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5”同じ理由
しおりを挟む平日は、車通りも少ない。お昼は車でお仕事をしている人達の休憩場所となるこの場所。此処は、田舎らしい小さなショッピングモール。一階には食品や日常品を扱うスーパーマーケットがあり、ホームセンターがある。
二階に進めば、飲食店に電気屋に服屋に、学生の庭ゲームセンターまで備わっている。此処はフラワースポットと言う小さな田舎町のショッピングモール、以外と放課後の学生達には憩いの場所となり「フラスポ」なんて言われている。
そんなフラスポの2階に僕の職場がある。
「ですから!!そんな高い靴を置いたって売れませんって!」
「仕方ないでしょ!!本部がこの靴を売れって煩いの!!」
「‥‥‥。あの‥‥」
僕が働く職場は、大手だ。この世界で名前を知らない方が少ない様な会社。ブラックなんて言葉が少しでも出れば大変な事になる様な大きさをしている。このご時世、パワハラやセクハラが蔓延る現代、その様な発言や行動には敏感なのか、この会社にはブラック要素はない。しかし
「大河君どう思う?。」
「え‥‥いや、僕は‥‥」
「大河さんが困っているでしょ!」
「いや‥‥困っては‥」
「そもそもアルバイト風情が口出ししてこないでよ!」
「はあ!?わ’た’し’は!このお店の事を思って—
売り場の裏側で、長机を挟んでガミガミと言っている2人。大きな丸メガネをかけて長い髪を下ろしブーツを振り回すのがこのお店の副店長 庄司 早苗。そして自分の餌を取られそうになる犬の様に牙を剥き出しに睨むのは、アルバイトの麻羽 紫蘭。
僕はこの職場の社員さん、と言う立場ではあるがどちらも歴は上、収集がつかない状況に止める事が出来ず僕はマジックボードの前で資料を開き棒立ちとなっている。
席は空いているのだから座ったら良いのではないかと、思われてしまう。しかし空いている席は二つ。それも2人が座る方角に一つずつ、この場合どちらかに座ってしまった場合、「大河さんはそっちに味方するんですね。」そう言われてしまうので、僕はこうして2人の喧嘩を眺めている。
この職場にやって来て早2年が経とうとしている今日この頃。最初はアルバイトで応募して面接に合格。色々とあり精神が壊れていた時期だから、責任感が少なく時間にもあまり縛りがないアルバイトと言う立場で働きながら、やりたい事でも探そう。そう思っていました。
「あぁ!もう!じゃあ今日は一回も表出ません!」
「何を言っているの!?賃金が発生しているのだからしっかり働きなさい!!」
「あぁ!!パワハラダァ!!法廷で!お会いしましょう。」
「あのね‥私はごく当たり前の事を言っているの‥これだから餓鬼は‥‥」
「ハァ?餓鬼‥、ふん!おばさんから見たら私は餓鬼でしょうね。」
「おば‥さん?」
「おばさんにおばさんって言って何が悪いんですか?事実でしょう。事実。」
ブラック企業で培った根性と仕事に対する姿勢が評価されてしまう。そして、人手不足も相まって断る事が出来ず、こうして正社員としてこのフラスポの2階にある靴屋さんで働いている。
レディースミーティング、女性靴への知識を高めこの店舗はどのターゲットに絞るかを検討する会議。この世界にも肌寒い風がチラリと顔を見せ、陽が沈むのも早くなって来た。周りを見渡せばすっかり、秋の紅葉やら、〇〇の秋なんて張り紙が至る所に貼られている。
それに便乗して、ウチの店舗でも冬物の靴を大々的な出そう。と、案があがったのだ。
お店はとっくの昔に開店している。会議があると言う事なので僕は早めに出勤。シャッターを開けるまで一時時間程度の猶予があり、ミーティングが始まった。田舎町の靴屋さんだ、考える事も取り組みも少ない。ならば、少し早く終わるだろうな。と甘い考えを抱いていました。
「おばさんじゃないわよ!!まだ28歳!!分かる28歳!!」
「ふん!28歳なんてもうおばさんじゃないですか。ねぇ?大河さん?」
「え?、僕に言われても困るよ‥‥‥。」
女性が大半を占める職場。男なんてちっぽけな生き物では自由に息をする事が出来ない。当初の目的を忘れて双方で喧嘩をされて仕舞えば、僕は手も足も出ない。加えて何方かの方を持てば、尚更である。
「ほら、黙っているって事は、そう言う事ですよ。受け止めてください。庄司さん。」
「‥‥、大河君は其方に作って訳ね?‥‥(ゴォゴォゴォゴォ)」
「いや、だから‥‥」
人から出ては行けない音が聞こえる。と言うよりも効果音が背中から出ている。
つくづく思うよ。僕らが生きる世界よりも、女性の喧嘩が最も恐ろしい。って。
「何か言ったらどうなの?、大河君。」
「いや、落ち着きましょう。ねぇ?」
「怖がってるじゃないですか?、怖い怖い」
「紫蘭さんも煽らないで‥‥」
「貴方達が‥そう言うのなら‥‥‥」
おい。
「へ?」
「え?」
「ホォ。」
表、即ち売り場では開店から今までワンオペで仕事をこなしていた葛霧君が、カーテンをあげてちょこっと顔を出す。重い声色に、冷たい眼差し、鬼の形相に喧嘩をしていた2人は、黙ってしまう。
「いつまでやってるんですか。表、誰か来てください。」
「あ、ごめんね葛霧君。ほら、紫蘭さん行って上げて、」
「なんで私なんですか!!」
「‥‥‥チィ。」
社会人としてどうなのか、表に出ろと2人はまた口喧嘩を始める。葛霧君が来てくれても、喧嘩のお題が変わっただけで根本的な物は何も変わっていない。
「大体—-」
「副店長が—-」
ドン!!
