テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第八章: プレイング・ウィズ・ダークネス

第一話

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胸に空いた四角い穴。
下半身から、徐々に塵になって行く身体。
巨躯の十字架を背負う男。
話しかけてくる、金髪の少年。
そして、黒色に染まる俺の姿。

ハッ!嫌な夢だな。いや、夢じゃない。実際にキルティは死んだし、コンスタンティンのことも覚えてる。そして何より、俺は闇に染まったんだ。

「おはようございます、ハジメさん」
黒髪に頭の天辺にあるアホ毛。それにこの小さな身体。コイツは‥‥‥

「イシュ‥‥‥?」
何でイシュがここにいるんだ?確か俺は今、サウスエンドに居るはずだぞ。

「ここはどこだ?」
「やっぱり覚えてないんですね。ここは軍本部ですよ」
「ってことは‥‥‥」
「ここはノースエンドですよ」

何で俺はノースエンドにいるんだ?カンナは?皆んなは?どうなってんだよ。

「大丈夫ですよ。何も心配いりません」
「何で俺はここに?」
「僕が連れて来ました」

説明になってねえよ。俺はどうして戻って来てるんだよ。あの後、どうなったのかが知りたいんだ。

「私が説明しよう」
アルバッドが入って来た。コイツまで居るってことは、ここは本当にノースエンドなんだろう。

「アルバッド!何で俺はここに!」
「まあ、落ち着け。順を追って説明する」

早くしてくれ。俺はカンナたちの所に戻らないといけないんだ。キルティとも約束したんだ。神の子たちを守るって。

「まず、キルティ君のことは聞いた。残念だが、ずっと下を向いていてはいけない。それに伴って、君は一時的にだが、大量の闇エレメントを増やしたんだ。だから、ここに居るんだよ、ハジメ」

「簡潔過ぎるだろ。じゃあ、今は闇エレメントの方が多いってことなのか?でもそんな感じしないぞ」
「うむ。今は、ほぼ元通りだ。イシュに感謝するんだな。君をここまで運んでくれたんだぞ」
「そうだったのか。すまない、迷惑をかけた」
「いえいえ、僕が出来ることをしたまでですよ」

あの小さなイシュが、とても頼もしくみえる。まあ、実際に頼もしいんだがな。

「それだけじゃなく、エレメント回復もイシュがしてくれたんだぞ。感謝しなさいっ!」

相変わらずなノリだな、アルバッドは。俺を落ち着かせようとふざけてるのか、ただ単にそういう性格なのかは知らないが、ノース軍のリーダーとしてはいかがなものか。

「あれ?自分のエレメントを第三者に入れるのってやんない方が良いんじゃなかったか?」
「通常はそうだ。だが、この世界での医者たちは、フラット・エレメントという物を持っているんだ」
「フラット・エレメント?」
「フラット・エレメントと言うのは、第三者に入れても、影響のないエレメントのことです」

これ、全部イシュに説明させた方がいいんじゃないか?そっちの方が俺も分かりやすいんだが。

「それをイシュが出来ると‥‥‥?」
「ええ、一応医師免許も持ってますよ」
「うそん」

思わず口に出してしまった。何なんだよ、このハイスペックな子供は。あっ、そう言えば俺より年上だったな。

「ではでは、僕の仕事は終わったので、失礼しますね」
「ああ、ご苦労様。自分のエレメントもちゃんと回復するように」
「ありがとう、イシュ」

『はーい』と言いながら、イシュは部屋を出て行った。返事をする声だけを聞くと、普通の子供だな。

「さて、ここからが本題だ。正直、イシュを送り、その場での治療も可能だったんだが、君をノースエンドに連れ戻したのには理由がある」

何のために、そんなことを。もしかして、戦力外通知とかか?

「心配するな、悪いことではない。君を強くするためのことだ」
「心配なんかしてねえよ」
「顔に書いてあるぞ」

俺ってそんなに顔に出るタイプなのか?

「ハジメ、君は何で闇エレメントが増加したか分かってるな?」

頷くと、アルバッドは『よし』と言い、話を続けた。

「仲間の死は、戦場における、一番の闇増加の理由だ。君はそれに対する免疫が無いのと、ここが一番重要だぞ。ハジメ、君のエレメントは量はあるが、内容が薄っぺらいのだ!」

この時、きっと俺の目は飛び出るほど見開いていただろう。それだけアルバッドの言ったことは衝撃的だった。

「どういうことだよ!失礼すぎんだろ!」
「ハハハ、すまんすまん。だが、間違ってはないぞ。君の光エレメントの大部分を占めるのは、死ぬ直前に、気持ちいいことをしたからであって、それに濃密さはない。だから、闇にも染まりやすいんだ」

真面目に『気持ちいいこと』とか言われると恥ずかしいな。それとアルバッドの言うことは間違ってないだろう。俺自身も思ってたことでもあるしな。俺のエレメントには厚みが足りないんだ。

「じゃあ、どうすれば。どうすれば、もっと強くなれるんだ?」
「そう来ると思って、連れ戻したんだ。君には早く現場復帰して貰わないといけないからな」
「そうだ。皆んなはどうしてんだ?」
「次の神の子を保護すべく、向かっているよ。ただこれが難題でね、ちゃんとした場所を把握できていないんだ。ノア君ですら難しいとのことだ」

へえ、あのノアでも分からないのか。ってことは、その神の子は能力を使ってないし、自分が誰なのか気付いてないってことか。

「こっちも分からないなら、サウス軍も同じだ。急いで現場に戻れとは言ったが、時間はある。だから、見違えるほど強くなってから行けばいいよ。あっ、でも早く戻りたいか。愛しのカンナが待ってるからな」

ぷぷぷ、と笑っているアルバッドにグーパンを入れた所で、静かになったアルバッドが、どうやったら強くなれるかを教えてくれた。

「まずは、戦場で起こりうる事象に慣れること。それが仲間の死であれ、敵を殺すことでもだ。かと言って、人間らしい、生き物らしい感情を無くせと言ってる訳ではない。難しく聞こえるだろうが、慣れたら問題ない。仮にも、君はこの世界の勇者様なのだからな」

勇者に『様』を付けるところがワザとらしいが、アルバッドなりに褒めてくれてるんだろう。

「では、明日、初めて特訓した場所で集合だ」

そう言い残し、アルバッドは仕事に戻って行った。

集合時間言ってないじゃねえか、とツッコミつつも、また最初みたいにアルバッドと訓練が出来ることに少し喜んだ。
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