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プロローグ お花しの種
7種’蒲公英
しおりを挟むこの真っ暗闇な空間の中で一つの電球が生命を灯すその光に釣られる様に虫たちはそこに集まり宴会を開いているその城下では1人の老人がギシギシと唸りながら鳴く椅子に腰を当てて机に肘を置き透明な花瓶に囚われているその黄色い花をそっと撫でると。
「2人とも遅いわねぇ~」
机の下では、この家に住み着いているムカデが落ち着きがない様にその長い体をウネウネと動かしている。虫の耐性がない人間が見ると失神してしまうほど大きなムカデ、彼此翔がこの家に戻って来てから今までこの場所を住み家にし、ひとつ屋根の下で暮らしている。その長い体を持つムカデが先ほどまで暴れる体をピタッと止める。何か音が聞こえてくる。耳がついているか虫の本能なのか知らないがそのムカデもその音がする方に触覚を向けると。
「アンタは犬かいな。」
その音は次第に大きくなると入り口の方で扉を開ける音がした。
「ばぁちゃん!!いきてるか?」
「生きてるに決まってるだろうが!もう少し静かにできんのか、」
この2人の掛け合いはいつもの挨拶の様なもの翔が我が家に帰ってくる時ただいまではなく生きてるか?と聞くのがこの家にとっての詩きたりなのだ。
「あれ?敦紫は?」
「アンタを探しにいくって出ていったきりだよ。まったく何処に寄り道をしてたんだい」
敦紫は帰って来てないのか、確かに俺は先に帰ってくれと言ったはずだが何処に行ったんだ?今やるべき事をやってから探しに行こう‥とゆうか
「暗いなこの家はいつものことながら」
ほっとけ、と呟きながら翔の祖母八汐はこちらを睨んだままだ。少し怒っているそれもそうだろうこんな時間まで連絡も音沙汰無しで急に帰って来てはこの家にケチをつける人間を誰が好きになれる?気持ちを切り替えて深呼吸すると彼は
「俺、華道家になるからな!」
「急に何をゆうかと思えばそんな事かい好きにすればいいだろ戯けが、それに‥‥そんな事をする為だけに帰って来たわけじゃないだろ。」
翔は頷くとそのまま居間を抜け勢いよく暖簾を上げてそのままのスピードで階段を2段飛ばして駆け上がる。うちのばぁちゃんにはこの心が見透かされているみたいだ。今からやる事を決してそんな事をやったって救えない救えるはずが無いでも行動を起こしてみようと思う。翔はそのまま自分の部屋に入るとベットの下に潜る花札が入ってある箱を引きずり出すその箱を開けるとそこに入っているのは何かの鍵の様なものが出てくる。鍵を手に取りタンスを開けるとそこには金庫がありその鍵でその金庫をゆっくり開けるとこれまで貯めていた。お金が顔を出す。
「よし!」
彼はその紙束を握りしめ部屋を出ようとすると、その体を引っ張り一度止まる。
「んーー」
何かを悩んでいる様子だ。このために溜まったお金を全て使うのもいいがそれでは煙草が買えなくなる。そんな理由で煙草を買ってくれなんて恥ずかしい事言えない。とゆう事なので少し残そう少しだけ。
「一万ぐらい残すか、いや結朱華に買うプレゼントの金も残さないとな、それに何か必要になる事があるかもしれない。」
数分彼は考えている。必要になる事?今まさに必要じゃないか何を言っているんだ。先生が言っていた通り馬鹿じゃないか俺は。そして彼は有り金全てではなく十万だけ手元に残すことにした。実に人間らしい。その残りをポケットに入れると祖父の部屋に急いで移動する。もうこの世にいなくなったのは数年前だとゆうのにかすかに煙草の匂いがする。壁を見ると昔は純白なものであったはずの壁は見るも無惨にヤニ色になっている。そんな部屋を走り回り引き出しに入ってある少し古い封筒を手に取るそしてそのポケットに入ってある大金を入れると、足元の方で何かが走る様な音がした。下に目を向けると、
「リリー!!」
翔の目線の先には可愛らしげな名前とはかけ離れている一尺ほどある大きなムカデがカサカサと回っている。そうだったお前もこの部屋にいるんだったな、虫に名前をつけてそして会話をする人間がこの世界に何人いるのやら、疑問でしかないが彼はムカデの頭を撫でるとこの部屋を後にした。
「もう少し静かに階段を降りれんのか貴様わ!!」
彼はその声が聞こえているのにも関わらず反撃する様に残り七、八段降りるはずの階段を無視して飛び降りる。着地すると同時に鈍器の様な鈍い音が部屋中を掻き巡る
「コッラァァァァ」
やはり騒がしいこの家は。翔は笑いながら八汐に 行って来ます、と言葉告げて閉め忘れていた玄関の扉を潜り抜け勢いよく閉める。この家に翔が居なくなってから八汐は、
「まったく、次から次へと忙しない子だねぇ気をつけて行くんだよ。」
もうこの家には誰も居ないがその老人は返事をしてみる。この部屋は以前と暗いまんまだ一つの電球の光が切れてしまえば等々前は見えなくなってしまうのに、微量ながら翔が帰って来た途端明るくなったのだ。明るく。
翔はもう一度病院に戻ってくると入り口まで着くのだが先程は鍵が掛かっていない自動ドアにはしっかり施錠されていてビクともしない。
「先生閉めたのかよ。裏口は空いてるかな」
彼はそう言いと、体をぐるっと回し裏口のある方へと足を進める最中やはり花に目が入ってしまうそれに見惚れながらも足を止める事なく動かすのだが、その庭園の真ん中にある大きな樹木の下にあるベンチに人影の様なものが見えるではないか翔は目を凝らして見てみるとそこには顔を俯かせて座り込んでいる敦紫の姿がそこにはある。人影の正体を知ると、
「んー、病院には来れた事だし先に敦紫を捕まえるか。」
彼は柵を飛び越え地に咲いてある花を華麗に避けベンチの近くまで最短距離でやって来た。
「敦紫!なにしてんだ?風邪引くぞ。」
「ん?翔か、どうやって来たんだい。」
「柵を飛び越えて花を避けて来たんだよ。」
「何を言っているだい?もう少しマシな嘘をつけないのか君は」
敦紫はこの会話の最中も顔は俯いたままである。翔自身も気づいているのだどうして敦紫がこうなってしまったかなど事の元凶は全て彼自身なのだから、それがわからないほど馬鹿ではない。翔は敦紫が座る黄色のベンチを横に座ると、その魂が抜けた様な少しの活力も感じない敦紫が話しかけてくる。「何処に行ってたんだい?」と疑問をかけてくるが変わらず下を向いたままである。
「どこって、零花の病室に行って、家に戻って今ここさ、」
何時もなら。ほんと君は騒がしいね。なんて似た言葉を吐いては笑ってくれているのだが、翔自身が発した言葉に返答はなかった。ここで謝ろかと思うがまだ俺にはやらなくてはいけない事があるのだ。ただこの不穏な空気の中でまた何も言わず飛び出せば癒せるはずの傷も塞がらないだろうここは少し
「俺、行かなくちゃいけないところがあるからさ、その‥‥なんだ‥ごめんな。」
「‥‥‥‥‥‥‥何故僕に謝るんだい。」
敦紫は顔を上げる。
「何故って?敦紫には色々迷惑かけちまったしな。それに俺は今から零花の所に行ってこのお金をわたしにいくんだ。」
彼はそう言うとポケットから分厚い封筒を出しその中に入ってあるあまり綺麗とは言い難い紙束をヒラヒラと敦紫に見せつける。
君はほんと馬鹿だね。そう答え深呼吸するその溜まりに溜まった感情が爆発しない様にそっと風船の空気を抜く様に弾け飛んでしまわぬ様に、敦紫は答える。
「僕に謝罪なんかいらない。それにそのお金で何をするつもりなんだい。意味がわからないよ」
翔はこれまでの出来事を覚えてる範囲で敦紫に話した。零花の病院はこの世界では治せないだが外の世界には治せるかも知れない医者がいる事。それに必要な資金の事。その全てを話して尚。
「尚更わからないよ。どうして君がここまでするんだ。結朱華が君の住むこの場所に引っ越してから彼女の所へは顔を出さない癖してたった2日、その数日で出会った女性の為に何でそこまでする必要があるんだ?」
そうだよな。結朱華が引っ越して来てから随分と長い時間が経ったはずそれなのに一度だけ会ってからは会えていないのだ。会えないのだ恐くてもう二度とあんな顔をされるのが怖いのだ。誰でもそうだろう。心を許す友人でも家族でもあんな顔をされると心身が壊れてしまう。その訳を敦紫に話さない自分に非があるのだが。ただ二日‥‥二日か、
