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6”別々でも同じ事
しおりを挟む「これは値段を定価に戻しておいてね。」
「あ、それも葛霧君が朝やってくれていましたよ。」
「はぁぁ、仕事だけはしっかりと出来るのね。」
時間にしてお昼頃、このお店の傾向として開店から昼までがピーク。お昼は皆、ご飯を食べる時間。だからこそこのような業界は暇になってくる。朝方は売り場の方でもお客さんの声が絶えなかったが、今は何も音が聞こえて来ない程静かになっている。
ミーティングも無事に終わり、先日の休んだ分である引き継ぎも終わり、僕達もお昼を回す時間。このお店は会議を行った部屋でお昼を済ましてもよし、外に出向き外食もよし、時間に猶予があれば何をしても良い。大体の職場がそんな感じだと思う。
「すいません、煩いですよね。」
「大丈夫よ。気にしないで。」
そして、一番最初に休憩に入った庄司さんはこの裏部屋でお弁当を広げて、昼休憩を過ごす。プライベートではなく仕事の合間のほんの一休憩、静かに過ごしたいと皆が思うだろう。
(カチャカチャカチャ。)
(モグモグモグ。)
そんな休憩の時間を邪魔する様にパソコンに触れる音を僕が鳴らす。昼頃とゆう事もあり辺りは静か、尚更キーボードを弾く音が鮮明に響き渡る。僕も好きでやっている訳ではない。売り場にはパソコンが無く、裏に入り業務をしなければいけない。気にしなくても良い、そう言ってくれるけど僕が気になる。だって
「‥、‥‥‥。(ジィィィィ)」
「(カチャカチャカチャカチャ)」
後ろ向きでパソコンを触る僕ですら見なくても分かる程僕の事をじっと見つめている。何かあるのか?と、気になるが向こうからは口を開けようとはしない。僕も食事中の人に向かって無駄に話す事は出来ない。
しかし、この空間が息苦しかった。だから、
「あ、あの。シャンプー変えました?」
「え?、」
「あ、」
間違えました。気不味いからと言って何をしても良い訳ではない。女性に向かってシャンプー変えました?なんてこの現代ではセクハラもセクハラ。
「急にどうしたの?」
「あ、いや。その。すごく良い匂いがしてですね。‥いや、靴屋にしては良い匂い過ぎるなぁーと思いまして。必然的に庄司さんの匂いなのかなぁーと。いや、ですが庄司さんが良い匂いと言う訳では無くてですね。」
「喋り過ぎ喋り過ぎ。」
と、まぁ思考がぐちゃぐちゃになってしまいました。空気が気不味い、その重さに耐えることが出来なくなり滑らした言葉。帰ってこの休憩室にはさらに重たい空間を齎しました。
「‥‥‥。」
「‥‥‥。(チラッ)‥‥‥(チラッ)。」
張り詰めた空気、しっかりと業務をこなしている様に見えて、手は動いて居ない。手汗は尋常では無く後ろの席で休憩している庄司さんはあれから口を開けない。やってしまったと、嫌われてしまったと。
「‥‥、大河くん。表に出る時はカラコン外しなよ。」
「え?。あ、‥本当だ。外しておきます!すいません!」
「良いの良いの。」
先ほどから僕のことを見ていたのはこの事だったみたい。物珍しそうにガン見してくるのは、僕の蒼色の瞳だった。今日は早出でカラコンを付けるのを忘れていたよ。気をつけないと。
「‥‥、大河君ってモテてたでしょう?」
「‥急にどしたんですか?」
「女の子の変化、直ぐに気付ける人なんだもの。」
「いやいや、まぐれですよまぐれ。」
僕は一人より感覚が敏感だ。嗅覚も聴覚も、そして視覚も。羨ましく思われる事も多かったけど、災難の方が多かった。今起きてしまったシャンプー事件も今日に始まった事では無い。似た様な惨事を何度も犯し、気持ち悪がられてきた。クズの怒鳴り声もよく聞こえるし、困ることばかり。
「‥まぐれでも嬉しかったわよ。」
「‥‥‥え、」
「気付いてても、言わない男ばっかり。女の子なんて変化が有れば、言って欲しいのよ。面倒くさい生き物でしょ?」
「‥そうなんですか‥‥今までは‥気持ち悪い‥そう言われて来ましたから‥ハハハ。」
「‥‥でも、まぁ限定的なんだけどね。」
「?。」
庄司 早苗さん。彼女との出会いは今年の夏頃。大型店舗からこの小さな店舗に異動して来たのだ。大きく繁盛した店から田舎町にやってくると言う事は、売り上げ成績が悪いか問題児か、その他諸々悪い事ばかりを想像してしまう。
しかし、彼女の成績はピカイチ。業績No.1の店長と肩を張れるぐらい優秀な人。商品への理解は他の追随を許さぬ程、整体学や医学的な分野まで幅広い知識を持っている。
それは即ち、この世界において大きな武器となる。物を売る以上、ある程度の知識は分野事に必要である。だがそれだけでは物は売れず、お客様への購買欲には繋がらない。
ではどうするのか?。それは雑学である。簡単に言えば余計な語り。普通ならば時間だけが過ぎる様な行動。しかし彼女は違う。聞いたお客様が興味の湧く様な雑学を的確に当てて、売りたい商品の興味を沸かせる。
彼女の接客を見ていると、恐ろしさが勝ってしまう程、彼女が当たったお客様は、皆お店の袋を持ってお店を出て行く。
問題児でも何でもない。会社に対して誠意を尽くし懸命に働く人間。‥‥だからである。
「‥‥。いらない事ばかり言ってる子達。気付いて欲しい事は何も言わないくせに‥ね。」
「‥そうですね。それなら僕の方が大分マシですね。」
真面目すぎる。社会においてこれだけの信頼出来る人間はいるだろうか。だらけていてもやる時はやる、そんな人よりもいつだって真面目な人間に仕事を任せたい。任せる側も安心度が違う。
「‥、仕事も多少しかしない。それなのに口だけは動かして。真面目に働いている人間に指を刺して‥‥」
「‥‥‥。此処には、そんな悪者は居ませんよ。」
何故彼女ばかりに仕事を任せるのですか?、もしかしてあの主任と出来ているのかも、よく二人で楽しく会話しているもんね。てか、硬すぎるよね。もっと気楽に仕事したら良いのに。あぁ言う人偶にいるよね、自分が上に立って指示してくる人。
鬱陶しいよね。
「‥‥。僕は、いつだって庄司さんの味方です!。」
「‥‥。ありがと。優しいね。」
此処は学校では無い。社会だ。群れて何がしたいのか、そう思ってしまう。孤立した物が生き延びる様になっている。
僕らの生きる世界と然程変わらないのだ。
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