テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

文字の大きさ
57 / 86
第八章: プレイング・ウィズ・ダークネス

第二話

しおりを挟む
言われた通り、軍の中庭へ向かうと、すでにアルバッドとイリスが居た。二人で何やら話し込んでいるみたいだ。

「よお、待たせたな」
俺が来たことに気付くと、二人の会話はピタッと止まった。どうせまた、ろくでもない事を話してたんだろう。

「よく集合時間が分かったな、ハジメ」
「アンタが帰った後イリスが来て、時間を教えてくれたんだよ」
「さすが私の秘書だ。グッジョブだ、イリス」
「お褒めの言葉、私には勿体ないくらいです」

グッジョブの何が勿体ないんだよ。アルバッドにイリスが勿体ないくらいだ。

「それより、聞いたぞ。カンナに告白したらしいな」

なっ、厄介な奴に伝わってしまった。アーロンが口を滑らせたか、それともノアが面白がって教えたな、これは。

「何で教えてくれなかったんだよ~。一番最初は私に教えるべきだろ~」

誰がお前なんかに教えるか。バレてなかったら、一生教えてなかったくらいだ。ってか、さっきイリスと二人で話してたのは、この事か。あれは、俺をイジるための会議だったのか。

「そんなことは、どうでもいいだろ。ほら、さっさと始めようぜ」
「照れちゃってー。顔が赤いぞー。モテ男ー。イケメンー。若い子好きー。テクノブレイカー。さあ、イリスも言うんだ!」
「オナニスト、ですね」

ちょっと待て。お前ら、最後に付け加えてるの関係ないだろ!イリスに至ってはオナるの大好き人間みたいになっちゃてるし。

「さっき、若い子好きって言ったよな。俺も気になってたんだけどよ、カンナって何才なんだ?」
「うわー、レディの年齢聞くとか、どうかと思うぞ」
「お前が気になること言ったんだろうが!」
「ドイヒーですね」

イリスって本当はこういうの大好きだろ、めちゃくちゃ楽しんでるだろ。コイツらが、このボケとかを計画してたなら、もはや感心の域に入ってるな。しかもネタが本当に人間くさい。いやいや、そんなことより、カンナの年が気になる。

「で、何才なんだよ」
「確か、25だったかな」
「それで合ってると思います」

マジかよ。嬉しい反面、俺で良いのかよって思っちゃうな。初彼女が10才も年下とか、俺結構すごいな。

「では、始めようか」
アルバッドの表情が少し真面目になった。

「今回の目的は、闇に染まりにくい精神を作ることだ。戦場では闇が増加する事柄が日常的に起きる。だが、それで毎回闇を増やしていたら心身ともにボロボロになってしまう。そこでだ、ハジメ。今から君には闇を『ワザと』増やしてもらう」

最初から最後までおかしなことをいうオッサンだな。ワザと闇を増やして取り返しのつかない事になったらどうすんだよ。

「不満か?」
「いや、まあ、ただ意味が分かってないだけだ」
「そうか。今から説明するから気にするな。いいか、昨日も言ったが、君は慣れる必要がある。そのためには、場数を踏むか、直接『闇』を体験して慣れるしかない。だが、今はそこまで時間がない。だから、すぐに効果のある直接『闇』に触れて慣れて貰おうと思う」

コイツの考えることは、一々ぶっ飛んでるな。確かに闇を取り入れるのが一番手っ取り早い方法だろうが、もし俺が闇に飲み込まれたらどうするんだ。

「心配そうな顔をしているな。大丈夫だ、私たちが付いている。それに、万が一の時はイシュも居る。心配せず、どっぷりと闇に浸かってくれ」

もうちょっと言い方を考えろよ。ったく、アルバッドといい、アーロンといい、この兄弟は変人だな。

「よし、じゃあやろうか。まずは、嫌な出来事を想像するんだ。最初は軽いので良い。そうだな、例えば、運転してたら信号待ちばかり、とか。そのような小さなのでいい」

アルバッドの例は微妙だったので、自分で考えることにしよう。俺は目を閉じ、想像した。ちょっと嫌だと思ったことか。

そういえば昔、友達に貸したゲームソフト、まだ返してもらってないな。催促しても、まだ終わってないとか言って、うやむやにされたな。そんでもって、俺は死んじまった。

結局返してもらってねえ!

「ほお、少し増えたな。どんどんレベルを上げていこう。次は『えぇ、マジで?』って思ったことを考えるんだ」

何だそれ。ってか、こんなやり方で良いのかよ。本当に出来てるのか分かんないが、アルバッドの真面目な顔を見ると、こっちもちゃんとやらないといけない、って思ってしまう。うん?コイツのペースに呑まれてんのか、俺は。

そう言えば、俺が友達と出かけに行った時、アイツ何も言わずに自分の彼女を連れて来たな。しかも、俺は放ったらかしにされる始末。彼女を見せびらかしやがって!あの時は『えぇ、マジで』ってなったな。

それに、そいつからゲームソフト返してもらってねえ!

「上がってる、上がってる。その調子だ。では、グンッと上げてこう。次は、ヌメル・ヌメロで起こったことを想像するんだ」

それは、一気にレベル上げ過ぎだろ。友達が彼女連れて来たのとは、格が違うぞ!まあ、やるしかないか。

まだ記憶が新しいから、くっきりと、鮮明に覚えてる。

キルティの胸に空いた四角い穴。コンスタンティンの十字架で潰されたんだろう。あの時、俺がもっと早くに気付いていれば、アイツは死なずに済んだかもしれない。俺にもっと、力があれば‥‥‥

何だか、胸がざわざわしている。鳩尾が熱い。ムカムカする。殺すんだ。あの十字架男を。そのためには、力が必要だ。何でもいい。ただ、強くなりたい。皆んなを守れる力が欲しい。

ああ、段々目の前が暗くなってく。アルバッドもイリスも見えなくなっちまった。

あれ?急に眩しくなったぞ。アルバッドもイリスも見える。俺はいったい、何をしてたんだ。

「ハジメ。気付いたかい?」
「あ、ああ。何があったんだ?」
「君の闇が急激に増えたんだ。イリスのエレメントで回復出来たが、ここまでとはな」
「最初のやつ必要だったか?」
「あれはウォーミングアップだ。あれが無かったら、もっと酷いことになってただろう」
「それに、イリスのエレメントを俺に入れて大丈夫なのかよ」
「イシュ様ほどではありませんが、私もフラット・エレメントを使えますのでご心配なく」

そうだったのか。俺の周りには凄い奴らがいっぱい居るんだな。変態だけど。

「では、これを何回も繰り返してもらう」
「はあ!?さっきの見てただろ?何回もあんな状態になるのはごめんだぜ。イリスも毎回俺のエレメントを回復してたら持たないだろ」
「いえ、エレメントを注入しながら回復出来ますので」

そんなこと出来んのかよ。さすがノース軍に入るだけあるな。変態だけど。

「そうだ。ハジメも選ぶんだ」
「何を?」

アルバッドは一息置き、こう言った。

「闇の克服法だよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...