終わりのはじまり

momiwa

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第四章 ユウジの話

離婚②

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 突然、サキから離婚を切り出されたのは三ヶ月ほど前のことだった。

「離婚してください」

 サキのストレートな言葉に驚きで言葉が出ない。何とか声を絞り出したが、冷静ではいられなかった。

「なに?どうしたの?冗談はやめてくれよ」

 必死に笑いとばそうとしたが、サキの表情は変わらない。

「ユウジと一緒にいても、寂しいの」

 寂しい? ユウジにはなにを言っているのか理解できなかった。友達とのランチや飲み会、旅行だって笑顔で送り出してきた。夜、一人で寂しくないようにと犬だって飼った。それなのに……

「俺は離婚なんてする気、ないから」

 それだけ言って強引に話を終わらせた。それからは完全に避けられているようだった。次第に家に帰る足取りも重くなり、いつしか居酒屋で寝泊まりすることも増えていた。

 少し距離を置いて頭を冷やせば、サキの考えも変わるかもしれない。そう願っている自分がいたが、いつまで経ってもサキの考えが変わること気配はなかった。

 自分でもそろそろ潮時かもしれない、そう思っていた。だが、いざ離婚となるとやはり踏ん切りがつかない。
 
 昨晩、ユウジはエリコの気持ちを利用した。エリコが自分に恋心を抱いていたことは、当時から気が付いていた。だが、さすがに店の従業員に手を出すわけにはいかない。ずっと気付かないフリをしてごまかしていた。抱えきれない感情をエリコとの情事で紛らわそうとした。だが残ったのは罪悪感で、更にユウジを苦しめるだけだった。
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