7 / 26
第一章 サキの話
プロポーズ①
しおりを挟む
サキが自分のアパートで過ごすより、ユウジのアパートで過ごす時間の方が増えていった頃。サキは少しずつユウジとの未来について考えるようになっていた。
両親の不仲を見て育ったサキは人一倍家庭への憧れが強い。とはいえ、DVや虐待、育児放棄などの問題を抱えていたわけではない。ただサキの目の前でケンカすることは珍しくなく、幼心になぜ離婚しないのだろうと不思議に思っていた。
一人暮らしを始めてからは年に数回会う程度だが、未だにケンカをしている両親を見ると嫌気がさす。さっさと別れてしまえば良いのに、と思いながらも口に出したことはない。反面教師のように、私は子どもの前ではケンカをしないと心に誓いながら二人の声を聞いている。
ユウジの部屋で迎える朝。サキはユウジを起こさないように静かに身支度し、テレビもつけずコーヒーをすする。だが、いつの間にかユウジが起きてくる。
「おはよう」
「おはよう」
眠そうな目をこすりながら、玄関を出るサキの後に続く。
「いってらっしゃい」
そう言ってアパートの廊下を歩くサキをいつも見送ってくれる。サキが階段を降り、アパートの前の道に出て振り返ると、ユウジは廊下の手すりに寄り掛かるようにしてサキを眺めている。サキはユウジに手を振り歩き出す。まるで初めてのおつかいに行く子どもを見守るように、サキの姿が見えなくなるまでユウジはずっと動かない。
初めて見送ってくれた日、とても嬉しかった。何度も何度も振り返っては手を振った。
ユウジの部屋に泊まることが増え、ユウジに見送ってもらう日が増えると今度は急に不安になった。
この日々はいつまで続くのだろうか。私のことを嫌いになるまで? それとも気持ちは徐々に薄らいでいくものだろうか。日々の幸福感とは逆に、いつか終わりがあるのではないかと想像し苦しくなる。
好き同士で結婚したはずの両親がケンカばかりしている姿を見て育ってきたサキにとって、幸せがいつまでも続くものだとは到底思えない。結婚に憧れを抱く一方で、恐れも感じていた。
自分が幸せな家庭を築く保証なんてどこにもない。幸せな結婚生活なんて幻想でしかないのではないか。憧れの家庭像とは真逆の想いを抱え、一人悩ましい日々を過ごしていた。
両親の不仲を見て育ったサキは人一倍家庭への憧れが強い。とはいえ、DVや虐待、育児放棄などの問題を抱えていたわけではない。ただサキの目の前でケンカすることは珍しくなく、幼心になぜ離婚しないのだろうと不思議に思っていた。
一人暮らしを始めてからは年に数回会う程度だが、未だにケンカをしている両親を見ると嫌気がさす。さっさと別れてしまえば良いのに、と思いながらも口に出したことはない。反面教師のように、私は子どもの前ではケンカをしないと心に誓いながら二人の声を聞いている。
ユウジの部屋で迎える朝。サキはユウジを起こさないように静かに身支度し、テレビもつけずコーヒーをすする。だが、いつの間にかユウジが起きてくる。
「おはよう」
「おはよう」
眠そうな目をこすりながら、玄関を出るサキの後に続く。
「いってらっしゃい」
そう言ってアパートの廊下を歩くサキをいつも見送ってくれる。サキが階段を降り、アパートの前の道に出て振り返ると、ユウジは廊下の手すりに寄り掛かるようにしてサキを眺めている。サキはユウジに手を振り歩き出す。まるで初めてのおつかいに行く子どもを見守るように、サキの姿が見えなくなるまでユウジはずっと動かない。
初めて見送ってくれた日、とても嬉しかった。何度も何度も振り返っては手を振った。
ユウジの部屋に泊まることが増え、ユウジに見送ってもらう日が増えると今度は急に不安になった。
この日々はいつまで続くのだろうか。私のことを嫌いになるまで? それとも気持ちは徐々に薄らいでいくものだろうか。日々の幸福感とは逆に、いつか終わりがあるのではないかと想像し苦しくなる。
好き同士で結婚したはずの両親がケンカばかりしている姿を見て育ってきたサキにとって、幸せがいつまでも続くものだとは到底思えない。結婚に憧れを抱く一方で、恐れも感じていた。
自分が幸せな家庭を築く保証なんてどこにもない。幸せな結婚生活なんて幻想でしかないのではないか。憧れの家庭像とは真逆の想いを抱え、一人悩ましい日々を過ごしていた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる