19 / 64
第一章『大規模盗賊団討伐作戦』
十四話「捜索、難航」
しおりを挟むどうやら盗賊探しは難航しているようだ。
キースは朝から晩まで帝都の周りを捜索しているが、一向に手がかりが掴めないらしい。しょげた顔のキースが申し訳なさそうに私にそう言い、ガルスさんはイラつきながら机を叩いていた。
そう、なぜかガルスさんがうちのギルドにいる。討伐隊を再編成した結果うちのギルドメンバーが約半数となったため、作戦本部も協会ではなくギルドに作ればいいとなったそうだ。場所も近いから。
いやいや、場所近いんだから尚更協会でよくない?支部長は支部にいなよ。しかも会議室とかじゃなくてロビーの一角にって、いくら端っことはいえ邪魔だって。
「ガルスさぁん。なんでここで作戦会議してるんですか」
「ここが一番効率良いんだよ。柔軟に移動できるし、デカい投影地図があるし。何よりお前の見張りもできるしな」
「私を見張ってどうしようっていうんですか」
ギルドハウスのロビー壁面にはキース特製、帝都近郊の地図を投影できる魔道具がある。まあ私が攫われまくるのでその位置をギルドメンバーに共有するために作られたものなんですけど……
ガルスさんは今回の盗賊団に関してすごい私に固執してるけど、何なの?関係ないってば、ねぇ?
「あれ、ギルは?」
諦め悪く作戦本部に張り付いて、ガルスさんに疎まれてたはずなんだけど。
「邪魔だから訓練でもしてろと言ったら、あっちの訓練場の方に走っていったぞ」
くい、とガルスさんが親指で指したのはギルドの裏手側。ギルド裏側にはギルドメンバー専用の宿舎と訓練場があるため、ギルはそこに行ったんだろう。
「お前もふらふら様子を見に来るくらいなら少しは手伝え。情報を吐け」
「嫌ですよ、通りがかっただけです。何も知りません。頑張ってください」
一階の酒場に柿ピー買いに来ただけなんだって。あーやだやだ、さっさと執務室に戻ろう。
私にできることはもう何もないんでね。
+++
「本当に、何なんだあいつ……」
「……うちのマスターが申し訳ありません」
捜索からすでに二日が過ぎ、討伐の日は翌日にまで迫っているものの、盗賊団の潜伏先はいまだに判明していない。最初に盗賊団を見つけ出し、一度目の討伐の際にも助け舟を出したクリアは何かしらの情報を掴んでいそうだが、今度こそ自力でやれとばかりにこちらに丸投げしている。
シーファがガルスに謝るが、シーファは彼女の投げた仕事をしばしば代わっている。彼女に振り回されている被害者の一人だ。
「遠くには行っていないはずだ。いくら遺物を使っているとはいえ、大人数が隠れながら移動するのは容易なことじゃない。必ず近郊にいるはずだ……」
『こちらリアーナ、地点十四から十六にも形跡なしです』
「ちっ、リアーナは東方面に移動し地点二十五と二十六の捜査に向かえ」
最後に盗賊団が確認された地点を中心に、潜伏できそうな場所に番号を振り風潰しに捜索しているが、今のところ全て空振りだ。
捜索の面子はシャルティエ支部で捜索に優れている十数名に加えてキース・マルセルとユリエラ・リッヒだ。遺物の個数の関係で少人数になってしまったことが悔やまれる。
リアーナは普段受付嬢として働いているが、彼女は本来偵察部隊所属の星三冒険者にも勝る強さの持ち主だ。少人数になってしまった分精鋭の者を揃えた。それでも、まだ、見つかっていない。
「もう、あらかた探し尽くした……なぜ見つからない……!」
「これ以上捜索範囲を広げてもおそらく無意味でしょうし……一体どこに……」
作戦本部にて状況を聞いているガルスやシーファ、一部の討伐隊参加冒険者達も敵を見つけられなければどうしようもない。明日までに盗賊団を見つけられなければ討伐は中止、奴らの勝利だ。
『……あ、あの』
「どうした、キース」
『あ、はい……一つ、捜索して、ない場所が……あるかなと……」
「! どこだ!」
『……遺跡の中、です』
帝都近郊には三つの遺跡がある。
遺跡には魔力の力場が発生しているため、外から中の様子を魔道具や探索魔法で探ることはできない。
確かに遺跡内に潜伏された場合こちらも中に入ってみないからには捜索は不可能であり、まだ見つかっていないことにも納得がいく。だが。
「遺跡内に拠点を作るなんて、不可能だろう。遺跡内に沸く魔物をコントロールすることはできない上に冒険者の出入りが激しい。しかも長時間滞在するには環境が過酷すぎる……」
『でも……可能性は、あるかなって……』
「……分かった」
キースが言うのであればその可能性もかなり高いということだろう。確かにこれだけ探して出てこないということは、見逃していると考えるよりまだ捜索していない場所に潜んでいると考える方が妥当だ。
「総員に継ぐ!これから三部隊に分かれて帝都近郊の遺跡内を捜索する!それぞれ現在地から最も近い遺跡へ誘導する。遺跡近くに到着したらそこで各自合流して遺跡内の捜索を開始しろ。あくまで盗賊の捜索だ、無理に魔物を倒す必要はない!定期的に外へ出て体調面には気をつけろ。隅から隅まで調べ尽くせ!」
▷▷▷
時刻は夕方。
捜索隊からの報告は芳しくない。遺跡のレベルはどれもそこまで高くはないが、通常の捜索と遺跡内での捜索は全く勝手が違う。
魔物と戦闘になる確率は隠密系の遺物を使用していることから通常よりは低いが、遺跡にはトラップや特殊環境などに気を配らなければならない上に遺跡の強い魔力の力場は魔力強化がされている冒険者でも長時間居続けると調子が悪くなる。
つまり捜索効率が著しく下がるのだ。
「遺跡じゃないのか?いや、だが……くそ、もっと人員を投入できればいいんだがな」
「遺物なしで動けばまたしてもこちらの動きを察知されるでしょうからね……」
「……あのー、すみません、少しよろしいですか?」
声をかけたのはギルド受付のニコラだ。申し訳なさそうに縮こまりながら作戦本部へと近づいてくる。
「ニコラさん、どうしたんですか?」
「もしかしたら、もっと早くに伝えれば良かったかもしれないのですが……マスターが、」
「クリアがどうした?」
「マスターが、昼前に出かけなさったきり帰ってきていません……」
「―――!?」
「マスターは何と言って外出を?」
「ちょっとそこまで、屋台の焼き芋を買いに行くと……すぐに帰ると仰ってたのですが……」
「……確定ですね」
クリアが動いた。
あいつはもう盗賊の居場所を特定したというのか。
「マスターからの連絡を待ちますか?」
「……いや、散々知らんふりをしておいて、今さら助けてやろうってのも生意気だ。連絡がくるまでは自力で捜索を続ける。あいつに出し抜かれてたまるもんか!」
ガルスが机を叩いて吠える。
「何としても盗賊を見つけ出せ!!あいつがおちょくっているあいだに!!」
討伐開始まで、あと一日。
0
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。
ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。
そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。
荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。
このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。
ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。
ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。
ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。
さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。
他サイトにも掲載
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる