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第1章 出会い
やまだ食堂①
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ゆう子は不動産屋の張り紙を眺めながら、ため息をついた。
高い、高い、高い! 何でこんなに高いんだ…… 貯金が底をつきかけていたゆう子は心の中で叫んだ。小さなスーツケースを携えて、朝からもう何軒も不動産屋を回っている。
ふと時計を見ると、すでに15時過ぎ。辺りを見渡すと小さな二階建ての建物の一階に、少し色あせた青い暖簾が風に揺れていた。近づいてみると曇ったガラスケースに古びた食品サンプルが飾られている。暖簾には薄くなった白い文字でやまだ食堂と書かれていた。
お昼のサービスランチが680円。安さにひかれながらも、もうランチタイムは終わってしまっただろうかと考える。だが結局、空腹と疲労に耐えかね昼食がてらここで休息をとることにした。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
思ったより若い女性が声をかけてきた。勝手に老夫婦が営んでいると思っていたが、どうやら違ったようだ。座敷席が2つ、テーブル席が4つとカウンター席という、こじんまりとした店内だ。中途半端な時間とあってか、お客はカウンターに老夫婦がいるだけだった。
朝から歩き疲れていたゆう子は靴を脱ぎ、座敷席に座る。すぐに水とおしぼりを持ってきてくれた。
「ご注文はお決まりですか」
「サービスランチ、まだありますか」
「大丈夫ですよ。すぐお作りしますね」
ほっとしたゆう子は足を伸ばす。太ももを軽く揉みながら待っていると、厨房から揚げ物の良い匂いがしてきた。高温の油のじゅわっという音とともに食欲が刺激され、お腹が鳴る。
「お待たせしました。サービスランチです」
大きな唐揚げが5つ乗ったお皿には山盛りのキャベツ。ほかほかの白米に大根の漬物、豆腐とわかめのお味噌汁。そして小鉢にはひじきの煮物が盛られていた。
揚げたての唐揚げにかぶりつく。肉汁があふれ、ちょっと甘めのにんにく醤油の下味と相まって美味しい。ご飯はつやつやでふっくらしていて、お味噌汁はいりこの出汁が効いている。ランチを頬張りながら、ゆう子は母が毎朝丁寧にいりこで出汁をとってくれていたことを思い出していた。
高い、高い、高い! 何でこんなに高いんだ…… 貯金が底をつきかけていたゆう子は心の中で叫んだ。小さなスーツケースを携えて、朝からもう何軒も不動産屋を回っている。
ふと時計を見ると、すでに15時過ぎ。辺りを見渡すと小さな二階建ての建物の一階に、少し色あせた青い暖簾が風に揺れていた。近づいてみると曇ったガラスケースに古びた食品サンプルが飾られている。暖簾には薄くなった白い文字でやまだ食堂と書かれていた。
お昼のサービスランチが680円。安さにひかれながらも、もうランチタイムは終わってしまっただろうかと考える。だが結局、空腹と疲労に耐えかね昼食がてらここで休息をとることにした。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
思ったより若い女性が声をかけてきた。勝手に老夫婦が営んでいると思っていたが、どうやら違ったようだ。座敷席が2つ、テーブル席が4つとカウンター席という、こじんまりとした店内だ。中途半端な時間とあってか、お客はカウンターに老夫婦がいるだけだった。
朝から歩き疲れていたゆう子は靴を脱ぎ、座敷席に座る。すぐに水とおしぼりを持ってきてくれた。
「ご注文はお決まりですか」
「サービスランチ、まだありますか」
「大丈夫ですよ。すぐお作りしますね」
ほっとしたゆう子は足を伸ばす。太ももを軽く揉みながら待っていると、厨房から揚げ物の良い匂いがしてきた。高温の油のじゅわっという音とともに食欲が刺激され、お腹が鳴る。
「お待たせしました。サービスランチです」
大きな唐揚げが5つ乗ったお皿には山盛りのキャベツ。ほかほかの白米に大根の漬物、豆腐とわかめのお味噌汁。そして小鉢にはひじきの煮物が盛られていた。
揚げたての唐揚げにかぶりつく。肉汁があふれ、ちょっと甘めのにんにく醤油の下味と相まって美味しい。ご飯はつやつやでふっくらしていて、お味噌汁はいりこの出汁が効いている。ランチを頬張りながら、ゆう子は母が毎朝丁寧にいりこで出汁をとってくれていたことを思い出していた。
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