

俺を含めた、その場にいた全員が驚嘆した。太刀筋が全く見えなかった。相手に穴を開けたのに。斬るではなく、刺すという行為すら見えないことなどあり得るのか。

目の前で仲間を殺された盗賊団は激昂した。何人かは、すでに仇である男の元へと走っていた。

「やるなら全員でだ。ノマドの仇を取るぞ、テメエら!!!!」

流石はお頭。コンスタンティンの檄によって、団員たちの士気は上がった。元々仲間が目の前で殺されたことによって士気は上がっていたが、これはそれ以上だ。

俺は何も出来ないが、密かに十字団を応援していた。

しかし敵のこの男、とてつもなく強い。団員の半分は削られたんじゃないだろうか。それなのに、未だに太刀筋が見えない。本当に剣を使って斬っているのか?と思えるほどだ。

盗賊たちの努力も虚しく、残りはコンスタンティン一人になってしまった。

「テメエ、何モンだ」
あのコンスタンティンでさえ、押され気味で、負けてしまいそうだった。

漆黒髪の男はコンスタンティンより小柄だったが、この時は十字架の大男より大きく見えた。

「俺の名は、マルク。ここへ用があって来た」
男は一息置き、こう続けた。

「十字団の頭、コンスタンティン・ハルーハ、お前をサウス軍大天使に任命する」

コイツがサウスエンドで一番の闇使い、マルクなのか?最強にしては平凡な見た目だな。まあ、俺も人のこと言えないが。

「サウス軍?勝手なこと言ってんじゃねえ!」

そりゃそうだ。目の前で仲間を殺して、それに加え盗賊団を壊滅させられたんだ。身勝手極まりない。

『寝言は死んでから言えやアァァァ!!!!』
コンスタンティンの怒声が響き、同時にマルクに向けて巨大十字架を振りかざした。

ジジジジジ‥‥‥

カンナとアーロンが剣を振りかざしている。カンナの武器をちゃんと見るのは今回が初めてだな。あの武器はレイピアか?地味にお洒落な剣を使ってるんだな。アーロンは剣と盾か。ザ・剣士って感じだ。

はっ!いつの間にか元の世界に戻っていた。コンスタンティンとマルクがどうなったのかが気になるが、あれで終わりらしい。今回は今の戦闘で役に立ちそうな情報はなかったな。

どうすればいい‥‥‥?

そう思っていた時、アーロンの叫び声がした。

『ハジメ君!!!!!』

どうしたんだ?

目の前を見ると、コンスタンティンがこっちに向かって来ていた。

やばい。殺される。

死を覚悟していたが、コンスタンティンは俺を通り過ぎた。

助かったのか?
いや、違う。アイツの狙いは‥‥‥

『キルティ!!!!!』
気付いたら、俺はそう叫んでいた。
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