「ー!?、」
「!??。」
葛霧の隣にあったロッカーは、煙が上がり減り込んでいる。目つきの色は更に冷たく残酷になり、首を鳴らす。騒がしくなっていたこの会議に破裂した音が一気に広がると、2人は背筋を伸ばし黙ってしまう。
「‥チィ。鬱陶しなぁ、喧嘩なら仕事が終わってからしてくれ‥‥どっちでも良いからさっさと出てこいよ。しばくぞ。」
「はい!!」
目を見開き、汗を流し。紫蘭さんはそそくさと名札をつけて表に出て行った。その光景を見て葛霧君は、頭を掻きながら、溜め息を吐く。そして、
「‥チィ、」
「え!?。どうして?」
お得意の舌打ちを決めて、座る庄司さんの事を睨むと彼もまた裏部屋から出て行った。残された僕と庄司さん、キョトンとしたまま睨まれた反動か指で突いても動かない。それを見て僕はクスッと笑う。
「‥‥はぁぁぁぁー。どうにかならないのあの子。」
「‥葛霧君ですか?。如何にもならないですよ。」
「ほんと、悪目立ち過ぎなのよ。仕事はしっかりとするし売り上げも取ってくれるんだけど、接客態度がねぇ。プライベートでもあんな感じなの?」
「えぇ、裏表がない子ですから。」
「よくあの感じで面接に合格したわね。」
「そうですね。器の広い店長ですよ。」
この世界にやって来て、着いてくる様に葛霧君も面接にやって来た。如何足掻いても、接客態度が全ての世界。彼の様な性格の人間はどれを取っても該当なんてしない。確かに、顔立ちは整っている。しかし人を睨むのが常時な訳で誰も彼の素顔を知らない。
いざ、面接が始まる時、店長と何故か僕も隣に立って話を聞いていた。葛霧君も理不尽な人間ではない、喧嘩を売る真似や無視などしない。顔色を変えず、言われた事に「はい。」と返事をするだけ、正直受け答えが出来ているのかすら怪しかったが、トントン拍子で面接は進んでいった。
このお店の店長も大分変わり者だ。陽気で人当たりも良く経験が豊富。実績は社内でもトップを貼る程の人物。結婚もしていて、男前で何も言う事は無いのだが、問題児ばかりを雇う責任者としても有名。
ここに来るスタッフが大体そうだ。溜め息を吐く庄司さんも、喧嘩を吹っかけていた紫蘭さんも、僕も、今日は休みのアルバイトの子も、葛霧君も。
面接基準を聞いた事があったんだけど、「常識人には興味がないんだ。」しか言わない。葛霧君も面接が終わった直後に即合格。次回の日程も決め終わり葛霧君が帰った後、物凄いスピードでキーボードを打つ店長に聞いてみた。
「‥葛霧君も常識人ではなかったんですか?」
「ん?。そうだねぇ。どうだろう、場所によりけりじゃないかな?ふふ、そもそも私は初対面だし分からないよ。親友の大河君の方が詳しいでしょ?」
「‥親友‥‥‥どうですかね。」
「??。まぁ良いや。君はウチの社員さんだし、採用理由は伝えておかないとね。彼はねぇ‥‥、」
理由を聞いたが、訳は全く分からず。ただ、働く僕の知り合いだからと贔屓をした訳ではないそれだけは確かだった。色々と話してくれていたが、キーポードを弾く音と混じり合い気が逸れてしまうと大事な所を聞きそびれてしまった。
「ふぅ、これで良し。」
「何か仕事でも?。」
「いや、有給の申請でね。また、旅行行くから頼んだよ!」
「えぇ、」
仕事はしっかりとこなしてくれる。面倒くさい仕事を押し付ける様な真似もしない。怒っている所すら見た事もない。冷静にミスを相手に伝えて改善させてゆく。上司として完璧な存在。でも、一つだけ不満があるとするならば、
「また旅行ですか!?。」
「うん!今回は大分長くなりそうなんだ。だからね、ほら。」
「3ヶ月!?」
社会人としての範疇を通り越してしまう程の自由人だと言う事。
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