彼自身ここで反撃をするのは場違いにも程があるのだが抑えられない感情が込み上げて来てしまう。じゃあ、と翔は続ける。
大切なものその価値を時間の量で測れる物差しがこの世にあるなら譲ってくれないか
「そんな物この世にあるわけないよね。ごめん。少し言い過ぎたみたいだ。」
彼たちはその似合わない顔立ちのままそして風も一切の動きを見せない、花の存在する忘れてここが庭園だと気づくのには少しばかり時間が掛かった。それでも二人は無言が続くままこの広い庭園を眺めている、彼が言った言葉に反撃する気も起きないのか敦紫は空を見上げてなんと ふふふ、と笑い出したではないかそれに釣られる様に翔も口を開けて笑い出したのだ。
結局二人が何故笑ったのか、敦紫が何故怒っているのかなんて知る由もなかった知ったところで今更どうする事もできない。人間の喧嘩などこの程度のものなのだ。順を追って後をしっかり見つめ直せば何故そんな事で?となってしまう生き物なのだ。
「なぁ敦紫。」
緊張の糸が切れたのか翔はいつも通りの口ぶりで名を呼んでみる。
「どうしたんだい?」
「明日、結朱華のプレゼント買いに行こうと思うんだが。一緒に行くか?」
「勿論。今度は忘れないでね。」
「あぁ。頑張るよ。」
流れる景色の中で二人は迷走していた。会話とゆうのは感情とゆうのは実に複雑で面倒くさい、その会話の終着点など等に見過ごしているのにその答えが合致するなど万に一つもない。そんな奇跡など存在しない。ゴールなど何処にあるかも知れず個々に自らの心情をぶつけてはラチがあかない。たがら一歩後ろへもう一歩後ろへそうやって互いに道を譲っては突っぱねてはを繰り返し気持ちは交差してしまう、始まりはいつもそうだ。その言葉が言えたら全てが変わっていたかも知れないのに、言えるはずのタイミングもあったとゆうのにそれを見計らい見定めてはまた今度にしよまた今度にしようとする。翔は面倒く下がらずにその場その場でしっかりと想いを伝えておけばよかった。敦紫は壊れるのを恐れ我慢ばかりしている。友であるのなら少しはこぼしても良かったのではないかと、その綺麗とは言い難い乱雑に編まれた友情は少しづつ解けてしまう。その後悔を今更考えてしまうなど笑止。だからこうやって今までのことを一度忘れてリセットするのさ、その方が簡単だろ?
先程まで音沙汰なしだった自然たちも何もなかった事の様にまた動き出している。風は吹き花は揺られやっとここが庭園だと気づく、この場所で長居するとうるさい人間がまたやってくるのでこの空間から抜ける事にした。
病院館内の入り口から碧の門までがつながるコンクリートに舗装された道をゆっくりと歩いているその中で二人は何かを話している。
「君はさっき本当に花を避けてあのベンチまで来たのかい?」
「だからそう言ってるだろう。」
二人は敷地内から出る門に歩みを進めながら雑談がてら会話を嗜む。
「花が避けてくれたのかな?」
「何を言ってんだよ。そんなのあるわけないだろ。俺が避けたんだよ。おれが!」
翔はそう喋りながら前を向いて歩いているそしてもう片方の男はそっと後ろにある庭園に目を向ける。その場には人の足が入れる様な隙など存在しないそれほどまでに埋め尽くされた花たちそれに‥‥
「翔くんーーー!!」
後ろを振り向くと何やら人影の様なものが走ってくる。凄く慌てた様子でこちらに走ってくるではないか。
「ん?先生?騒がしい人だな全く。」
息を上げて膝に手を乗せる白衣を着て眼鏡がずれている男。
「君には‥ハァハァ‥‥絶対ゆわれたくないセリフだ。君、私の煙草持ってるでしょ」
「あ、」
彼はポケットに手を突っ込むとそこからくしゃくしゃの煙草とライターを取り出し、蛍に渡すと何かを思い出す様に目を見開きもう片方のポケットから古びた封筒を出しては投げつける様に渡す。蛍は
「これは?」
「金。零花の医療費の足しにしてくれ。」
