獣人の子育ては経験がありません

三国華子

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第一章

39 秘かな決意

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騒動から一か月後、正式にガインの元首就任が承認され、首都ラピヤにて就任式が執り行われた。

後任の総長はミゲルにお願いしたのだが、本人が「自分は補佐が向いている」と言い張って聞かないので、ライヒアがルーシアから戻り、務めることになった。

取り急ぎラピヤに入ったガインの代わりに、俺とサミアンはラピヤで生活する為の準備に追われていた。
俺達家族は、お世話係のノイとシンを伴って、首都ラピヤに移り住むことになっている。
距離もあるし、結構大掛かりな引っ越しだ。

新居はラピヤにある大きな城だ。
獅子族が君主制だった時代は王宮だった場所で、ガレニア共和国の政治の中枢となる城である。

獅子族は現在、隣町にある旧離宮を本拠地としていて、グランドルはここから城に通い、ガインのサポートをしてくれることになっている。
ほかの種族から不満が生まれる事のないよう、役職を新設するなどの法整備も急務とされていて、ガインは中々、館に戻れずにいた。




「はぁ……疲れた。狼族って基本的に『自分のことは自分でやれ』的だから、準備大変だよな……」
「元首の奥様って感じじゃねぇな。もっと貴族的な生活なのかと思ったけど、割りと庶民的だよな」

俺達は、庭の木陰で休憩を取ることにした。
正直ヒラヒラの衣装を脱いで、Tシャツで、頭にタオルを巻いて作業したいくらいだ。

「この寝方、疲れねぇのかな?」

シンと俺の間では、サミアンがうつ伏せになり、土下座のように手足を曲げたまま、お昼寝している。
ベッドでは横になるが、今日みたいに芝生の上だと、このスタイルが定番なのだ。ちなみに、後ろから見るとお尻に哀愁が漂っていて可愛い。

「獣型の時はずっとこれだから、落ち着くんじゃないかなぁ?」
「ふーん、そんなもんか? 獣人の子供は可愛いな。……耳とか」

(おやっ?シンは、まさかのケモ耳好き?)

「ねぇ、シンってどんな人が好みなの?」
シンは薄茶の瞳をパチパチさせた。無理もない、確かに話が飛びすぎた。

「俺は自分より少し小さくて、できれば綺麗系だな……『滝川クリス』は、かなり好みだった。小さくて可愛いのは苦手なんだ」

今は二人とも、小さくて可愛い系になってしまったけどね……
自分の今の姿を忘れがちなのは、異世界あるあるだ。

「彼氏とか居たの?好きな人とか……」
「いや、仕事ばかりだったから、長続きした試しが無い」
「そうなんだ……」
「それより俺は、童貞じゃないから神子になれなかったと言われたのだが、お前はバリネコなのか?」

(えっ? 神子って童貞の証なの?恥ずっ!!)

「……うぅぅ、実は童貞処女だったんだ」
「……まさかっ!? お前、滝川クリスだよな!?」
滝川クリスだよ。抱かれたい男殿堂入りで、二丁目界隈では、タチにもネコにも大人気と噂のっ!」
「プッ、、マジか!?」

笑えばいいさっ! 俺だってまさか36まで、清らかな体でいると思ってなかったよ!!


「……ガインが、初めてだったんだ」

ツボに入って笑いが止まらなくなっていたシンは、俺をからかうのを止め、優しい眼差しで見つめた……
「こっちに来てから運命の人に逢ったって言ってたもんな……」
「うん」

「シンは好きな人出来たら、子供産む?」
「どうかな? 正直あのバカ王子に何かされそうになったら返り討ちにする予定だったしな……」

(してやれば良かったのに!! 穴、開けちまえばよかったのに!!)

「だけど運命だと思える程の相手に出会えたら、相手と自分の子供は欲しいよな。……あくまでも産んで貰う前提だが…… なんだ?お前、ガイン様の子供が欲しいのか?」

俺の頬が、赤くなるのが分かった。
ダメだ、やっぱり俺って分かりやすすぎる!!

「いいんじゃないか? サミアンだって兄弟がいた方がいいだろう?」

「きょうだいー!?」

眠っていたはずのサミアンが、スクッと上体を起こし叫んだ。

「おかあたま!タミアンは『おにいたま』になるのでちゅか!?」

まずい……ライトブルーの大きなお目目がキラッキラになっとる……
尻尾まで出ちゃってるじゃないか!

「まだ、できたわけじゃないよ」
「まだでちゅか?」

ああ、耳と尻尾がへたった……
俺以上に分かりやすい。

「タミアン、おにいたまになったらあかたんのおてわちまちゅ! ていちんていいおてわちまちゅ!」

(「誠心誠意」……サ行多いな。)

「サミアンもこう言ってるぞ」
シンがククッと笑いを堪えながら言った。
「ふふっ、サミアンが誠心誠意お世話するところ、見てみたいね」
「……ああ」


もうすぐ次のヒートを迎える。
俺は、抑制剤の使用を止めた……


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