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第一章
40 旅立ちの時※
しおりを挟む三日後にラピヤへの引っ越しを控えた館は、どこか騒然として慌ただしく時間が過ぎて行く。
ガインも二日程前に館に戻り、ライヒアに総長を引き継ぐ為の事務作業に追われていた。
(困ったな、ヒートの予定が引っ越しと重なっちゃった……)
予定ではもうとっくに、ラピヤに移動を済ませている筈だったのだが、ガインを元首とした新体制を整えるにあたり、ヒグマ族の総長が横槍を入れてきたのだ。
つい数か月前まで、領土を争っていた相手だけに、宥めるのに時間を要した。
「まだ休んでいなかったのか?」
「お疲れ様…… 引き継ぎはどう?」
「ああ、事務手続きはほぼ終わった。後は就任式でライヒアのサインを貰うだけだ」
ガインは、帰ってからほとんど休んでいない。おそらくラピヤでも不眠不休で仕事をしていたのだろう。帰って来た時から目の下にうっすらと隈ができていた。
「やっと寝台で眠れるのだからゆっくり休ませたい」と思っているのに、フワッと体が熱くなり、ヒートが始まる前兆のような熱を感じた。
(あ……まずい、早く薬を……)
「ん?」
ガインは先に寝台に横たわっていた俺に近付き、首筋に顔を埋めた。
「ヒートか?」
「あ、ごめん。薬飲んでなかったから…… すぐに即効性の薬を打つよ」
サイドテーブルに伸ばした手をガインに掴まれる。
「なぜ薬を飲まなかったのだ?」
「……ガイン離して、間に合わなくなっちゃうよ」
「その前に、質問に答えてくれ」
ガインの瞳に、火が灯る。
アルファの威圧に耐えきれず、促されるように本音が口をついた。
「予定ではラピヤに居る筈だったから…… ガインの赤ちゃん…… 欲しくて……」
状況も弁えず、一人で勝手に盛り上がっていた事に恐縮して、段々と小声になった。
「でも、ガインやっと寝れるんだから今はゆっくり寝なきゃ!……んっ」
言い終わる前に引き寄せられ、唇を奪われる……
「んんっ……ガイン?」
「睡眠よりこちらの方が大事だ……」
「ガイン、心変わりなんてしないから、次のヒートまで待とう?」
「もう充分待った……」
ガインからブワッっと甘い匂いが漂う……
「あっ、はぁっ……」
それに呼応して俺の体も一気に熱を高め、フェロモンが溢れ出すのが分かった。
「ヒート中は、最後まで完全な人型を保てないぞ……」
未だにそれを気にしていたことに驚く。そういえば、狼ヘッドの時は自分から近寄って来なかった。
「ふふっ……もう怖くないよ。狼の顔も大好きだよ……」
ガインは嬉しそうにフワッと微笑み、口づけを再開させた。
同時に寝間着の合わせを開かれて、露になった腹から胸を、ガインの大きな手が撫で上げる……
「あぁ……」
ガインは器用に俺を裸に剥くと、濡れた舌で全身を舐め尽くした……
「はぁ……あぁっ」
踝から舐め上げられて、太ももの内側から脚の付け根まで、チュッチュッと音を立て吸い付かれる。
互いに呼応し放出されるフェロモンに、室内は満たされ、体の感覚がどんどん高まってゆく……
膝裏を胸に押し付けられ背中が敷布から離れると、秘められた蕾がガインの目前に晒される。
こんな恥ずかしい格好をさせられているのに、ヒートの熱で興奮が高まり、ペニスからは透明の蜜が糸を引いた……
ガインを求めてヒクつく蕾にガインがチュッと口づけ、そのまま熱い舌を押し当てられる……
「ん……ふぅ……」
襞をふやかすように湿らされ、時折チュッっと吸い付かれると、蕾が綻んでいくのが分かった……
「ガイン……俺も……舐めたい……」
「ふっ……お前と云う奴は…… だが次の機会まで待ってくれ。今日は心行くまでお前を味わいたい」
「えっ?そんな……あぁぁっ!!」
自ら潤う蕾にガインの舌が差し込まれ、いらやしい水音をさせながら中を探られる。
「ん……ガイン……だめ……」
達してしまいそうなほどの快感に、全身から汗が吹き出し、俺の甘い匂いが更に濃くなった。
「はっ……はっ……」
顔をあげたガインが獣化していき、自ら服を剥ぎ取った。
辛うじて人型を保っているものの、全身を被毛で覆われ、獣化のエネルギーで熱を発した体からは、濃厚なフェロモンが漂う。
「ガイン……も……ほしぃ……」
ガインが俺に覆い被さると、柔らかい狼の被毛が肌に触れ、フワッと包み込まれる様な不思議な感触に、自然と緊張が解れていった……
「クリス……愛している……お前の全てが愛おしい……」
ガインの熱い楔が、小さな蕾を抉じ開ける。
―――あぁ……ガインが入ってくる……
サワサワと血が沸き上がり、全身に電流を流されたかのように痺れる。最奥に到達すると同時に俺のペニスからは少量の白濁が放たれた。
「あぁっ……ん……」
内壁が、ガインの大きなペニスを吸い上げるように絡みつき、更なる快感を拾い上げる……
ガインの律動に合わせるように、ペニスからトロトロと白濁した蜜が流れるのが目に入り、自分がいきっぱなしになっていることが分かった。
ガインと一つになる喜びに、自然と笑みがこぼれると、狼ヘッドのガインはキスの代わりに顔中を舐めた。
「ガイン……中に……出して……いっぱい……ほしぃ……」
「くっ……俺を煽った事を後悔するなよ……」
腰を打ち付ける音が大きくなり、その速度を上げていく……
「あぁぁっ……はぁっ!!」
「うぅぅ……グルル………」
最奥に放出される熱を感じ、体が喜びに震えた……
しかし喜びを噛み締めるのも束の間、入り口付近の感じる場所を内側から強く圧迫され、正気を保っていられない程の快感が体を突き抜けた。
「あぁぁっ……なにっ?」
その間も狼特有の長い放出が続き、みるみるうちに腹が膨れていく……
「すまない、ペニスも獣化している……放出が終わるまでは抜けない」
「そんな……」
終わりのない強い快感に、頭が真っ白になってゆく。薄れ行く意識の中で、自分の中に、温かい何かが宿るのを感じた……
「おかあたま、はやくちてくだたい。レパーダたんがまってまちゅ」
「サミアン! 何それ!?」
サミアンの背中には卵型の大きなリュックが背負われていた。
「ノイが作ってくれまちた!」
どうしても自分でセレスティオを運ぶと言ってきかないサミアンの為に、ノイが用意してくれたらしい……
ラピヤまではレパーダの背中に乗って、片道三時間の空の旅だ。
「レパーダたんよろちくおねがいちまちゅ」
(まかせて、サミアンちゃん)
あれ? サミアン、なんでレパーダと会話してるの?
「クリス……体はもう大丈夫か?」
「うん、昨日ゆっくり休ませて貰ったから大丈夫だよ! ガインこそ大丈夫?」
「ああ、勿論だ」
ガインは欲求不満が解消されて、寝不足を感じさせない程、エネルギーに満ちていた。
サミアンを卵ごと抱き上げて、俺を小脇に抱えると、ジャンプしてレパーダの背に乗った。
「では、行くか……」
「はい、おとうたま」
「うん」
見送るライヒアに手を振って、俺達は狼族の領土を後にした……
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