何故これを私に?と蛍はその頭を傾げていると、
「俺が渡したって受け取ってくれそうにないからな、あんたから渡してくれ。」
こんな物では多額の医療費に比べれば雀の涙程度だろう。それでもいい自分が決めた使い道がこれだったのだ。この道をわざわざ作ったわけではないその道しか見えなかったからこうするのだ。魔法使いでもなければ医者でもない帰って邪魔なのかも知れない。ただの独りよがりなのかも知れないそれでも無力な自分にできる精一杯の証明なのだ。そして彼女にとって少しの希望に‥
蛍は、何かを告げようとするも彼の瞳は至って真剣ここで こんな物では、などと言うのは空気が読めないおっさんになってしまうのだろう。
「分かったよ。これは渡しておくね。君の名前はあげていいのかな?」
「いいよ。そんな事言わなくても‥後これも」
これは?と聞く蛍、翔に手渡された白い花は、茎だけが長く伸びてその花弁は生毛の様な細かい綿毛が密生している。そんな花の名はガーベラ、庭園の真ん中にあるベンチの周りに咲いてあった花、
「花には一つ一つ意味があるんだ。その言葉を思いを伝えれない臆病者は、こうやって花のメッセージとともに渡すのさ、」
ウチの老耄が言っていた事だ。
彼はそう言いと敷地内から出ていってしまっう何も言わず敦紫もついていき、取り残された蛍は、手に持ってある封筒と花を眺めている。
その花の名はガーベラ多彩な色がある花だ。その花には色別でメッセージが違ってくる。白いガーベラの花言葉は、
希望。
日が刺し登り清く透明な空気に、上を見上げればその手を入れて仕舞えば染まる様な空の青さ、この道は先日一度訪れた場所である。横を見ると川のせせらぎが聞こえてくる。その鏡の様な川に反対に映るのは、白い軽トラックその中には二人の青年の姿がある。
「今回はしっかり憶えてだんだね。」
「当たり前だろ。」
それに、忘れる事も忘れようとする事も飽きてしまったからな、前だけを向いていこうと思う。それに昨日は色々とあり過ぎて今もまだ余り目が覚めていない。しっかり安全運転で行かなくて、前とは違い結朱華が働いている花屋には彼女はいない、入院してるため近くの花屋に顔を出せるのだ。前とは少し道が違いここからでも後5分ぐらいかこの横にある川が合流する先は大きな海があり少し奥を見るとその海を架けるように大きな橋がある。そこを渡り町に入れば結朱華の働いてある花屋に着くとゆうわけだ。
「とゆうかなんで花なんだよ。アイツは花屋で働いているから、見飽きているだろうに。」
「ん?いいんだよ。これで」
結朱華の誕生日プレゼントが何故花なのかは、結局分からなかった。まぁどちらにせよアイツのことを一番知ってる敦紫が言うのだから心配はないだろう。花を選んでお互いに買ったものを俺が生けて作った物を渡すらしい、そんなのでいいのかよ。ゆっくりといつ壊れるか分からない車がいつも通りの音を鳴らして走っている。それよりも、
「こんな花咲いてたか?」
いつも通る道だ。ウチのばぁちゃんとよく買い出しやら配達やらでこの道の風景はしっかり記憶しているのだ。自然に関するのもは何故か忘れない都合のいい脳みそをしてる物だ。それだとゆうのにここでは余り見ることがない花が咲いてる。開花時期としてはごく普通のことなのだが少し疑問を抱えているが、そのまま車を動かす事に、
「これ、たんぽぽだよね!」
敦紫は元気よく窓を開け指を刺して質問して来る。そして翔は運転席の窓を下げるとそこには不思議な光景が広がっていた。左側、すなわち敦紫が座ってる位置であるその位置は川が流れてその堤防には黄色いたんぽぽが連ねており。もう片方には、黄色ではなく綿帽子を被った花たちが風に揺られてその綿を飛ばしている。
「なんだよ。これ‥‥」
翔は唖然としているが進む事を辞めないプレゼントを買った後もう一度訪れることにしよう。そのまま橋付近まで到着するやはり橋だけあって車通りは少し多めである。この田舎道からこのT字路の行動に合流するときはいつもヒヤヒヤする。しっかりと左右確認して入り込みそのまま真っ直ぐ走って橋を渡っている翔は胸ポケットから煙草を一本取り出し火をつける瞬間前方にいた車が蛇行運転を繰り出した。
「なんだ!?アイツ?」
翔は車のハンドルを切り左車線によるとその車を追い抜こうとアクセルを踏む。だが狙ってる様にその車はこちらに車を寄せてくるのだ。危ないやつだどんな顔してるんだ。彼はその右にいる車の運転手が気になり窓越しから車内を覗き込んでみる。それが間違いだったのだ。
「翔!前!」
前を見ると、前方にいる荷台に大量の荷物を乗せた平ボディのトラックがスリップし横回りにぐるぐる回っているではないか、ブレーキを踏み切るも間に合わない。スピードを上げに上げた翔の乗る車は、横回りする車に衝突してしまう。その衝撃で二人の意識は途絶えてしまった。
何かのノックする音が聞こえる。
目を開けると白い風船の様なものが顔全体を覆っていた。
「‥‥‥生きてるのか?」
頭がジンジンしていたい、触ろうにも運転席は先ほどの衝突でぐちゃぐちゃになりフロントガラスも木っ端微塵になって割れている。意識がなくなってどれぐらい経ったんだ?目も余りしっかり見えないぼやけている状態だ、でもさっきからノックする音が聞こえてくる。横を見るに、
「にぃちゃん大丈夫か?」
その中年の男性は慌てる様にドアを叩いている。そちらに目を向けると、待ってろよ。と口ずさみへしゃげているドアをこじ開けて翔を引っ張り出した。意識朦朧とする中、サイレンの音が聞こえてくる彼は力を振り絞りその男性に肩を借りて立つと。そこに惨劇が広がっていた。
「嘘だろ‥‥‥!‥敦紫は!?」
もう一度運転席を覗き込むとそこには足が挟まって抜け出せないでいる敦紫がそこにはいた。
「敦紫!手を出せ!!」
翔は手を上すも、敦紫は首を振る。その車のボンネットでは火の手が上がり、ガソリンに引火して仕舞えばここ一帯が爆発してしまう。事態は一刻の猶予もないそんな中何故?敦紫は首を振るのだ、
「僕の事はほっといてこの場から離れんるだ!!」
彼が叫ぶそして足元を見ると先ほど横回りしていた車の荷台に乗っていた木の角材がフロントガラスを突き破って敦紫の太ももを貫く様に刺さっている。
「諦めるな!俺がその木を抜いてやる!おっちゃん手伝ってくれ!」
「君!危ないぞ!離れるんだ!」
何を言っているんだ。今ここで助けれかも知れない命を見捨てて離れろだと。火が上がっているからなんだ。翔はボンネットに乗り火が燃え上がるのを背に木材を手に掴み引っ張ろうとするもびくともしない。着ていた服に引火する
「もういいよ翔!!君も巻き添いになる必要なんてないんだ!!」
「だまれ!!!」
服全体に火が包み込まれる。こんな物大した事ない。熱くて痛いがここで敦紫を失う方がよっぽどだ。その光景を見てか男性は
「あぁぁ!クソ!!生きてたら飯ぐらい奢れよ全く!」
その男性は火の手が上がる車に近づき、
「敦紫くんと言ったか諦めるなぁ、その若さで死んでも、死ぬに死ねんぞ!!手を掴め!」
腹わ出て手入れされていないその髪の毛てっぺんは光り輝いているお世辞にもかっこいいとは言い難い格好の男性だったが今ではその姿も勇者にすら見える。この世は捨てたもんじゃない。
翔は深呼吸し、もう一度力を振り絞りその木の角材を引っ張り抜こうとするもやはり一ミリも動かない。
「クソ‥‥クソクソクソクソクソクソ!!!」
何故だ。何故いつもなんの役にも立たないのだ今ここで親友が死にかけているのだぞ、それなのに俺は火を消す事もできないこの堂々と刺さる木の柱のような物も抜けない。俺はなんて無力なんだ。何度俺に負けたってへこたれない諦めの悪い敦紫もここではあっさり死を受け入れているのかニコッと笑う。それが鬱陶しかった。なんだよその笑顔はお前はいいのかも知れないが取り残された身にもなれってもんだ。
どうする力尽くではラチが開かない、何かいい方法はないのか、何か‥‥‥待てよ俺がいつも稽古をしていた道場には力尽くでは開かない扉があったそれと同じ様にすれば抜けるのではないか?彼はそう思いその木をもう一度触り呼吸をする。一か八かだこれでどうにもならない時は‥‥そんな事考えるのは後にしろ!彼は目を閉じ少しの間、瞑想する。
