王子の婚約者の決定が、候補者によるジャンケンの結果であることを王子は知らない

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ジャンケンに負けた理由

「ジャンケンで負けて婚約者って、完璧罰ゲームじゃない?」
アハハハハ、とマリアが笑っている。お腹を抱えてヒイヒイ言って笑っているが、ヨハンは難しい顔で黙ってしまった。

コリーナは、正直に真実を言ってしまったことを後悔したものの、謝ることに思考が至らずただ無表情で慌てていた。

バンバンと机を叩き、一頻り笑ったマリアは涙を拭きながら、やっぱりねぇ、と喋り出した。

「ここに来るまですごく自信満々だったのよ。貴女にすごく好かれてるから、私に危害が及ぶかもしれない。もしもの時は私の後ろに隠れるんだ。とか、言ってたけど、何かおかしいな、とは思ってたのよ。

だって、来た時も全く嬉しそうじゃないし、ヨハンって身分さえなけりゃ、全くモテるタイプじゃないんだもの。

平民はね、見た目とお金持ってたら、格好いい、みたいなところがあるから、まあ、ヨハンでも、ギリ大丈夫なんだけど、美形なんて見慣れてる貴族令嬢がわざわざこんなの選ばないでしょう。」

王子殿下に向かって「こんなの」と言えるのはマリアしかいない。流石に不敬かと、護衛は思っていると、王子殿下は怒るわけでもなく、「マリアは私を嫌いなのか?」と不安そうにしている。

「違う違う。私は好きよ。わかりやすくて面白いんだもの。何でも買ってくれるしさ。でも、それは私が平民だから、だと思うのよね。貴族令嬢からしたら、貴方の魅力は分かってもらえないのかなって。」

「いや、でもコリーナ嬢にはすんなり決まったと聞いたぞ。だから、コリーナ嬢がゴリ押ししたのだと。」

「私がジャンケンが弱すぎただけです。ほぼ瞬殺で負けてしまったので、決まるのが早かったのです。」

王子殿下は、コリーナ嬢の言葉を聞いて、黙り込んでしまった。今までの自分の態度を振り返り反省しているのだろうか。

「もしかして、コリーナ様の対戦相手って皆コリーナ様より上の身分でした?」
「ええ、一名だけ伯爵令嬢がいましたが、ウチとは違い、一番勢力が強い伯爵家のご令嬢でしたので……」

「うーん、私の予想では、これはコリーナ様に役目を押し付けようと画策した結果だと思いますよ。ジャンケンって、案外精神的なものが反映されるんです。他の方より身分が下で気の弱いコリーナ様なら、皆勝てると思ったんじゃないですか。よーく思い出して欲しいんですけど、コリーナ様のお相手は皆出す時、声が大きかったり威圧的だったりしませんでしたか?」

「あ、一応声掛けがあって、みんなで声を出しながらテンポよく出していくのですが、何人かと少しテンポが合わない時があったんです。」

「テンポが合わないって、後出しジャンケンってことですか?」

「いえいえ、ほぼ同じタイミングです。」

「ほぼ?」
「ええ、ほぼ。」

はあ、とため息をついて、マリアは衝撃的な事実を述べる。

「多分、そのやり方ですと、コリーナ様は一生その方達に勝てません。相手は反則をして勝っています。大方貴女の手を読み取る協力者がいて、自分の主人に教えていたのではないでしょうか。侍女の方や、侍従の方も、コリーナ様の後ろにたくさんいたのですよね。」

「ええ、皆さん、物覚えが良くて、一回で覚えられたようなんですけど、私は全くの初めてで覚えられなくて。後ろ手に復習しながら……あっ。」

コリーナは負けた理由が愚かすぎて恥ずかしくなってしまった。

「これ、やられっぱなしじゃ、腹立ちません?婚約発表の際、皆さんにジャンケンについて知って貰うというのは如何でしょうか。」

マリアはコリーナに笑いかける。コリーナはその笑顔に黒いものを感じて不意に後退る。

「婚約者の選定をジャンケンで決めたことを公表するのです。提案は公爵令嬢でしたよね。素晴らしい面白いゲームであると、褒め称えてやり方を実演して見せてあげたら良いのですよ。とっても楽しそうでしょ?」

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