【全59話完結】転生騎士見習いの生活

酒本 アズサ

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33.順番争奪戦

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 七月も終わりに近づき、年少組の三人がそろそろ保養地へ行く準備を考え様とする頃。


「何だか最近騎士の皆さんがピリピリしてない?」


「あ、ライナーもそう思ったか。 俺も何か牽制し合ってる様な印象を受けていたんだが、何かあるんだろうか…」


「俺もそう思ってた。 クルト先輩かヨハン先輩なら教えてくれそうだよね、それかアルバン訓練官も何か知ってるかも?」


 午後の見取り稽古の後、訓練所の隅に移動しながらヒソヒソと話す。
 後ろを歩いていたアルバン訓練官を振り返って聞いてみる。


「アルバン訓練官、最近騎士の皆さんの様子がいつもと違う感じがするんですが、何かあったんですか?」


 パチクリと瞬きして吹き出す様に笑い出した。


「アイツら来月の海へ行く時、お前達と一緒に行きたいから最初に行く班に入りたくて牽制し合ってるんだぜ」


 ニヤニヤと顎を撫でながら俺達を見下ろす。


「ムサイ男ばかりよりも見て癒されるちびっ子が居た方がいいってな? 第一も第二も見習いは全員学生だから未成年はお前達だけだからな」


「ちびっ子って言っても俺達どんどん背が伸びてますよ!? 第一の人達は見た目も良い人ばっかりだし、俺達で癒されなくてもいいと思いますけど」


 ムッツリと不機嫌になりながら反論する。


「俺達からしたら十分ちびっ子だっての! お前達も仔犬達がジャレ合ってるの見たら和むだろ? それと同じ様なもんだよ」


 言いながら俺達の頭をグシャグシャと順番に撫でた。


「でも、行く順番決めるのにどうしてピリピリしてるんですか? 団長が適当に決めるのかと思ってました」


 ライナーが不思議そうに問う。


「置いて行く戦力が偏るとまずいだろ? だから模擬戦で順位をつけて、上から一、二、三で班を作って、四位の奴は三位の班、五位は二位の班、六位は一位の班、七位は一位の班ってな感じで決まるんだ」


 蛇腹折りみたいな順序で班分けする事によって一位のいる班が確実に強い状態を避けてる訳か。
 その模擬戦があるからピリピリしてたって事だな。


「その模擬戦はいつあるんですか?」
「クルト先輩とヨハン先輩の実力って同じくらいですか!?」


 俺とライナーの声が被った。
 前回の水練への移動中大変だったし、二人の順位が並べば二人セットで一緒になる事は低くなる。
 いっそ二人セットで違う班になれば安心なのに。


「模擬戦は八月の初日だ、えーと、明後日か。 クルトとヨハンは確実にクルトの方が強いな」


 確かに見取り稽古の時に双剣使いであるクルト先輩の動きも見ているが、なかなかの手練てだれだった。


「ちなみにお前達は最初に行く班と一緒に行くからな、これは毎回恒例だ。 つっても年少組が居る事態あまり無い事なんだけどな。 来年もしかしたらクラウス一人かもしれないぞ~?」


 意地悪な笑みを浮かべて俺を見て来る、アルフレートとライナーも心配そうな顔をしている。


「だ、大丈夫ですよ! 第三は比較的入学前の歳でも入って来る事多い騎士団ですし!」


 そう、あくまで比較的多いだけであって毎年入って来ている訳でもないので運に任せるしかない。
 来年の年少組が俺一人はキツイ!
 孤児院の慰問の時とかに勧誘すべきか…、騎士団は基本的な物は支給されるし、孤児なら多少補助が貰えるので独り立ちを早くしたい者には持って来いの職業だ。


 ただ未知の世界にいきなり飛び込む度胸の持ち主はあまり居ない、なので筋の良さそうな子と顔見知りになっておけば勧誘されてくれるかもしれない。
 知り合いが居ると居ないとでは精神的にかなり違う。


 実際、孤児院出身の者が入った後は数年連続で孤児が騎士団に入っている。
 それが途切れてるとまた暫く孤児院から入って来なくなるのだ。
 現在は数年途切れてる状態なので俺が知り合いになってしまえば…!


 そんな事を考えていたらアルバン訓練官にデコピンされた。
 アルフレートとライナーは既に手合わせしている。


「来年の事より今の自分の腕を磨けよ」


 おでこを押さえて痛がる俺を見ながら笑って構える様に促した。




 八月になった模擬戦の翌日、昼食の時間にクルト先輩とヨハン先輩が二人共一班で一緒に行くとウザいくらい絡まれた。
 俺達が絡まれながら無の境地に至って表情を無くしても仕方ない事だと思う。


 休日にはカール兄様が会いに来て、同じ日程で行けると嬉しそうに報告してくれ、自由行動出来る時間があるから一緒に街を散策する約束をした。


 好きな物を買ってやると言ってくれたので和食に必要な物を見つけたら買って帰れるとほくそ笑んだ。
 カール兄様が居ればクルト先輩とヨハン先輩も絡んで来ないだろうし、案外快適に過ごせるかもしれないと気楽に考えていた。
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