「何してんだ!兄ちゃん!もう無理だそ!!」
何か声がする‥‥今はどうでもいいこの刺さってある木の力の流れを感じろ、感じるんだいつものように‥‥‥その瞑想の中何かが俺の肩をそっと触る感覚がした。あれ?一気にこの一帯が静かになった先程まで聞こえきた声も消防車が近づいてくるサイレンの音も今は聞こえない
翔は目を開けると触れていた木がギシっと音を立て出すと次第にその木材は形を変えギシギシと鳴りながらその木材は敦紫の太ももに刺さる部分を引っ込めていく。その木が生きているかの様に‥‥
「なんだよ!これは!一体全体何が起きてんだよ!?」
男性が叫ぶのも無理はないその目の前に映る光景は、可笑しいのだ決して現実的ではない。
その声を無視する様に翔が触れる木材は下から形を瞬く間に変え根っこの様な物でボンネットに上がる火を包み汲む様に根を張るとその火を鎮火させていく。燃えている翔の背中をまた別の方からツタがやってきては身体を包み込む様に覆う。すぐさま拘束から解き放たれると先ほどまで燃えていた服や背中の火傷の後は、何も残っていなかった。
「おいおい!あんた一体何なんだ!?」
男性は腰を抜かしてしまうも、大人としての行動を真っ当する。早く掴まれと男性は叫ぶと敦紫も上を見上げながらその男の手を掴む。
「ハァハァハァ」
この男性には感謝しなければならない。そう思うとフラフラの体で立ち上がりその尻餅を付いている男性に手を差し伸べる。
「ありがとうございます。この恩は必ず返しますから。本当にありがとうございます。」
彼は男性を引っ張る様にして立たせると、
「いや、そんな恩を売る様な事してないよ。俺は‥‥‥」
「君たち大丈夫か!!」
重そうなオレンジ色の防護服をきたガタイの良い男性が数人こちらに駆け寄ってくる。その後ろを警察官も走ってくる。あたり一体は騒がしいことになってるのを気付くのにそう時間は掛からなかった。
「危ないからそこを離れ‥‥え?何だこれわ!?」
周りの人たちが驚いている様子だ。無理もない。
「にぃちゃん、煙草持ってんならこのおっさんに恵んでくれないか?」
「生憎だけど、僕は煙草吸わないんので、持ってないんですよ、聞くならあの人に聞いてください。喫煙者ですから彼」
敦紫はそっとボンネットに乗る翔に指を刺すと男性は笑いながら、
「あの人か‥‥‥俺はあれが人間には見えないだけどな。あれは一体何なんだ?」
橋の上では大惨事になっていること、二人が乗っていた白の軽トラックの前方はぐちゃぐちゃになってある。横回転していたトラックも衝突した衝撃で後ろの荷台の縄が解けこの橋の全体にばら撒く様に資材が落ちている。後ろを見るに自身の周りでは救急車や消防車それにパトカーまでもが止まっていた。そんな台風の芽にあるもの
そのみるも無惨になってある軽トラックのボンネットの上で自分の両手を眺めながら困惑している男。
その車の上には空に届いてしまうのではないかとゆう太い樹木が真っ直ぐに身を連ねてあった。
「あのねぇ‥‥君たちもう少しマシな嘘つけないかな。」
警察官は持っているボールペンをこめかみにトントンと押しながら事情を聞いている。
「だぁかぁらぁ!言った通りだって俺が運んだ角材がこの木になったんだって!!」
中年の男性が言った言葉に警官はハァァ、とため息をこぼしている。
「いやホントなんだよ!俺が角材を触った途端ミシミシってなってグワってなってこう大きくなったんだよ!!」
「え、君たちふざけてるの?」
その会話を遠くから見つめている敦紫。あれが何に見えるかって言ってたけど翔はただのちっぽけな人間さ、それにしても立派な樹木だ。また助けられてしまったなそんなことを思いながら車から生えてある木を眺める彼に焦った様に駆け寄ってくる翔。
「敦紫!!!!」
何でそんな焦ってるのかな翔、忙しない奴だね君って。周りの大人も何か叫んでいる様子だが余り耳が聞こえない。鼓膜が破れてしまったのかな?
