【全59話完結】転生騎士見習いの生活

酒本 アズサ

文字の大きさ
12 / 59

12.同室の新人 3 sideサミュエル

しおりを挟む
 朝食後に新人を連れた奴らが裏庭へ集まる、騎士になる為には身の回りの事を自分で出来ないといけないが、ここに入る迄に洗濯をした事がある奴自体少ないだろう。
 この寮には食堂はあるが洗濯は人を雇っておらず、清浄魔法クリーンを使える者が当番制で洗浄する事になっている。


「よし、皆集まったな。 俺はアルバン三十六歳の訓練官だ。 お前達がウチの長男と同じくらいの年齢だからって事で去年から訓練官の任についている。」
 アルバン訓練官が新人達に挨拶する、去年は訓練官になったばかりで気合いが入っていたが、今ではユル…肩の力が抜けている。
 

「早速だが新人で水魔法が使える奴~?」

 聞かれてクラウスが手を挙げる、水属性持ちか。
 さっきからクラウスをジッと見ている奴も手を挙げている、敵意や殺意は感じないから見ているだけなんだろうが、知り合いか?


「ふむ、今年は三人か…。 この三人は清浄魔法クリーンを覚えてもらったら同期の服の洗浄係になってもらうからそのつもりでいてくれ、他の者も適性に合った係が割り振られるから見習いの間は頑張れよ」

 事前に準備されていた桶を新人達の前に置く。
「水魔法使えるやつは皆の桶に水を半分くらい溜めてくれ」
 その言葉に水魔法が使える奴らが手分けしてウォーターボールを唱えて次々桶に水を溜めていく。
 どうやら新人の一人は属性は持っていても魔力操作ができない様だ。


 クラウスにひと通りの洗い方を教えると、しばらく何やら考え込み
「サミュエル先輩、ちょっと清浄魔法クリーンを試してみたいんですけど、いいですか?」
 目をキラキラさせて聞いてきた。


「お、やる気だな、いいぞ試してみろ」
 頷いて促す。
 失敗しても汚れが落ちないか濡れた衣服がそのままになるだけだ、一度で成功すればかなり優秀だ。

 クラウスが目を瞑って集中する。
清浄魔法クリーン
 ホワリと仄かな光が衣類を包み込む。

「おお、スゲェじゃねぇか! 一発で成功したな!」
 クラウスの手にある洗濯物は見事に綺麗になって乾いていた。
 

 オレの声にアルバン訓練官が気付いて寄ってきた。
「お、もう清浄魔法クリーンを覚えたのか、優秀だな!」
 

「とりあえず魔法は覚えるまでイメージと練習あるのみだ、水魔法使えない奴も洗濯の仕方をしっかり覚えておけよ、じゃないと将来的に朝イチでパンツだけ清浄魔法クリーンかけてもらう、なーんて恥ずかしい事になるかもしれないからな? ハハハハ」


 思わずクラウスの耳を塞ぎそうになったが、まだ意味がわからなかった様でキョトンとした顔で首を傾げている。
 やっぱり見た目通り中身も幼いらしい、いつかその時が来たら……カール様に報告して性教育をする様進言すべきか?


もしかしたらヨシュア辺りが明け透けに教える事なるかもしれないな、アイツは獣人という事を差し引いても性的な事に恥じらいというものをどこかへ落として来た様な奴だし。


 洗濯指導が終わってオレ達は学校へ向かう、今日のクラウス達の訓練内容を考えると少々可哀想だが通過儀礼として頑張ってもらうしかない。


 学校から寮の部屋のドアを開けた瞬間花の様な香りがした、どうやらもう風呂に入ってきたらしい。
 オレ達が普段使ってる物とは格段に品質が違うとわかるその香りをこっそり堪能しつつ、今日の事を色々報告してくれたり質問されたりしてからシャワーを浴びに部屋を出た。


 シャワーを浴びてからまだクラウスが部屋に戻ってなかったので食堂へ向かうと、違う階段を使って戻ったのかすれ違う事なく食堂にも居なかった。


 さっさと食事を済ませて部屋に戻ると、既に眠た気なクラウスがギリギリの状態で起きていた。
 眠気覚ましにと話をしていたら点呼の時間になった、今日は何とか起きていられた様だ。
 目は半分閉じてるしユラユラ揺れてるからすぐにでも寝そうだが。


 フロア長のマックス先輩も点呼を済ませると部屋に戻る様に促した。
「おやすみなさい」
 マックス先輩に挨拶をして部屋に戻ると、既にクラウスが寝息を立てていた。
 掛け布団の上に倒れ込んでいたので起こさない様に布団を掛け直して寝かせておいた。


 翌朝、予想はついたが痛い痛いと言いながら筋肉痛でまともに歩けないクラウスを見かねて思わず声を掛けたが断られてしまった。
 後から現れた新人もクラウスと同じ様にまともに歩けていない、きっと昨日話に聞いたライナーだろう。


 その後ろに居たゲルト先輩と目が合い、チラリとプルプルしている二人を見て苦笑いを浮かべる。
 食事しながらゲルト先輩が治癒魔法を使ってはいけないなどの注意をしていた。
 獣人のオレは魔法が使えないから興味を持てなくて詳しくないので教えてやってくれる人がいるのは助かる。


 食後はゲルト先輩とクラウスが洗浄室に向かい、ライナーは一人で大丈夫だと言うので学校へ行く準備の為に部屋へ戻った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...