彼は気づいてないのだ。この置かれている状況に先ほどの危機を乗り越えている物のここは車が通る一つの道路だ。この状態を知っているのは周りにいる人間だけ。今からやってくる車など知る由もないこと、人間焦れば誰しも今自分自身がどこに立っているのかすら分からなくなる。ここは二車線の道路二人が事故に遭ったのは左車線の出来事だ。警察も誘導し右側の追い越し車線を通る様に指示するであろう。その何が起きたか知らない車は減速すればいいものを飛ばしていく人間だっている。彼は何故かその追い越し車線の方に身を置いていた。それに敦紫は気づかない翔もそして周りの大人たちも焦ってこちらに手招きするも何もわかっていないのだ。
そしてその誘導されて警察の言うことを聞かず飛ばす車は、敦紫の近くまでやってくるとやっと左を向きもうそこまでそして目の前まで車がやってきている事に気付くがもう遅い。運転している方も焦って敦紫を見るにハンドルを着るも何も解決しない。その刹那
「クソォぉ!!」
「え?」
と翔が身を挺して呆然と突ったている彼の胸を力よく押してそのまま車と一緒に敦紫の目の前から翔の姿は一瞬で消えてしまう。そのまま車はバランスを崩す様にして橋の手摺りを飛び越え海にダイブしてしまったのだ。
‥‥死ぬのか俺‥‥
微かにある意識でそう実感してしまう。
海の中にいるのだ俺は敦紫を助けれたかな
でも何故か冷たくもない神経が終わってしまっているのか?
翔の体を見るに先ほどの衝撃で四肢は向かない位置に向いている。
手足など動くはずもない。
結局何もできないまま終わっちまった。
瞼が重くなる、目を閉じて仕舞えばそれが最後なのだろう。
彼は、そう思いながらスッと瞼を閉じてしまうのであった。
「———————————————。」
なんだ声がするとゆうか息ができるとゆうか何で意識あるんだ?彼はそう思うとその閉じていた瞼をそっと開ける。そこには
「急に呼び出して済まないね。だか君には世界を救ってほしいんだ。」
ん?
「わかるぞ、困惑しているのだな。そうだろうそうだろう。だが案ずるではないぞ。」
その煌びやかに施されたマントを羽織り豪勢な赤い椅子に踏ん反り返って座る男が目の前で淡々と喋っている。
「まずは‥‥そうだな」
「ようこそスイレ王国へ」
勇者よ
———あとがき———
えー、オホン、どうも皆さんこんにちはいや、こんばんは?どちらでもいいかそんなこと。改めましてこの物語を描いているたまかKindleと申す物です。どうぞよろしく。
いやー、何人の人がここまでたどり着けるのやら甚だ疑問ですが、ここまで読んでいただきありがとうございます。
と言うことで皆さん言いたいことは分かります。分かりますよ~‥‥‥あれでしょ?あれ。
イヤ、いつ異世界に行くんや!!
って思ってたでしょう?ハハハハハ!!!
大丈夫、僕も思ってましたから、
僕もね本当は一話、二話あたりで行ってもらって本篇スタート!!ってしたかったのですが、
ただ書いておきたかった事なんですね~これがまた厄介な事であれも、これもってしている間に何と七話まで言ったではありませんか。ただ事ではありませんよ。こんな事。素人なので暖かい目で見てやってください。
でも。
どうでしたかここまで長々と読んでいただき私は頭が上がらないのですが。全ての名前や字にメッセージを込めております。例えば5話の一つの言葉に死神が扉をノックすると言う言葉。そしてこの七話でも何者がが扉のノックする音が聞こえると言う言葉。こうやって繋げるのが楽しくてついつい書いてしまうんですよね。と言う事で色々な言葉には意味があると思い読んでいただければ幸いです。もう謎々みたいになってます。いやお前何がしたいねんって思うでしょう?僕も思ってます。ハハハ。
最後になりましたが、僕が作った物語がいつの日か映像で見れることを切に願ってそして今読んでいただいている貴方がこれから先も読んでいただけると想って、この翔やその周りにいる人間の数奇を辿る運命の物語をどうぞご高覧くださいませ。
それでは私は、この一つの花を添えて失礼させていただきます。
ん?これは何?ですよね。すいません
その花の名は亜麻、この花にはこんなメッセージがあります。
花言葉で『感謝』と言う意味があったり。
応援ありがとうございます!
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